インタビュー
ターリバーン復権1か月、何が変わったか?
What has changed in the Taliban reinstatement one month?
ファテー・サミ (Fateh Sami)
2021年9月13日 (13 September 2021)
ウェッブ アフガン イン ジャパン(Web Afghan in JAPAN: WAJ)はアフガン人研究者、元カーブルタイムズ編集者、SBSラジオ放送局アシスタントで経験豊かなフリーランスジャーナリストであるファテー・サミ(Fateh Sami)氏に3回連続インタビューを実施し、激動するアフガニスタンの状況についてお聞きしました。今回は、新たに、9月12日までの最新状況を踏まえ、より詳細な分析と展望をお聞きしました。インタビュアーはWAJ編集長の野口壽一。
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【インタビュー要約】
●ターリバーンとISISによるパンジシール民間人への攻撃に加担するパキスタンの空爆は、パキスタンがテロ国家であることを証明している。
●ターリバーンによる、パンジシールでの女性、子供、市民に対する野蛮な殺人は民族浄化作戦であり、人類に対する悪逆行為である。アフガニスタンでのターリバーンの残忍な行動に直面して国際社会が沈黙しているのは問題だ。
●特定の親ターリバーン西側メディアによるターリバーンの変化に関する宣伝とは真逆で、彼らはより悪いものから悪いものへではなく、より悪いものからもっとも悪いのものへと変化した。連中は20年前よりも野蛮で抑圧的になっている。
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WAJ: パキスタン政府はターリバーンへの支持を否定しています。その理由は理解できますが、なぜ世界のマスメディアのほとんどがこの事実を完全に無視しているのでしょうか。理由がわかれば教えてください。
SAMI: ターリバーンとパキスタンISIとの関係を証明する多くの証拠があります。パキスタンの政治家は否定していますが、アフガニスタンでは子供でさえ、パキスタンが40年間アフガニスタンの内政に関与しており、アフガニスタンの破壊を続けていることを知っています。パキスタンの政治家には裏表があり偽善的で信頼できません。
西側のマスメディアがこの事実を無視する理由を語るには、証拠にもとづく必要があるでしょう。ここに独立した情報源が新たに確認した証拠があります。その証拠が示すのはパキスタンの奇襲部隊によるパンジシール渓谷空爆です。この攻撃がパキスタンによるものと非難したのは、元イラン大統領マフムード・アフマディネジャドとタジキスタンでした。ターリバーンは、パンジシールで子供、女性、民間人の虐殺という人道に対する罪を犯しているパキスタンの奴隷なのです。
にもかかわらず、このようなテロ集団を承認することは、犯罪者を支援することを意味します。だから西側メディアはこの点に触れたがらないのです。ところが、ファックスニュース(訳注:2017年10月6日に創立されたアルバニアのニューステレビ局)は、「ターリバーンに加勢したパキスタン軍が特殊部隊に所属する27機のヘリコプターで、ドローン攻撃に援護されつつパンジシールを空爆した」と伝えています。また、このパンジシール攻撃でターリバーンの民兵3000名が捕らえられ拘留されましたが、彼らはペルシア語もパシュトゥー語も話せません。ターリバーンが必死に増派を求めていたことは通話傍聴記録が明白に示しています。その要請によって突然、パキスタンの戦闘機とドローンがパンジシールの空に現れ、パンジシールの軍隊と民間人を無差別に攻撃し、国民抵抗戦線のスポークスマンであるファヒム・ダシュティ(Fahim Dashti)を含む多数を殺傷しました。
WAJ: インドはそんなパキスタン政府と、いわゆる戦略的深度政策をとるISIにどのように反応すると思いますか?(訳注:戦略的深度政策/strategic depth policy:南北に細長いパキスタンはインドから攻め込まれた場合ひとたまりもない。したがって西方に位置するアフガニスタンを自国の後方陣地とするためアフガニスタンをつねに親パキスタンにしておく、という軍事作戦にもとづく政策)
SAMI: ターリバーンはパキスタンの手先ですから、インドにとってすでに大きな頭痛の種のはずですし、さもなくば将来必ずそうなります。インドとパキスタンの間には国境紛争があり、昔から多くの戦争と衝突を続けてきました。したがって、インドの諜報機関は、アフガニスタンでのパキスタンの活動について非常に警戒しています。 パキスタンISI長官の最近のカーブル訪問(訳注:CIA-BBC報道によれば8月23日)と国民抵抗戦線の拠点であるパンジシール渓谷への空襲は、インドでも注目されソーシャルメディアに多数投稿されています。
WAJ: ターリバーンはISIによってパキスタンで創られ、主な構成員はパシュトゥーン人です。しかし、タジク人とウズベク人もイスラム教徒で、彼らに加わったと言われています。それは本当ですか? ハザラ人はどうですか?
SAMI: ターリバーンの大多数は、パキスタンのいくつかの宗教学校で訓練を受けたパシュトゥーン人です。最近、一部のタジク人も洗脳されてターリバーンに加わりましたが、ハザラ人のターリバーンを見ることはめったにありません。これが厳然たる真実です。
WAJ: アフガニスタンの歴史において、歴代の王と首相のほとんどは、パシュトゥーン人でした。アフガニスタンを統治する強力な力と能力を持っているからだ、と彼らは言います。それは本当ですか?
SAMI: まあ、一面真実、他面ウソというところですかね。アフガニスタンを後進的な緩衝国として維持するために、外国の勢力つまり英国とロシアはパシュトゥーン人の国王や首長を任命しました。その点では真実です。しかし、長い歴史の中で、主に過去270年間で、アフガニスタンの政府が国の統一のために機能したことは一度もありません。
他方、王たちはパシュトゥーン人の利益のためにも、他の民族のためにも働いていません。この点ではウソです。イギリス植民地時代の分割統治政策(訳注:植民地で各集団を民族・宗教・地域で差別し互いに反目させる統治方法)に王たちはずっとしがみついていました。そのため、パシュトゥーン人の利益を守るためでなくパシュトゥーン人を軍隊として自らの利益のために使って他の民族を抑圧したのです。だからすべての民族が政府に満足していなかったのです。外国とつながった全体主義政府がそんな政策をとったために、民族間で摩擦と絶え間ない紛争が生じ、国民の間にほとんど権力基盤がめばえなかったのです。
WAJ: パキスタンにもパシュトゥーン人がいます。人口の15〜20%で、軍隊ではそれよりも高い比率だと言われています。彼らがパキスタンとアフガニスタンの2つの国に存在するという特殊事情はパキスタンの対アフガニスタン政策にどんな影響を与えていますか?
SAMI: パキスタンはパシュトゥーン人が国境を越えてひとつになることを望んでいません。パキスタンの崩壊につながるからです。パキスタン政権は、強力で自立したアフガニスタン政府を望んでいません。パキスタンがアフガニスタンとインドの2つの強力な国の間でサンドイッチとなってしまうからです。つまり、パキスタンは「弱い政府、親パキスタン、反インド」をアフガニスタンに対して常に追い求めてきたのです。
WAJ: パキスタンにはパキスタン独自のターリバーン運動であるパキスタン・ターリバーン運動(TTP)があります。アフガニスタンのターリバーンとの関係は?
SAMI: 2つのターリバーンは何らかの方法でお互いに関連があります。両者とも、パキスタンの目的と利益を実現するためにISIによって監督されており、中国と協力しています。
WAJ: 最近、多くの中国企業や技術者がパキスタンで襲撃されています。犯人はイスラム教徒であると疑われています。中国(および米国)は、ターリバーンとパキスタンのどちらか、または両方がこれらのイスラム過激派を規制することを望んでいます。ターリバーンはそのような任務を遂行することができますか?
SAMI: パキスタンでの襲撃事件はまさに計画された攻撃です。米軍撤退後に、中国がアフガニスタンで銅などの鉱物を採掘する契約を結ぶことができれば、ターリバーンと接近することになります。中国はターリバーンとの取引に関心を持っていますが、アフガニスタンのターリバーンはさまざまな派閥に分かれているので、国内のイスラム過激派を規制できないと思います。 ダーイッシュ(訳注:Daesh/イスラム教スンナ派武装組織ISISのこと)は中国の地理経済的な野心を妨害するため外国で生まれたテロ集団で、背後には中国のライバルである西側諸国がいます。長期的に見れば、ウイグルにイスラム過激派が侵入する可能性があり、中国とパキスタンの関係に悪影響を与える公算はとても高いといえます。これについては改めて議論します。
WAJ: 8月25日、米国とターリバーンに抗議するために、世界35か国で統一行動が行われました。海外のアフガニスタン人のための統一された本部はありますか? アフガニスタンではどうですか?
SAMI: ターリバーンに対するデモは国の内外で組織されています。それはこれまでにロンドン、多くのヨーロッパ諸国、カナダ、アメリカ、そしてアフガニスタンの多くの都市で起きました。デモを通して世界の人びとが声を上げ続けています。現在、正式な世界統一の司令部はありませんが、つくられる予定です。いまは、難民として生活しているアフガニスタンの人びとだけが各コミュニティに連絡を取りあい、デモを組織しています。たんなる自発的な抗議ではなく、国際的な集まりです。
WAJ: ガニー政権の収入の半分以上は外国からの援助で、公務員や兵士の給与もそれでまかなわれていました。しかし現在、アフガニスタンの90億ドルの外貨は凍結されており、ターリバーンには使用できません。ターリバーン政府は財政的に行き詰まるのではないでしょうか?
SAMI: 現在、ターリバーンは自らの民兵を養うことができません。彼らはカーブルで住居に押し入って住民に食べ物を要求しています。ターリバーンは、国民を貧困と飢餓に追いやり、悲惨で途方もない問題に直面するでしょう。
WAJ: カーブル、ヘラート、その他のアフガニスタン地域での女性のデモを、ターリバーンは非人道的な暴力で抑圧しました。これはターリバーンが変わっていないことを示していませんか?
SAMI: ターリバーンがカーブル宮殿を占拠できたのは、アシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)とアフガニスタン破壊のための米国使節であるザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)による組織的な共謀の結果でしたが、それから数日でターリバーンの行動はカーブルの人々に明らかとなりました。ターリバーンは20年経っても知的に変化しておらず、困窮している人々に慈悲を示していません。彼らは、国際人権コミュニティや認められた人権条約の尊厳に敬意を表しません。事実がそれを明らかにしています。
彼らは前政権で働いていた人びと、教育を受けた人びと、ジャーナリストを家からひっぱり出し、射殺しています。店で食べ物を買っても、支払いはしません。同様に、彼らはガソリンスタンドで車のタンクにガソリンを入れますが、支払いはしません。女性は家を出ないように脅されています。彼らの行動は、教育を受けた女性やアフガニスタンの現代社会には受け入れられません。そのため、多くの女性が街頭に出て、ターリバーンとその支持者であるISIに対する憎悪と嫌悪を表明しました。女性たちは「ターリバーンはいらない」と唱えました。「パキスタンへ死を、ターリバーンとISISの支持者へ死を、テロリストの生みの親へ死を」と叫んでいます。
ターリバーン反対デモの最中に、女性たちは殴打され、数人が負傷したり殺害されたりしています。残念ながら、世界はこのテロリスト集団の非人道的な行為にたいして沈黙しており、アフガニスタンを不安と内戦に追い込む陰謀の渦中に置かれています。
WAJ: ターリバーンがパンジシールを攻撃したとき、3000人が捕虜(POW)となる深刻な敗北を喫したと聞きました。 国民抵抗線戦(National Resistance Front/NRF)は捕虜をどのように扱いましたか?
SAMI: ターリバーンのテロ集団は、パンジシール攻撃中に国民抵抗戦線(NRF)の防衛軍によって捕らえられ、抑留されました。彼らは人道的に扱われました。 NRFのリーダーであるアフマド・マスード(Ahmad Masoud)は、彼らがパンジシールにとどまる限りは客として扱われると保証しました。相違は交渉を通じて解決されます。ターリバーンはパンジシール攻撃で深刻な打撃をこうむりました。
しかし、ターリバーンには捕虜の威信にたいする認識はありません、彼らは捕虜をすぐに殺すか、奴隷にします。
そればかりか、ターリバーンを直接支援しているパキスタン空軍がパンジシールを攻撃したのに乗じて、ターリバーンは人道に対する憎むべき罪を犯しました。彼らは大量虐殺と民族浄化を始めたのです。
防衛軍には関与していなかった女性、子供、民間人、若者、および年長者が弾丸で襲われました。ターリバーンが抗争を始めたから抵抗が起きたのに。国際的な「人権擁護者」は、ターリバーンがパンジシールで犯した犯罪について死んだように沈黙を守っています。
WAJ: ISI長官がカーブルを訪問してから、ターリバーンのパンジシール攻撃を直接支援するためにパキスタン空軍が派兵され、大量虐殺と民族浄化作戦が遂行されたのですね。
SAMI: ターリバーンは、パンジシールで次々と民家に押し入り女性と子供を狙って撃ったと伝えられています。パンジシールで撮られた国民抵抗戦線による動画は、この主張の正しさを証明しています。いくつかの西側メディアの現地支局は、ターリバーンが20年前とくらべて変化していると主張しています。しかしそれには根拠がなく、ターリバーンの蛮行を覆い隠す宣伝であり、うかつに信じると彼らは20年前よりもさらに残酷になります。彼らは、過去にも、現在にも、アフガン人と敵対する外国とくにパキスタンの諜報機関から直接の支援を受けて、男性、女性、子供、少数民族に対して無差別に恐ろしい犯罪を犯した人権侵害者です。彼らは民族浄化をはたらき、人びとにパンジシール、タカール、バダフシャンを明け渡させようとしています。これは、連中が国際法、つまり人びとと女性の自由への権利に関する国連人権宣言を考慮していないことを示しています。パキスタンの諜報機関に支持された連中の手前勝手な政権が行っているのはアフガニスタン国民に対する迫害にほかなりません。
WAJ: こうしたターリバーンの悪行はアフガニスタンを長引く紛争へと導き、やがて内戦が始まる兆候です。パンジシールでの戦闘にパキスタンが関与した証拠はありますか?
SAMI: 独立した情報源が確認した証拠によると、パキスタンの戦闘機27機とドローンがパンジシール渓谷を攻撃しました。
また前述の通り、ファックスニュースは「パキスタン軍が特殊部隊に所属する27機のヘリコプターで、ドローン攻撃に援護されつつパンジシールを空爆し、ターリバーンに加勢した」と報じています。「戦闘機」と「ヘリコプター」の違いはあるものの、この報道内容は上の情報を裏打ちしています。
WAJ: ターリバーンが内閣を発表するのになぜこんなに時間がかかったのですか? (訳注:内閣名簿は『トピックス』の2021年9月8日 <中東瓦版No.58>を参照)
SAMI: ターリバーンには互いに権力争いをしているいくつかの派閥があります。最近発表されたISIの奴隷およびその手先たるターリバーンの内閣は、戦争犯罪者、人権侵害者、ISIS工作員、テロリストの囚人、女性虐待者で構成されており、そのほとんどが国連のブラックリストに載っています。
WAJ: ターリバーン政府の代表は誰ですか?
SAMI: 力はみな拮抗しています。シラジュディン・ハッカーニ(Sirajuddin Haqqani)を例にとると、内務大臣代理に指名されましたが、国連のブラックリストに載っています。つまり彼らに統治能力などありません。彼らは行政経験がなく、建設能力もありません。建設ではなく破壊する力があるだけです。アフガニスタン中で何度となく虐殺と破壊を繰り返して才能をひけらかしターリバーンという集団をかたちづくってきた人物たちです。
ターリバーン内閣は、教育を受けておらず、現代風の学歴を持たない人物でいっぱいです。彼らは戦闘で勝利したことにより昇進しました。連中は他者との権力共有を拒否し、議論の余地なき権力を自らアフガニスタンに拡大したと主張しました。彼らが発表した内閣は元テロリストばかりで、適任者がおらず皆を驚かせました。
パンジシールの国民抵抗戦線はいまだ完全に活動しており、この地域を占領したとするターリバーンの主張は間違っています。抵抗はパンジシールだけでなく、全国で日々強化されています。パンジシールの抵抗の声は窒息することなく、全国に強い影響を及ぼしています。ターリバーンと彼らの後援者はそのことを認識する必要があります。
アフガニスタンの運命については多くの懸念があります。報告によると、国の経済は崩壊の危機に瀕しており、反対勢力は着実に成長しています。しかし、ターリバーンは、アシュラフ・ガニー、ハリルザド、ハミド・カルザイなどと共謀して得た権力を簡単に譲ったり分け合ったりはしないでしょう。内閣発表で彼らは権力の共有に興味がないことを示し、それを誰もが理解しています。
WAJ: ターリバーンがカーブルを占領する前には、広範な政府の樹立がいわれていましたが、それについてはどうですか?
SAMI: 壊滅的です。この内閣は典型的に民族・部族的であり、単一の宗教(スンナ派)を信じ、同じ言語をしゃべり、独占的で自己中心的であって、過去2世紀のあいだに植民地の支配者が力で作った内閣そのものです。だから、いまなおアフガニスタン国民は広範な支持に支えられた内閣というものを待ったことがありません。そのうえ外国の諜報機関とつながった傭兵がしっかりと入閣しているのだからなおさらです。今回その諜報機関はパキスタンの軍統合情報局ISIですが。
WAJ: イスラムに対する偏狭な視野をもつターリバーンの政府は国民の協力を得られますか? 彼らはムラーと呼ばれる宗教指導者であり、国家を運営するための経験や専門知識を持っているとは思えないのですが。
SAMI: もちろん、彼らのほとんどはイスラム教の狭い視野しか持っていません。ターリバーンは狂信的で過激な宗教団体であり、イスラム教についての知識は非常に限られており、彼らの行動はイスラム教と聖なるコーランの教えに反しています。彼らはイスラム教を、権力を握るという本当の意図を隠すための隠蔽工作に使っています。経済、健康、教育、農業、通信、建設など、どの分野でも自前の専門家を持ち合わせていません。彼らは、いまだけアフガニスタンを占領しているパキスタンの手先にすぎません。
WAJ: ターリバーン政権は、立法権、行政権、司法権など、権力分立を承認していますか。
SAMI: 承認していません。彼らのシステムは現代世界の政府システムとは合致しない中世の権威主義システムです。
WAJ: ターリバーン政府のメンバーのほとんどは、人道に対する罪で国連のブラックリストに載っています。彼らはどのようにして内閣のメンバーを選んだのでしょうか? 彼らの選択基準は何だと思いますか? ターリバーンに抗議するデモが世界中で起きているのはなぜですか?
SAMI: ターリバーンの自作内閣の選択基準は仲間内に限られており、専門知識に基づくものではありません。彼らは罪を犯せば犯すほど、政府内に権力を持ちたいと思うようになります。内部の不和、穏健派と過激派、そしてギルザイ対ドゥッラーニーという部族対立に苦しんでいます。若い教育を受けた世代はターリバーンとうまくやっていけません。アフガニスタン内外の人びとはデモを行い不満を表明しています。つまりターリバーンは国内外のアフガン人コミュニティに受け入れられていません。反ターリバーン運動は、ターリバーンが国内的および国際的に認められるには大きな壁になっています。
WAJ: ターリバーンは、彼らに対するいかなる抵抗も非合法であり、イスラム法に基づいて鎮圧すると言うのはなぜですか?
SAMI: そんな主張のどこに合法性がありますか? 彼らはアフガニスタン国民に対して何度も犯罪を犯したテロ集団ですよ。過激派の民兵で構成されています。先に述べたように、政府運営に関する彼らの視点はとても偏狭です。彼らが得意とするのは、銃と暴力で抵抗を抑えることだけです。
WAJ: ターリバーンは20年前と比べて変わりましたか?
SAMI: 米国平和特使のハリルザドが語っていたたわごとです。彼は最初のボン会議以来、失敗つづきでした。ハミド・カルザイとアシュラフ・ガニーという2人の大統領をロビー活動で支援し、派手で組織的ないかさま選挙に勝たせましたが、2人とも無能で腐っていました。ハリルザドはそんな過去の失態を覆い隠そうと悪あがきをしているだけです。カーブル入城から数日もしないのにターリバーンは自らが20年前よりも凶暴であることを証明しました。
WAJ: ターリバーンは捕らえられた兵士をどのように扱いますか?彼らは国際法で定められた捕虜として扱われていますか?
SAMI: 彼らは捕虜を即座に撃ち殺し、ひどく非人道的に殴打します。証拠として多くの動画があります。
WAJ: ターリバーンは抵抗を打ち砕き、パンジシールに入ったと主張しています。もちろん、この主張は否定されました。ただ、この地域には食料をどう運び込むかをふくめ課題が山積みです。パンジシールの攻防は長期的なものになるのでしょうか。
SAMI: パンジシール渓谷は地理的にたくさんの谷からなり、移動が困難です。これらの谷の1つにあるのが州都バザラックです。距離的にも、アスファルト道路があることでも、最もアクセスしやすい谷です。ターリバーンは、パキスタンによる激しい空爆の後、この地域を乗っ取りました。しかし、ほかの谷は抵抗勢力が堅持しています。谷をいま守っている抵抗勢力は、タジク人とは限らず全国から集まったさまざまな民族の人びとです。ターリバーンとターリバーンを装ったパキスタン軍への徹底抗戦を決意し集まりました。ところが敵はパシュトゥ―語もペルシャ語もダリ―語も話せません。彼らはパキスタンの国語であるウルドゥー語を話していました。
ソビエト連邦がパンジシールに侵攻していたときも、州の全土が敵軍の手に落ちずにすんだなどとは言われませんでした。あのときも州都バザラックは敵軍の手に落ちたのです。このことを忘れてはなりません。その地は双方の奪い合いがつづき何度か敵の手に落ちましたが、それ以外の谷は赤軍に落ちませんでした。この領域の状況は、地理的、地形的、人口統計的に独特です。抵抗勢力はパンジシールにいまも存在し、冷静に協調的態度をたもち、停戦と和解を求めています。
しかし、ターリバーンのアプローチは、地理的、人道的、文化的に、国全体に民族主権を拡大することです。その態度は現在そして将来においても抵抗に直面します。アフガニスタン南部と北部の間には多くの違いがあり、これがとても長い間の抵抗運動につながってきました。
WAJ: いくつかの国が、パンジシールの動きを支援してきました。しかし今、彼らの主な支持者はタジキスタンです。この領域での新たな展開と、ターリバーンが1990年代ほど嫌われておらず、他国との関係を維持しようとしている事実を考えると、パンジシールとターリバーンへの反対派の状況はどうなるのでしょうか。
SAMI: アフガニスタンは多民族の国です。国勢調査に基づく多数派と少数派といった優劣もありません。人口は多くの民族で構成されています。抵抗勢力が求めているのは正義と公正な分配です。人がその属性で差別されたり偏見の目でみられることのない社会です。アフガニスタンの東西南北どこでもさまざまな民族が人口を構成しています。そのため1つの民族グループがすべてを支配することはできません。言い換えれば、ひとつの民族だけがその支配を永遠に強化する時代は過去のものとなりました。現代でそれを目指すと、民族的に多元なアフガニスタンは長期的に生き残ることができません。一方で、ターリバーンの間にも多くの分裂と違いがあります。部族制度のもとでは彼らの間に団結はなく、したがって意見が多様化し権力争いも広がり、彼らの内部には常に対立があります。
WAJ: 事態の急展開を受けたインタビューでしたが、詳細な説明をしていただき、感謝いたします。より具体的な情報や十分な証拠に基づく議論をするには、今はおおくの制約があります。しかし、平和でよりよいアフガニスタンをもとめる人びとの要求と活動は世界中で広がっています。アフガン国内の闘いと連帯する世界の良識によって必ずやよい未来が開けると信じています。ありがとうございました。