ファテー・サミ 日付2021年8月1日
アフガニスタンをパキスタンのダーイシュ(訳注:シリアを拠点とするテロ組織とターリバーンに引き渡すアメリカ、困惑するロシア、中国、インド、イラン
USA Hands over Afghanistan to Pakistan – Daesh and Talib, Annoying Russia, China, India, and Iran by Fateh Sami(Photo) 1 /08/ 2021
アフガニスタンの安全は、広範な層に支持された連邦制をとる政府によってのみ保障できる。あらゆる口実で権力を独占するアシュラフ・ガニー大統領やカルザイ元大統領を頭とする腐敗したチームなど必要ない。「首長国か共和国か、うんぬん」にまどわされれば代理戦争の火だねは永遠に消えない。アフガニスタンに広範な層の支持する非同盟政府ができればみなの利益は守られる。
アフガニスタンの治安、政治、社会情勢は日々悪化している。アフガニスタン情勢は国内、周辺の領域、さらに国際的な要因と複数の当事者がからみあい複雑だと主張するアナリストがいる。それぞれの当事者はチェスで一触即発の状況を続けるがごとき役割をになっている。言い換えるなら、現下のアフガニスタン情勢を正確に理解するにはその三層構造を理解せねばならない。つまり「国内、周辺領域、国際」である。この基本の三要素の考察ぬきに戦争をおわらせ永続的な平和を実現することは不可能だ。現在までの20年間、米国は民主主義のためだ、テロと闘うためだといつわって、NATO諸国の納税者の懐から数百万ドルをかすめ取ってきた。
米国はアフガニスタン駐留期間中、2人の腐敗した部族優遇主義者を不正選挙によってアフガニスタンの舵取り役に据えた。つまり、ハミド・カルザイとアシュラフ・ガニーだ。両人はアフガン政府内で連続して権力の座についた。いま両人はカーブルの大統領宮殿に住んでおり、パキスタンの宗教学校でISI(訳注:パキスタン軍統合情報局)の傭兵として訓練され洗脳されたターリバーンと密接な関係がある(原注:1)。もう一人の主要人物は、いわゆるアフガニスタン和平プロセス米国特使であるザルメイ・ハリルザドだ。彼はほぼ2年間、カタールでの無意味かつ謎だらけの和平交渉を通してカーブルの傀儡政権と傭兵ターリバーンの両方に関わってきた。この和平交渉の結果アフガニスタンには殺戮と破壊のみがもたらされた。ハリルザドはこの和平プロセスで仲介者と触媒の役割を果たしているが、あきらかに米国の行政当局が指示するまま任務を遂行している。彼は米国平和特使としての立場を利用して、力と威嚇をもちい、アメリカ当局には現実の状況、民族構成、社会の実態について不正確で偏見にみち不適切なアドバイスを与えて、アフガニスタンを日に日に深いドロ沼へとおとしいれてしまった。
カルザイとガニーが支配した結果、ほかでもない世界で最も腐敗した政権が創造された。カルザイはアシュラフ・ガニーを大統領にするため選挙に多額の資金を投入した。アシュラフ・ガニーの選挙費用の大部分はカルザイが用立てたのだが、それはアフガニスタン復興のために寄付された基金から盗まれ使われた。
ハリルザドはユノカル(UNOCAL)でハミド・カルザイと一緒に働いていた。 「1996年にターリバーンがカーブルを包囲した後、アフガニスタン横断パイプラインの建設が計画された。カスピ海地域からアフガニスタンを経由してインド洋に至るもので、ユノカルはその建設主体セントガス・コンソーシアムを構成する主要な1社だった。」だから2人は数年にわたり密接に連絡を取り合っていた。 ハリルザドとアシュラフ・ガニーはともにベイルート・アメリカン大学で学んだ学友同士だ。 ガニーとハリルザドは、ベイルート大学の70人のメンバーからなるアフガニスタン学生協会に対抗して、アンワルルハク・アファディ(Anwarulhaq Ahadi)氏とカーブル大学の元講師であるエーサヌラー(Ehsanullah)氏とともに、アフガン・ミラット(Afghan Milat: アフガン国家)と呼ばれる別の協会を結成した。 「アフガン・ミラット」は、アフガニスタンにパシュトゥーン人だけの単一民族グループを作ることを目的とした政治組織であり、アフガニスタンに住むすべての民族グループが参加する政治による支配と包括的な国家システムを否定する。2人はいまだにこの考えにとりつかれている。このようなハリルザドこそがカルザイとガニーをアフガニスタンの権力の舵取りとして選んだ黒幕で、その役割は2人が結託して権力を維持するうえで無視できない。
彼ら(カルザイ、アシュラフ・ガニー、ハリルザド)は行動や考え方をとおして潜在的に民族的排他主義にそまった見解を頻繁に表明しており、ターリバーンを援助し強化させることに多大な貢献をしてきた。 他の民族グループに対して陰謀をめぐらし、ないがしろにすることにで彼らはアフガニスタンの効果的な防衛力を常に弱めようとしている。
国独自の防衛力を高めるのは、練度が高く愛国的な兵士からなる軍隊、民主勢力、一般の愛国者や極端な主義主張にとらわれていない人々、窃盗や汚職でけがされていない政党の存在である。こうした国防隊は、大学教授、国内外の専門家、旧ソ連の占領中に国の解放のために戦ったムジャヒディンなどで構成される。ターリバーンはパキスタンの宗教学校の産物であり、アフガニスタン国民と戦い、パキスタンとその国際的な支持者の手先として流血と破壊に精を出す。彼らはアシュラフ・ガニーとカルザイの腐敗した政権のもとで20年にわたって支援され強化されてきた。そしていま、カタールにおける和平交渉で彼らは「戦争は解決策ではない」というスローガンをかかげている。しかし、そのスローガンに反して、彼らはアフガニスタンの各地でアフガン人を毎日殺している。その方法はさまざまで、人の尊厳を踏みにじり、人権擁護の視点などまったくない。
アフガニスタンでの戦争が終わらない第二の要因は、近隣諸国が関連する領域的なものだ。近隣諸国とは、パキスタン、イラン、インド、中国、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、サウジアラビア、トルコである。そのなかには危機的状態がつづくと自国の貿易利益と政情安定を損ねるので、アフガニスタンの恒久的平和に賛同する国もある。中央アジア諸国、イラン、中国、ロシア、インドはアフガニスタンの平和と安定を支援している。
しかし、タリバンの創設と支援に何らかの形で関与してきたパキスタン、サウジアラビア、米国、英国は、アフガニスタンの平和と安定を自分たちの最大の利益だとは考えていない。 目撃者によると米国はアフガニスタン北部を不安定化させることによって、その地でターリバーンとISIS(訳注:イラクとシリアのイスラム国)というテロリストグループの強化を図っている。 ダーイシュとターリバーンの負傷した戦闘隊は、これまで何度も覆面ヘリコプターによってアフガニスタンの北部から移送されている。 同様にアフガニスタン政府もカルザイ大統領の時代から、北部を不安定化させるためにターリバーンの戦闘員を北に移すプロジェクトを遂行しており、地元の人びとから反対されていた。
「ロシアは、ダーイシュのテロリストが活発だった地域つまり特にアフガニスタンの北部で、覆面ヘリコプターが飛行を続けていると認識している。 この情報は、米国とダーイシュのテロリストの協力関係を結論するのに十分であると信じる。 我が国は入手した情報をすでに公開し、国連を含む国際機関にも伝えた。このようにしてテロリストは援軍を受け取り、負傷者と死体を搬送した」 と、ロシア外務省スポークスウーマン、マリア・ザハロワは木曜日の記者会見で語った。これに呼応して、ロシア外務省の第二アジア部長ザミール・カブロフは、「アフガニスタンの領空を完全に支配していた米軍とNATO軍に知られることなく、このような活動を行うことは不可能だったろう」と述べている。(原注:2)
アフガニスタンで壊滅的な戦争を継続するため、パキスタンのISIは何年にもわたって自国の宗教学校におけるターリバーン民兵の育成に積極的に関与してきた。パキスタンとその領域的国際的後ろ盾となる国ぐには、ターリバーンをうまく利用して戦争を継続させ恐怖とパニックを拡大させ、アフガニスタンの貴重な鉱物資源を略奪しようとしている。代理戦争を長引かせることで、パキスタンとその同盟国がヘルマンド州や他の地域で麻薬を広めその売買に関わって利益を得ることも可能となる。
NATO加盟国として参加したトルコが、カーブル空港を警備するという名目でアフガニスタンに留まる。なぜか?
トルコはNATOの加盟国であり、特にアルカイダとダーイシュを相手に、いわゆるテロリストグループとの戦いに関与してきた。米国は突然アフガニスタンを離れることで、戦争を中央アジアと中国に広げようとしている。NATOのメンバーであるトルコがカーブル空港を引き渡された結果、トルコはシリアからアフガニスタンにISISを安全かつ秘密裏に移送できるようになった。中国、中央アジア諸国(ロシアの同盟国)、イランとの国境があるアフガニスタン北部には特に大勢が送り込まれた。こうした移送は米国がカルザイ政権をカーブルに樹立したころからのプロジェクトで、傀儡政権はただの道具となってその遂行にせっせと励んだ。
アフガニスタン北部の人口は主にタジク人、ウズベク人、ハザラ人からなり、主にパシュトゥーン人からなるターリバーンにとっては潜在的な脅威である。カーブル政府内部にはパシュトゥーン人が多数いるため、北部の他の民族グループよりもむしろターリバーンに味方する。米国のアフガニスタン侵攻後、ISAF(訳注:国際治安支援部隊。ボン会議で創設された実質的NOTO軍)の一部として戦闘部隊がアフガニスタンに駐留した。トルコも加わり民間および軍の幹部の訓練を担当した。トルコは政治的および宗教的にはパキスタンと密接に関係している。そこで仲介者として行動したいと明らかに欲するのだが、実際にはアフガニスタン北部における米国の計画を間接的に促進している。その方法は?
カーブル空港の保安維持がトルコに任される場合、必要なすべての保安機器と諜報機器は米国が提供する。さらにトルコは空港の保安のためパキスタンの援助を求める。つまり、トルコを含め、米国、パキスタン、英国がすべて関与してアフガニスタン北部の制圧をつうじてこの領域全体を再建するというプロジェクトを遂行する。さらに米政権の視点からみると、トルコはイスラム世界でサウジアラビアに取って代わろうとしている。その主な理由は2つの重責をトルコが担っているから。第一は、シリアからアフガニスタン北部にダーイシュ/ ISISを安全に移動させるためカーブルの空域をしっかり管制する任務。第二に、米軍の安全な帰還を保証する任務である。
中国とロシアの指導者がアフガン危機に直面してどう反応するかは、アフガニスタンの戦場での出来事に大きく左右される。政治的かつ平和的な解決が不可能になった場合、中国とロシアは自らの国境と国益に対してアフガニスタンがおよぼす国防上経済上の脅威に備える必要がある。そうなればアフガン戦争のドロ沼に引きずり込まれる可能性が生じる。
簡潔に言えば、歴史上いつの時代でも複数の勢力がこの領域で、政治的、経済的、軍事的なゲームに明け暮れ、常にアフガン人の運命は公然とあるいは隠然とチェスの駒にたとえられてきた。つまりわれわれ国民に自らの運命を決める役目はなかった。アフガニスタンの為政者や政治家は経験を通して学んでおくべきだった。そして知るべきだ。どの国にも決して無視できない国益があり、それをゆずって他国を利することなどいかなる形にしろないということを。過去40年間の間にわれわれ全員が見てきたように社会主義陣営も帝国主義陣営も信頼できない。
かつてアフガニスタンは大英帝国とロシア帝国の角逐の舞台だったが、21世紀になると同じシナリオが異なる衣装をまとって繰り返されている。今日、世界の軍事経済大国は敵を倒すための最良かつ最も安価な方法は代理戦争を選ぶことだと考えている。親テロリストで冷酷なグループを利用して代理戦争に火をつけるだけなので、大国の立場と成功はゆるがない。大国は金も武器も子飼いのスパイも利用する。
米国代表団は最近インドを訪問し危険なターリバーンにおびえるインドの当局者を安心させた。その後、パキスタンの高官たちが米国を訪問し、カーブル政権に7千人のパキスタン製テロリストを釈放するよう強要した。これはアフガニスタンをチェスの盤面から完全に追い出すのに十分な指し手だった。各国があたかもチェスを指すかのように戦う代理戦争において、現状アフガニスタンの存在は大きな危険にさらされている。われわれ国民は、過去そうだったように、このゲームでも何の役割も果たしていない。未来は暗く、政治的地平線はどんづまりで抜け出せないように見える。もちろん、既存の傀儡政治家の存在下で、抜け出すことなど決してできない。可能な唯一の選択肢は、内外の愛国的な勢力によって段取られ統制された民衆蜂起だろう。米国で最近起きた若者たちによるデモは国内外での民衆蜂起の呼び水となる可能性がある。そうなれば領域的および国際的な複数の当事者がアフガニスタンに押しつけたこの不当な戦争における流血も止むだろう。
このままではアフガニスタンは内戦に突入するだろう。そうなると、アフガニスタンの社会不安は、経済面、政治面、安全保障面で米国に対してよりも中国とロシアの両国に対してより深刻な影響をおよぼす。つまり、過去20年間にわたり米国がアフガニスタンに駐留したことで利益を得たのはアフガニスタンではなく、米国の2つの主要なライバル国だった。しかるに近年、中国の力を制御することがアメリカの政治家や専門家にとって大きな関心事となっている。アフガン内戦に中国が巻き込まれ国家の安全保障に難題が出現することは、中国を制御するという米国の主要な目的にも合致するだろう。
ターリバーンに対抗している現況のアフガン政府に対し米国の支援が不足している理由の一つは、それが中国を封じ込めるという米国のマクロ戦略に沿っているからだと主張できる。アフガン情勢が悪化するにつれ中国は安全保障面、政治面、経済面で悪影響を感じるが、それは特にロシアをはじめとしたこの領域にある他国も同様である。つまりロシアと中国がアフガニスタンに導き入れられてターリバーンと対峙する可能性もあるのだ。他方、米国も領域的および国際的な勢力も、アフガニスタンの国民まで含め、みなの安全を確保できる可能性はある。ただし、それはすべての市民が権力を共有する一種の連邦制の広範な政府をアフガニスタンに樹立することによってであり、ターリバーンによる中世の専制的な部族制度やアシュラフ・ガニー政権によってではない。ガニーの親しい仲間であるファズリ(Fazli)氏は、「国民は権威に従うべきで何かをわれわれに要求する権利はない。われわれがボスであり、国民は羊の群れなのだ」と述べている。(原注:3)
(原注:1) https://www.facebook.com/100011452358727/posts/1583676092024121/?d=n
(原注:2)
https://parstoday.com/en/news/world-i148224-russia_us_nato_Colluding_with_daesh_in_afghanistan
(原注:3) https://www.facebook.com/1275126910/posts/10226569542806195/?d=n