Causes of the failure of the US occupation of Afghanistan in 20 years<2>

 

アフガンでの米国の失敗とは何だ? ハリルザドが使った費用は査定されるべき、と専門家の声
What is the failure of the US in Afghanistan? Khalilzad, his money should be assessed., experts say.

ファテー サミ (Fateh Sami)
2021年9月28日 (28 September 2021)

アフガン国民が米国の対テロ戦争で得たもの:

 

ハリルザドの中立性についての疑念:ドーハ合意によりターリバーンは米軍と連合軍への攻撃停止を強制されたが、アルカイダの追放やアフガン軍への攻撃停止は明確に義務付けられなかった、とアナリストは信じている。当時の国務長官マイク・ポンペオと会談したことはターリバーンに正当性を与え、米国でトランプに会わせる議論もあった。

米国はアフガニスタンを置き去りにして去った。停戦もせず、終戦時の和解に必要な将来の和平プロセスの骨子さえ示さず。一部のアナリストは次のように信じている。つまり、ターリバーンと和解した一方でハリルザド(Khalilzad)は合意後の数か月にわたりアフガン政府に強く働きかけ、数千人のターリバーン囚人を釈放させた、と。ただ全体としては、トランプからバイデンへの切り替わりのタイミングを考えると、この合意を受けてアフガン政府がうまく立ち回る時間はほとんどなかった。しかし、アシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)とターリバーンはずっと以前から関係を持っていた。国軍はターリバーンに対して攻撃的な作戦を行うことを許可されなかった。 ハリルザドとアシュラフ・ガニーはどちらも、ターリバーンを権力の座につけたいと考えていた。タジク人ら他の民族グループに権力が渡ることを恐れていた。

ターリバーンが8月15日にカーブルを支配する2日まえ、アフガン戦争の退役軍人で米国国会議員のマイケル・ウォルツは、ハリルザドの働きに異議を唱える次のような手紙をバイデン大統領に書いた。

「ハリルザドがあなたに与えたアドバイスはひどいものです。それゆえ彼の外交戦略はものの見事に失敗しました。こんな大惨事を招いた使節(ハリルザド)は直ちに辞任するか、解任されなければなりません。」

同じ日に、ハリルザドはカーブルに接近しているターリバーンに対して戦闘員を撤退させるよう促しているとツイートした。

彼の働きによってアフガニスタンにおける米国の20年戦争が終ったと言うアナリストもいるが、彼の任務は失敗し2020年2月ドーハで合意に署名せざるをえなかったと大半が信じている。彼は政治的和解をもたらすことができなかった。この多数が信じるところによれば、ドーハ合意は正当性と政治的信頼を得るためにターリバーンが放った巧妙な一手だった。ハリルザドはここでも自分個人および家族のもうけを増やすという政治目標をしっかりと追い求めた。

米国人ジャーナリスト、スティーブ・コールはその著書にこう記している。「2003年4月、ブッシュ政権はアフガン政策の管理をザルメイ・ハリルザドの手に一段と集中させた。彼はカーブルに飛んでアフガニスタン諜報部のエンジニア・アリフ(Engineer Arif)長官に会った。アリフの報告によれば、『ISIの顧客がカンダハールとジャララバードで任務につき…テロ分子が武器を積んだ車両でパキスタン国境を自由に行き来するのを助けている』という。アリフはブッシュ政権に警告した。『パキスタンは今やアフガニスタンの不安定さを助長している』と。」 (1)

「カンダハール空港には約4000人のアメリカおよび同盟国の兵士がいた。彼らの使命は平和維持ではなく、テロリストの逮捕だった。彼らは基地を守り警備するために信頼できる地元の治安部隊を必要としていた。このターリバーンの中心地には信頼できる味方がほとんどいなかったのだ。シェルザイ家(訳注:当時のカンダハール州知事グル・アガ・シェルザイGul Agha Sherzaiの一族)が有料でその役を買って出た。NATO軍が空軍基地の周囲に丸く安全地帯を築いて内側を守り、外側はシェルザイ知事の民兵が契約のもと守った。」 (2)
現在、シェルザイはカンダハールの新任知事としてターリバーンに指名されている。

ハリルザドは、カタールでの数か月にわたる会談の間に、ターリバーン代表団と緊密な関係を築いたと言われている。ターリバーンの交渉担当者と笑顔で握手をしているハリルザドの写真はアフガニスタンで不満を引き起こした。

同時に、多くが信じるところによると、ハリルザドはターリバーンと以前商取引を行っており、その正直さと公平性に疑義が生じている。ハリルザドは1990年代半ば、米国の石油大手ユノカルの顧問を務め、ターリバーンと契約交渉をしていた。アフガニスタン案件で米国のトップに立つ前のことだ。その時ターリバーンと話し合ったのは、アフガニスタンを通るガスと石油のパイプラインを建設する可能性についてだった。

2014年には、ハリルザドの欧州における財源が捜査され、オーストリアにある妻名義の銀行口座が凍結された。米国司法省によると、イラクとアラブ首長国連邦での貿易活動にからむマネーロンダリングの疑いだった。

彼がアフガニスタンヘの米国使節に任命されるまえ、アフガニスタン国民の中には、彼が「米国侵略後のパシュトゥーン人による支配を擁護している」とはっきりは言わないまでも、「彼は以前から民族性にもとづいて行動している」と非難して、任命反対の請願書に署名するものもいた。

大西洋評議会(訳注:アトランティック・カウンシル=米国のシンクタンク)の南アジアセンターの上級非居住者メンバーであるカマル・アラム(Kamal Alam)は、トルコの国際テレビ放送のインタビューで、ハリルザドをアフガニスタン全土に混乱と破壊をもたらした張本人と呼び、二度とアフガニスタンで自らの政治的野心を明言することなど許されない、と付け加えた。つまり、米国とターリバーンの間で調停を進めながら、ハリルザドは欲を出して2009年のアフガニスタン大統領選挙でハミド・カルザイ(Hamid Karzai)への挑戦を企てたと噂されている。立候補の期限を逃して野望はついえたそうだが。

アラムは語った。「アフガニスタンという他国の大統領選挙に立候補しようという人間が、どうしてアメリカの役人として中立を保てますか?」〝アフガニスタンというグレートゲーム〟に積極的に参加してきた人間に、独立したコンサルタントの仕事などできるはずもなかった、とアラムはつけ加えた。

このアナリストによると、ハリルザドは過去15年間のイラクとアフガニスタンにおける米国の政策の手痛い失敗そのものだ。「トランプはハリルザドに『ここから私を救い出してくれ。ほかは何もいらない』と言いました。そこで彼はただトランプを喜ばせようと、相手に合わせてつぎつぎ異なる話を繰り出し、みなに嘘をつきました。それがハリルザド最大の失敗です。」とアラムは語った。

ムジャヒディンの指導者の1人ガイラニ(Ghailani)氏もまた、「ムジャヒディンの指導者たちがパキスタンにいたころ、ハリルザドは会うたびに違った嘘をつき、分割統治策を弄していた」と述べた。

バイデン政権下でも米国使節としてハリルザドの在職期間が延長されたのはターリバーンと話すことができる唯一の男であると彼が信じられていたためだとガイラニ氏は述べた。米軍があわてて撤退したあとでさえ、ワシントンでのハリルザドの政治的価値はさらに高まったと言う。

 

麻薬の栽培と使用:さてここでいったん主題を変えて、麻薬の栽培と使用について見ておこう。アフガニスタンの麻薬取引に詳しい米国当局者は、「私たちは脇で傍観していた。そのため不幸なことに、ターリバーンがおそらく世界で最大の資金提供を受ける指定外テロ組織になるのを許してしまった。」と述べている。また匿名を条件にこうも述べた。「米軍と世界の同盟国軍は撤退を続けているが、ケシの栽培については無言のままだ。気がつけば爆発的に増えていますよ。」

専門家によると、ターリバーンと公務員は長いあいだ結託して麻薬取引を進めてきた。国連とワシントンは、ターリバーンが麻薬産業の全部門に関わっていると主張している。ケシの植え付け、アヘンの抽出、輸送を直接担うのは序の口で、〝取引税〟を細かく定めて徴収するのも彼らの業務だ。課税対象は栽培者と麻薬工場に始まり、外国に運び出す密輸業者への課金にも及ぶ。こうして麻薬はアフリカ、ヨーロッパ、カナダ、ロシア、中東、およびアジアのその他の地域へと送られる。

ロイター通信は次のよう報じている。「米国は、アヘンとヘロインの取引から得るターリバーンの利益を奪うための努力(ケシの根絶から疑わしい工場への空爆や襲撃など)に15年間で80億ドル以上を費やした。しかしアフガニスタンは依然として世界最大の違法な麻薬供給業者で今後も必ず生き残るだろうと米国と国連の現旧当局者および専門家は述べている」と。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告によると、アヘン生産の過去最高の推定値は、2017年に9,900トンで、農民による売上高は約14億ドル、アフガニスタンのGDPの約7%に相当した。 UNODCは、その年の同国の違法な麻薬経済全体を66億ドルと見積もった。

国連当局者は、ターリバーンが麻薬取引で2018-19年期に4億ドル以上を稼いだ可能性が高いと報告した。 2021年5月、米国のアフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)の報告書は、米国当局者の発言として、「ターリバーンの年間収益のうち最大60%は違法な麻薬によるものと推定される」と伝えている。

UNODCが発表したアフガニスタンでの薬物使用に関する調査結果によると、15~64歳の約100万人のアフガニスタン人が薬物中毒に苦しんでいる。つまりアヘン中毒は、アヘン生産に正比例して増大している。「多くのアフガン人は、困難にでくわすと一種の自己治療として薬物を服用する。戦争をめぐるトラウマが30年間も続いたため、麻薬の入手はたやすくとも治療はむつかしく、アフガニスタンの大きな問題となっている」と国連開発計画(UNDP)事務局長は述べている。(3)

100万人と推定されたのは2010年のことなので、現在では約300万人の人口が薬物中毒に苦しんでいると推定される。2009年には、少なくとも人口の3%が麻薬中毒だったが、中毒は簡単に隠され過少報告される可能性があるため、実際はこの数字より多いと国連は考えている。2015年までに中毒率は9.5パーセントに上昇した。また14歳までの子どもたちの中毒者も詳しく調べられ、国連の報告によるとひとつまたは複数タイプの薬物について陽性となるか、過去の積極的摂取を示したものは9.2%にものぼったと言う。

2010年に当時のUNDOCの執行役員はこう述べた。「アフガニスタンが世界の健康破壊を引き起こす麻薬の主要な生産者であるということについて、多くのことが言われ、書かれてきました。しかし今や同じ悲劇がアフガニスタン国内で起ころうとしています。」(4)

このような悲惨な状況を生み出すことに関与したのは誰か?

言い換えれば、カルザイとガニーという最も腐敗した政府を支援する米国がアフガニスタンに駐留したのは何のためだったのかがいま問われねばならない。そのために全人口が組織的な絶滅と荒廃の危機にさらされたのだから。結果は、パキスタンに避難所を与えられたターリバーンという犯罪組織を呼び戻したことで終わった。ビン=ラーディンとターリバーンに対する作戦はパキスタンではなんら行われなかった。

NGO職員を含むアフガンニスタン人高官が国外の銀行に預けている資産を見つけ出し調べあげて、収入と支出を評価することが米国にはできる。汚職高官は起訴されるべきであり、彼らの金は没収され、貧しい人びとのために使われるべきだ。アシュラフ・ガニーとハミド・カルザイも同様だ。アメリカの操り人形のこの2人が失敗の原因で、管理ミスと無能さで何百万、何千万人ものアフガン人を不幸に陥れたからだ。またハッカーニ(Haqqani)のテロ集団も起訴されるべきだ。さらにハリルザドも。彼はアフガン人とアメリカ人に対する殺人に責任がある。

困難な状況にあるアフガニスタン:敵意に満ちたターリバーン政権の再来で地域戦争の危機が迫るアフガニスタン。カーブルが陥落し、それに続いてすべての政府が沈黙を守るなか、アフガニスタンの将来について再びにがい苦しみを私たちは肌で感じている。

ドーハ合意は、米国とターリバーンと言うテロリストグループによってのみ署名された。その結果、カーブルは違法なターリバーンの手に委ねられた。驚いたことに、ドーハ合意の署名と実施の合法性は、米国の裁判所で争われなかった。

アフガニスタンはさまざまな民族や宗教で構成されている。とは言え、人口比率で言うとタジク人とパシュトゥーン人が拮抗し、その差は1~2%程度あるかないかだ。他の諸民族もいくらか少ないだけで続いている。つまりアフガニスタンは少数民族の国なのだ。ターリバーンは、パシュトゥーン人のさまざまな氏族で構成されている。ターリバーンの偉大なる故郷と称されるカンダハール州を出身地とする部族とハッカーニ・ネットワークが権力を二分している。後者はロイ・パクティア州が出身地だ。どちらの州も、パキスタンとの国境地帯に広がっている。

ターリバーンのルーツはカンダハールにあり、ハッカーニ・ネットワークの基盤パクティアにはパキスタンの影響力が大きい。 ムラー・オマル(訳注:Mullah Omar/ ムハンマド・オマルはターリバーンの創設者。アフガニスタン・イスラム首長国の首長となったが2013年に死亡。しかしターリバーンは死亡後2年間それを秘密にし同氏の名前で指示を発していた)やアブドゥル・ガニー・バラダル(訳注:Abdul Ghani Baradar/ バラダル師とかムッラー・ブラザーと呼ばれることもある、アフガンターリバーンの共同創設者。暫定政権副首相)のようなカンダハールの指導者はISI(パキスタン軍統合情報局)にあまり関心がない。そこで同組織はハッカーニを手なづけて、アフガニスタンの新政府で一定の役割を果たさせようとしている。他方、カンダハール出身者たちは民族主義者であり、和平協定を結び、他のアフガニスタンの民族グループと包括的な政府を形成することをいとわないかもしれない。ハッカーニは過激なワッハーブ派で、当初からイスラム国ホラーサーン州やアルカイダ、またその他のテロリストグループの最大の支持者だった。

主にパンジャブ州の出身者が主導するISIは、2001年以来これまでに亡命したほとんどのターリバーン指導者を支援してきた。ターリバーンとの関係は、アフガニスタンのムジャヒディンがパキスタンに移り訓練を受けていたソビエト占領期にまでさかのぼる。

穏健なムスリム政府はアフガニスタン国民に受け入れられるだろう。穏健なムスリム共和制ならば過激派テログループの避難所として使用されることがなく、国際社会も問題を抱え込まずひと安心だ。コーランに従うイスラム教は信仰や所属の異なる人々を殺す宗教ではない。しかし、ISIが支援する現在のターリバーン政権のような過激派政府が継続すれば、アフガニスタンの内外で認められることはない。

現在、ターリバーンは国内で嫌われている。 また、アフガニスタンで内戦を意図的に発火させようとしているISIが強制的にこしらえた政権の存在により、人々は大きな課題に直面している。パキスタンがアフガニスタンで戦争を継続させ利用するのには、2つの大きな理由がある。

第一に、アフガニスタンで戦争が長引くにつれて、積極的で専門的な人材の多くが国を離れる。するとターリバーン政府はパキスタンに依存する。その結果、パキスタンはアフガニスタンへの足がかりを築き、その貴重な鉱物資源を求めて、アフガニスタンをより深く掌握し利用する。 インドのような他国は、戦争含みの不安定な国に投資できない。 したがって、戦争が長期化しアフガニスタンの孤立が続けば、パキスタンがもうかり、長期的な戦略的利益を獲得するための土台が整う。現在のターリバーン内閣の人選も、パンジシール攻撃への支援も、そのような好戦的な政策によるものだ。わが身の利益のために、パキスタンは火に油を注ごうとし、ターリバーンが国際社会に認められない場合は内戦を開始する。

第二に、パキスタンはまた、デュラント・ラインを越えたパシュトゥーン人の団結をこころよく思わない。団結を妨害しないと、彼ら(パシュトゥーン人)はパキスタンを崩壊させるほど強力になるだろう。

パキスタンは代理政権の樹立に見事成功した:ターリバーン運動が急速に展開し、アシュラフ・ガニー政権を完全に打ち倒したことは、アフガニスタンに親しい政府を打ち立てるというパキスタンの長年の努力が輝かしく実ったことを表面上は示している。イスラマバードは、ターリバーン運動の開始以来25年以上にわたってこの究極の戦略を目標として追求してきており、その長期的な設計と実行力はテロ組織の称賛を集めている。

アフガニスタンとアフガン人の運命がパキスタンの統治下でどうなるかは世界中が注視しており、パキスタンの指導者たちも慎重だ。今のところは一歩さがり、カーブルに広く包括的な政府ができることが重要だなどと、口では言っている。とはいえ、彼らが仕組んだ最近のアフガニスタンでの進捗はとても劇的で、パキスタンの構想が信頼に足ると世に示した。そのため最近の進捗についてはそこから生じる利益を最初に享受してもいいという空気が出てきた。また楽観的に保証しすぎると思われたアフガニスタンとの密接な関係だが、それもしっかりと裏打ちされ信頼を勝ち取った。その結果、政府内にハッカーニの集団が新たに派遣され幅をきかせた。こうしてできあがったのはパキスタンの代理政府と考えられる。

カーブル政権が打ち倒されターリバーンの支配による新時代が成功裏に始まったことで、今後長期にわたってイスラマバードが深刻な課題に直面することは間違いない。これまでは、一方でターリバーン運動へ影響を与えつつ、もう一方で、米国とその同盟国によるアフガニスタンでの軍事行動に表面上は協力しなくてはならなかった。アフガニスタンに関わる主要国はこの二面性に気づいてはいたが、パキスタンに対して寛容な対応を続けた。パキスタンのアフガニスタン政策の本質と神髄を大いにほめちぎり、かげでは不平を言いながらも。ところが今後、アフガニスタン問題はパキスタンと外交上どうかかわるかという脈絡では重要度が減じていく。すると必然的にイスラマバードへの国際的な関心度は低くなる。演じる国々は地域のバランスを考えて力の配分を計算していたのだが、今ではどこかの国に強制されることもなくなる。そこでこぞってニューデリーに重点を移しかえる。

パキスタンの経済は不安定で、西側諸国および西側の影響を受けた金融機関がせっせと国外投資や融資を行い助成金を振る舞っているので生き延びている。それも永続しないので、やがてイスラマバードは経済と貿易のパートナー国に必然的に依存するようになる。ところがそんな国の数はますます少なくなる。さらに、アフガニスタン国民の敵意を無視してはいけない。

ターリバーン支配下のアフガニスタン:ターリバーン政権下のアフガニスタンが、過去20年間に国のインフラの近代化と修復を支えてきた財政援助および開発援助の恩恵を十分に受けられるとは思えない。新政府になって出てきたさまざまな事態は将来の暗い絵を想起させる。つまり国家経済の悪化、生活水準と福祉の低下、そしてパキスタンを含む近隣諸国へのアフガニスタン難民の流出などが予想される。これらはイスラマバードに大きな社会的および経済的影響を及ぼすだろう。また、現在は「イスラム首長国!?」へと支配体制が移行している最中というが、その行く末は予測不可能で援助もままならない。そして国を日常的に運営するために必要な代替財源が利用可能になるまで、パキスタンは他国とともに必要額の一部を提供せざるをえない。自国に財政問題が差し迫っているにもかかわらず。

パキスタンの希望と期待とは裏腹に、アフガニスタンでパシュトゥーン人支配のイスラム首長国を再建しても、イスラマバードとカーブルの関係に黄金のときが訪れることはないだろう。パキスタンがアフガン政策を設計する際の重要要素としてあげられるのは、パキスタンとアフガニスタンの慢性的な領土紛争、アフガニスタンとインドとの特別な関係、そして中央アジアにおけるエネルギー輸出など外国貿易の唯一のルートとしての地位を確立するというパキスタンの野望である。そのために、彼らはパシュトゥーン人からなるターリバーンの政府を正当と認めた。

つまりパキスタンはパシュトゥーン人による政権奪取を支援した。ところがその同じパシュトゥーン人の訴えで両国間に領土紛争が起きているという長年の逆説は未解決のままだ。パキスタンの建国以来、ターリバーンを含むどのアフガニスタン政府も、デュラント・ラインをアフガニスタンとパキスタン間の国際的な合意を経た公式の国境であると認める気など微塵も見せたことがない。アフガニスタンに住むパシュトゥーン人の数よりもパキスタンに住むパシュトゥーン人の数が増えていること、および国境をまたぐパシュトゥーン人同士の不可侵の民族的つながりを考えると、カーブルにパシュトゥーン政権が存在することは、パシュトゥーン人居住地域をパキスタンから独立させよという分離主義の世論を高める根拠となる可能性がある。インドとの関係に関して言うと、パキスタンは自らがもつ対ニューデリーの未来像にターリバーン政府が合意することを望んでいるが、実現する可能性はまずない。

継続的な国際的孤立の恐れ:ターリバーンの指導者たちは、外国と友好的な関係を確立し維持したいという願望をさまざまな機会に表明してきた。「インドはこの地域の亜大陸にとって非常に重要だ。私たちはインドとの文化的、経済的、貿易的関係を継続することを求める」とターリバーンの上級指導者シル・モハマド・アッバス・スタネクザイ(Shir Mohammad Abbas Stanekzai)は8月29日に述べた。「われわれは以前と変わらない。」この友情あふれるメッセージに先だち、インド政府は従前より使節を送りターリバーン高官と公然非公然の接触を重ねた。それは両国が相互に善意を持って交わることの保証となった。しかし同時に、パキスタンとターリバーンのインドに対する将来の政策が一枚岩だという推定には深刻な疑問を投げかけた。

ここで改めてパキスタン国内の安全保障に注意を払うと、ターリバーンがカーブルを支配すれば必然的に彼らと同じ思想的起源と目標を持つ分離主義者またはテロリストグループの動きが活発化するだろう。TTP (Tehreek-e-Taliban Pakistan/パキスタン・ターリバーン運動)は、この種の最も悪名高く危険なグループで、2007年の発足以来、特にペシャワールとクエッタで大規模なテロ攻撃を起こした。パキスタンの治安部隊はグループのテロ能力を排除することに大部分成功しているが、テロ活動が再開されたり、国境の両側での2つのターリバーンが組織的につながる可能性もあって、イスラマバードの深刻な懸念材料となっている。ターリバーンが支配するアフガニスタンとの関係が国内の治安への脅威に飛び火した状態だ。

カーブルのターリバーン政府にとって、これから数か月は基盤強化のための重大な時期が続く。アフガニスタンに最重要の諜報中枢を構築しようとしたパキスタンのこれまでの確固たる歩みが最後に実を結ぶか、はたまたターリバーンを操ったこと自体が過剰投資で結局は失敗するのか、パキスタンにとっても答えはまだ先の話だ。しかしまだ初期段階とは言え、ターリバーンを政権につけたことでパキスタンの目標はひとつ成功裏に達成された。

【つづく】

References:
(1)
Cool S, Directorate- The C.I.A. and America’s Secret Wars in Afghanistan and Pakistan, 2001-2016. 2019. 1st edn, Penguin Random House UK. P155.
(2)
Cool S, Directorate- The C.I.A. and America’s Secret Wars in Afghanistan and Pakistan, 2001-2016. 2019. 1st edn, Penguin Random House UK. P137.
(3)
https://www.unodc.org/unodc/en/press/releases/2010/June/unodc-reports-major-and-growing-drug-abuse-in-afghanistan.html
(4)
https://news.un.org/en/story/2010/06/342362-leading-drug-producer-afghanistan-witnessing-rise-addiction-un

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