Causes of the failure of the US occupation of Afghanistan in 20 years<3>

 

アフガニスタンの混沌とした現状はアメリカが作った体制の責任

American Imported Regimes Liable for Current Chaotic Situation in Afghanistan

 

ファテー・サミ (Fateh Sami)
2021年10月4日 (4 October 2021)
海外からの巨額の資金援助は、様々な生産部門を構築し国力を高め、雇用を創出するよい機会で、それをもとに大衆の利益のため国内全域でバランスの取れた開発を進めることは可能だった。にもかかわらず、ハーミド・カルザイ(Hamid Karzai)とアシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)の政権下では、階層の最上層にいる連中が利己的で、自己中心的で、偏狭で、民族中心的で、腐敗し、搾取的なため、せっかくの機会をすべての人びとの福祉に、特に貧困で脆弱な社会階層の人びとの生活水準を高めるために活かすことは許されなかった。

そのため、すべての個人が人種、言語、宗教に関係なく平等な権利と平等な機会を享受し、信頼と責任を感じる社会は遠のいた。

つまりわれわれが目撃してきたとおり、どうにかこうにか国の指導者にされた連中が、アフガニスタンを20年間占領していた国々それぞれの諜報機関と結託して、多国籍企業の指針に従って自分勝手な戦略的および地域的な目標の達成に邁進していたのだ。

指導者たちには、派手でばかげた偽選挙によって正当性らしきものが与えられた。ハーミド・カルザイとアシュラフ・ガニーの二人は、同族統治を支え、社会的、軍事的、安全保障、経済、教育、訓練のすべての分野で、専門家を排除し息のかかった素人大臣を任命して、広範な腐敗への道を整えた。

さらに、ターリバーンやISISというテロリスト集団と協力し、彼らを強化させる一方で、国軍がテロ集団を攻撃するのはあの手この手で妨害した。こうして政府をうまく計画的に転覆させ、パキスタンの代理であるターリバーンを権力の座につかせた。

今回の政権崩壊は、およそ30年間ターリバーンを支援してきたパキスタンの思惑どおりにおこり、その主な理由のひとつがアフガニスタン全域での汚職の蔓延だった。またそれによって米国はいまアフガニスタンでの敗北を味わっているが、実はそれだけでなく、最も悪質な人権侵害者(ターリバーン)と和平協定に署名しアフガン国民の自由、民主主義、人権を損なうことを許したときすでにアフガン国民に対して重大な罪を犯していたのだ。ターリバーン、ISIS、アル=カーイダなどのイスラム極端派をアフガニスタンに埋め込んだのはアメリカである。

神は知っている、そして歴史は示した、まるで羊の群れを屠殺するかのように米国が、5,000人のテロリストからなる少数派に、偉大な国家を公式に引き渡したのを。そして世界は悲劇のあまりの深さに衝撃を受けた。それは国際軍が平和協定を結ぶことすらせずアフガニスタンのカーブル空港から逃げるように撤退していったときである。彼らは座って黙って見ているだけだった。

 

全世界でのターリバーンへの抗議

ターリバーンがカーブルを占拠して以来、アフガン内外で行われた抗議のデモや集会はテロ集団であるターリバーンがアフガニスタンで非常に不人気であることを示している。ターリバーン集団のカーブル占領はISI(パキスタンの三軍統合情報局)の直接的な支援とアシュラフ・ガニーおよびハーミド・カルザイの同族陰謀によって可能となった。これに加えてアメリカの特別使節であるザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)は、20年間、平和の名のもとのあらゆる人びとの目をくらませてきた。彼の使命は、アフガニスタンでは国を破壊しその民を存亡の危機に陥れ、米国では政治家に不平不満を引き起こし、納税者からざくざくと金をくすね、これまで米国が培ってきた政治的手腕に反して不名誉で恥ずべき大失策を引き起こすことだった。

ロンドンの英国議会前で大規模なデモが行われた。それはアフガニスタンがパキスタンとその代理であるターリバーンによって占領されるという混乱した近況に抗議してのものだった。高等教育を受け母親でもある3人のアフガン女性がハンガーストライキで決起し世界に向けて声を上げた。英国議会前に集まり祖国の自由と独立を求めたのである。集まった目的は世界各地にいる同胞たちの注目を集め一緒に行動するよう呼びかけることだった。

家に残した子供の面倒を夫たちにまかせ、3人の女性はハンストを開始した。そして次のように語っていた。「私たちがここ英国議会前に来たのは、民族、性別、宗教、言語、居住地に関係なく、アフガニスタンのすべての人びとの権利を尊重するためです。

BBCの記者が来て、短いビデオを撮りましたが、今後それがどう使われるのか知りません。ただこの集会とハンストについてBBCによる報道はこれまで一切ありません。」西側メディアは沈黙を守っている。そこで3人は訴えた。「平和と正義と公平を支持するなら私たちの声に耳を傾けてください」と。要望を受け入れ会う約束をした国会議員もいたが、それがいつになるかは不明だ。

彼女たちは他のすべての人びとに、連帯し、団結し、満場一致の声を上げるようと求めている。ハンストのためとても疲れて声に力がなく言葉が途切れるのをわびながら、彼女たちはこう続けた。「私たちのような若い世代が恐怖とテロによって沈黙させられることを許すべきではありません。

国の平和と静穏を外国に頼らざるをえない私たちはなんと不幸でしょう。私たちはこの状況にとてもストレスを感じています。私たちは今や奴隷のなかの奴隷です。パキスタンはイギリス人の奴隷でした。ターリバーンは銃口を向けて女性の声を黙らせたいのです。さもなければ、奴隷のように鞭うち、なぐり、たたき、ぶちます。

しかしこのハンストによってわかったことがあります。それは食べるものに事欠き、空腹のまま眠り、窓のない部屋に閉じ込められ、教育を受けられず、自然の権利を奪われている女性や子供や人々の苦しみです。母親たちは路上で物乞いをし、子供を育てる時間もありません。ハンストを始めて7日ですが、私たちは仕組まれた戦争のために貧困と飢餓をしいられている祖国の女性たちにとても強く共感できました。私たちが祖国で過ごした月日はとても短いのですが、ターリバーンによる非人道的な仕打ちと祖国の天然資源や鉱物を略奪しようとしているパキスタンの野望に満ちた政策のために、おびえながらおそれながら生きている同胞に哀れみを感じます。」

彼女たちは人びとに贅沢をやめ、アフガニスタンの貧しい人びとに喜捨しようと訴えた。貧者をたすけるために貢献できることは何でもするよう要求した。また、アフガニスタンの女性たちの自由と教育のためにも声を上げた。檻の中で動物のように監禁された母親が、どうやって子供たちを教えられようか、と。

「あなたは今日、パキスタンの女の子が国連で私たちを代表して話しているのを知っているでしょう。(訳注:9月10日、マララの国連ビデオ演説)なぜ私たちは私たち自身を代表することが許されないのですか。残酷で野蛮な過激派のターリバーンは、私たちをベールでくるもうと望んでいます。私たちに遊牧民の文化を押し付けることはできません。」

ハンストの終結にあたり彼女たちはアフガニスタンのすべての人びとが連帯して新政府をつくりあげることを要求した。そこでは皆が平等を実感し平等な権利を持てるのだと。「私たちはアフガニスタンに住むすべての人びとのために奮闘しています。カーブル、カンダハール、ヘラート、バダフシャンなどどこに暮らそうが、私たちはひとつになるべきです。」

 

外国の罠にはまったアフガニスタン

米軍撤退後にカーブルがターリバーンの手に落ちたことによって領域のパワーバランスが一時的に変化する可能性はこれまでになく高い。アフガニスタンは地政学的に中東の交差点に位置し、中央アジアの国々、中国、イラン、そしてかつてはインドとも国境を接することから外国勢力にとってアフガニスタンを支配することは特に重要だった。これが歴史上すべての攻撃的な勢力がアフガニスタンに注目した理由だ。同様にこれからのターリバーンの時代にもそれぞれの目的を持ったさまざまな勢力がこの国に食い込もうとするはずだ。

米国はアフガニスタンから撤退したが、直接的または間接的に中国へ圧力をかけて新疆ウイグル自治区を不安定化させるという文脈で見れば、アフガニスタンへの影響力の再拡大を試みることもあるだろう。

しかし中国はサウジアラビアとの間に大規模な金融取引を行い友好関係を保っている。そのため、いま時点ではおそらく中国の国境が危険にさらされる心配はない。一方、ロシアは天然ガスの供給をめぐりサウジアラビアとライバル関係にある。そのためロシアは安閑とはしていられず、対サウジでは不安ぶくみだ。というのは、ロシアはノルド・ストリーム2(訳注:NORD Stream-2/ロシアからドイツに大量の天然ガスを送るパイプラインで9月10日に完成が発表された)によってエネルギー市場におけるサウジアラビアの潜在的な競争相手となったからだ。

サウジも米国と同じくターリバーンに影響を与えようと奮闘しているが、その目的は違う。米国は中国を封じ込めるために防波堤を作ろうとしている。もちろんパキスタンの情報機関が中国の影響を受けているため、これはかなり難しい。一方サウジアラビアの第一の目標はロシアだ。そして第二の目標はイランだ。もしターリバーンが合意に応じなければ、サウジはターリバーンを作ったときのかつての仲間であるパキスタンと英国の助けを借りてISISを強化させターリバーンにとってかわらせる。

他方、パキスタンと中国。この2か国は米国・サウジ・ロシアなどとは違う側面からアフガニスタンに介入し、かつそれぞれが異なる目標を目指している。パキスタンはサウジアラビアとの関係が深くソ連侵攻時にサウジが他国とともにムジャヒディーンを、ソ連撤退後はターリバーンを援助したが、それを仲立ちしたのはパキスタンの情報機関だ。しかし現在では状況が変わり、パキスタンはサウジではなく中国の方を向いている。そこでターリバーンの進展に対し中国とパキスタンがまず求める2つの目標が今日もっとも注目されるようになった。

その第一は、米国を基地もろとも近隣から追い出し、アフガニスタンをパキスタンの治安機関に支配させることだ。アフガニスタンからの米国の撤退とターリバーンの進展により、中国は自国近隣のアメリカ人をともかく追い払った。もちろん、ターリバーンが中国と合意し新疆ウイグル自治区でそのイデオロギーと原理主義を広める気をなくせば、中国は確実にその目標を達成する。

中国の第二の目標は、ターリバーンと関係をたもつことで近年強まってきたインドのアフガニスタンへの影響を弱めることだ。インドは中国とパキスタンの両国と領域的なライバル関係にある。アフガニスタンでのターリバーンの拡大は、インドがアフガニスタンに対して持つ権益を危うくしその影響を弱めるだろう。ニューデリーの最終目標はチャバハール港(訳注:イランの経済特区でパキスタン国境よりのオマーン湾に面する)を南北輸送回廊(訳注:INSTIC/ムンバイとモスクワを結ぶ輸送網)に組み入れることだ。南北輸送回廊はもともとインド、ロシア、イランの3か国が2000年に提案し、のちに中央アジアを含む10か国も加わったプロジェクトである。インドが5億ドルを投資するチャバハール港は中国への明白で強力な経済的挑戦だ。中国はインドの隣国パキスタンでグワーダル港に莫大な資金をつぎ込み、一帯一路の拠点としている。インドが計画通りにチャバハール港への陸路を開けば、中国がグワーダル港へと進めるシルクロード計画に水を差すことになる。

以上の2つが初期の目標だが、中国にはさらに次の目標がある。それは、どうにかしてターリバーンをコントロールし、最大活用することだ。ターリバーンのイデオロギーが問題となりうることは中国も認識している。パキスタンで多くの人びとが支持するなど領域内に広がる可能性があるため、中国は慎重に対処するだろう。ターリバーンのイデオロギーをうまく利用して、この領域やひいては世界中の均衡が保てるなら安上がりだ。加えて、中国がターリバーンを制御し、やがて新疆ウイグル自治区のイスラム教徒を何らかの形で制御すれば、中央アジアに過激主義が広がるリスクを減らすこととなり、それはロシアの国益とも合致する。しかし、ターリバーンのさまざまな階層にダーイッシュ(訳注:Daesh/中東シリアを中心に活動するISIS系テロ組織)が広く存在しており、ISI(パキスタンの三軍統合情報局)の代理人であるため、彼らが以前の行動を変えることは期待できない。

ターリバーンの制御によって中国が狙うもう一つの目標は、ISISなどの過激派グループが上海協力機構(SCO)に属する領域に現れないよう、その火が小さいうちに消してしまうことだ。しかし、ターリバーンは同じイデオロギーを持つがゆえに、ISISなどの過激派およびテロリスト集団に立ち向かう力を持っていない。ISISをはじめとする不正規ゲリラ集団の存在も中国軍にとっては危険だろう。

中国がシルクロードに関してターリバーンと完全な合意に達し、ターリバーンが経済的利益と引き換えに交通の安全を保証した場合、シルクロードに短縮ルートが新設されることは注目に値する。しかし、ターリバーンは多くの内部対立を抱えており、多くの過激派グループの影響を受けている事実を考えると、ターリバーン政権の内部抗争は日々激化するだろう。そのため中国が目標を簡単に達成できるとは思えない。

次に、インド。パキスタンと領土紛争中のカシミール問題がある。もしカシミールがインド領と認められれば、アフガニスタンとつながり、さらにイランや中東とも地続きとなる。そのため、カシミールを紛争の温床にしておくことは効果が大きい。したがって、パキスタンがターリバーンを通じて影響力を強化する前に、インドは行動する必要がある。最善の選択肢はパキスタンを攻撃することであるが、それは安全保障上と経済上の多大な問題を引き起こすだろう。

さらにロシア。アフガニスタンでのこのところの事態の進展は、ロシア人に二つの相反する未来を提示すると専門家はみている。第一は、ターリバーンがこれまでと同様、中央アジアにイデオロギーを拡散し、テロと不安をおしひろめ、その結果ロシアに多くの問題を引き起こして、ロシアとターリバーンの間に一種の対立を生み出すという未来。それに対し、もうひとつはターリバーンが中国によって制御されて、アフガニスタンという枠組みの中で自らを治めることを強いられる未来だ。ロシア人は中国と良好な関係にあるためにこれは好都合で、イデオロギーとテロリズムの中央アジアへの拡散を防ぐことができる。しかし、ターリバーンはさまざまな過激派集団から構成されているため、これはほとんどあり得ない想定だ。

最後に、イラン。イランとパキスタンの間の安全保障上の競争が将来激化しないという条件をつけてもなお現在のアフガニスタンをめぐるゲームにおいて、イランは予測できない影響を受けることになる。いずれにせよ、ターリバーンをもっとも強く制御しているのは、他でもないパキスタンの安全保障機関なのだ。ターリバーンが20年前と同じ行動をイランとその国民に対して繰り返すなら、イランとターリバーンは必ず対立する。そしてターリバーンが変わっていないどころか、20年前よりも手荒になっていることを証拠が物語っている。

ターリバーンが政権についたことでイランを脅かすもうひとつの問題がある。ターリバーンが行動を改め独立への道を歩むなら衝突は回避されるのだが、ターリバーンがアフガニスタンをパキスタンの植民地にしてしまう場合、ターリバーンとの衝突が確実なことだ。そうなれば、将来直接イランとパキスタンの間で領域内における競合がエスカレートする可能性もある。そして両国間で直接間接の紛争が発生すれば、それがアフガニスタン内にも飛び火するだろう。

 

パキスタンがいまも行っている秘密の介入はいまや世界的に明らかになり、否定できない証拠が次のように暴露されている

パキスタンは、1994年のターリバーン誕生以来、この領域におけるもっとも重要なプレーヤーたる国々の一員で、ターリバーンに最大の影響を与え、アフガニスタンでのアメリカの同盟者として要の位置を占めてきた。

*ターリバーンを正式に承認させようと各国でロビー活動を続けている。
* ISI長官がカーブルに行きターリバーン政権の暫定内閣の人選をした。
*パキスタン空軍によるパンジシールの「国家抵抗軍(NRF)」爆撃。
*パキスタンのイムラン・カーン(Imran Khan)首相は、パキスタンの行為はアフガニスタン情勢への干渉だと指摘したタジキスタンなど各国を逆に非難し、世界の目をそらした。
*アフガニスタンの外貨準備高に手をつけようと、管理する米国に対して放出するようロビー活動を続けている。
*テロリストはパキスタンで一時かくまわれたのち、アフガニスタンや他の国に送りだされている。

アフガニスタンとその周辺領域における米国の戦略にのってパキスタンは、政治的、思想的、行政的、組織的にターリバーンを築き上げるプロジェクトを主導してきた。

公表された報告によると、パキスタンの諜報機関はターリバーンを創設し、支援する上で主要な役割を果たしており、イスラマバードは1996年にターリバーンを承認した最初の政府のひとつだ。(訳注:当時ターリバーン政権を正式に承認したのはパキスタン、サウジアラビア、UAEの3か国)

一部のアフガニスタンの専門家は、NATOと米軍がアフガニスタンから撤退した直後のターリバーン戦闘員の急速な進撃と州都を含む各都市のドミノ倒しのような攻略はパキスタン人司令官の助けによってなされたと見ている。

目撃者の話とパンジシール抵抗戦線からの報告によると、パキスタンの諜報機関の長官がカーブルを訪れた数日後に、約500人のパキスタン人の奇襲隊がパンジシール周辺の山岳部に駐屯し、パンジシールに対するターリバーンの攻撃を指揮した。

パンジシールにいるアフガニスタン・イスラム同胞団評議会の議長であるマウルヴィ・ハビブラー・フッサム(Maulvi Habibullah Hussam)は、抵抗勢力と一般国民に対してパキスタンが空爆したと発表した。

サマンガーン州選出の元国会議員であるジア・アリアンジャド(Zia Arianjad)もフェイスブックに、パキスタンのドローンが昨夜パンジシール州をスマート爆弾で爆撃したと投稿した。

 

アフガニスタンの「国民抵抗勢力」を支援する必要がある

現在の状況は、以前の思想的政治的立場に固執している場合ではない。こぞって愛国勢力を動員し、国民抵抗勢力を支援することで民族ファシズムと戦い、われわれのアイデンティティ、文化的価値、そしてペルシア語を守り抜くことが重要だ。

現在、ターリバーンは人々を元の居住地から強制的に追い出すためにあらゆる手を使っている。かつての悪名高い独裁者アブドゥル・ラーマーン・カーン(Abdul Rahman Khan)がやったような方法だ。ダイクンディ州の人びとを強制的に移住させたやり口はその一例だ。(訳注:ターリバーンの命令で2400人のハザラ人が数日中に家や農地を明け渡すよう命じられ、収穫を待つ農作物も奪われた。)少数民族のハザラ人は現在、暴君アブドゥル・ラーマンの時代のように絶滅の危機に瀕している。意を決して敢然と立ち向かう心構えが必要だ。怠慢は取り返しがつかない。

 

アフガニスタンにおけるパキスタンの経済目標

パキスタンとインドは、南アジアだけでなく中央アジアでも常に経済競争をしてきた。中央アジアのエネルギー資源を手に入れるため貿易港を使いたい西側の注目を集めようと両国は努力し、それがこの競争をあおる要因のひとつとなった。

したがって、西側諸国が中央アジアのエネルギー市場に近づき、石油およびガスを自国へと輸送する手段を提供することは、パキスタンの政策の中で最も重要な経済項目のひとつで、その与える影響も大きい。中央アジアとカスピ海には豊富なエネルギー資源があり、この領域ではそれをめぐる各国の競争がはげしかったことから、1990年代後半になるとパキスタンと米国がターリバーンを支援した。当時のムジャヒディーン政府ではそういう経済重視の政策などおぼつかず両国にとって大きな障害だったからだ。そこでターリバーンを支援してアフガニスタンで全権を掌握、それによって中央アジアのエネルギー市場に接近して経済的利益を得る。それが両国の計画だった。ただ、パキスタン人のある将軍によると、1967年以来ずっと変わらないパキスタンの主な目標はアフガニスタンそのものの地下資源の利用だという。

中央アジアにある産油国は、イランかアフガニスタンのどちらかを通るパイプラインで石油や天然ガスを運ぶことを、かねてから常に大きな課題だと見てきた。逆に言えばイランとアフガニスタンは、どの地域の産油国からでも石油や天然ガスのパイプラインが国内を通過すれば、確実に政治的および経済的な利益を得ることになる。このことをパキスタンが経済的にどうとらえるかは、2つの角度から分析できる。

ひとつはパイプラインの建設がもたらす経済的利益という観点から。もうひとつはイランとの経済競争および中央アジア諸国における影響という観点から。イランが中央アジアで経済活動を始めたのに刺激されて、パキスタンはかつてのパイプライン計画の復活を狙った。(訳注:1990年代後半にアメリカの石油会社ユノカルを中心としてアフガニスタンを通るパイプラインの建設計画が立ち上がったがターリバーン政権時代だったため頓挫した)つまり中央アジア→アフガニスタン→パキスタンというシルクロードを完成させ、中央アジアからイランを経てオマーン湾さらにインド洋という連絡路を迂回する計画だ。

ところがそこへカーブルで親パキスタン政府の誕生である。これは中央アジアと周辺領域で経済的利益を探るパキスタンの思惑通りだ。やがてターリバーンに対するパキスタンの外交的立場は、一般的な支持を通り越して、その政権を固持するための赤裸々な介入へとステップアップするに違いない。

 

パキスタンの政治目標

アフガニスタンにおける政治目標をパキスタンが掲げる際に、いくつかの事象が他とくらべ特に大きな役割をもつ。アフガニスタンとの国境紛争およびパシュトゥーン問題、インドとのライバル関係、西側とくに米国との連携、イランの影響への対抗などがその一例だ。最初に上げたアフガニスタンとパキスタンの国境紛争から考察を始めよう。それが常に両国の外交関係において歴史上の重大要素だったのだから。

アブドゥル・ラフマーン・ハーン(Abdul Rahman Khan)がアフガニスタンを統治していたとき(訳注:1893年)、英国の使節が有名なデュランドラインを取り決めてアフガニスタンの領土をかすめ取り後のパキスタンに与えたことは、アフガン人の歴史的記憶から消されることがなく、とくに国粋主義的気質を有する政治的支配層は決して忘れず、パキスタンとの外交関係において常に論争の的となってきた。デュランドラインは、単なるアフガニスタンの東部地域とパキスタンの西部地域を隔てる境界線ではなく、両国の間に不安定な状況を生み出す原因であり続けている。

そのためパキスタンが阻止したいのは、アフガニスタンに有能な政府が生まれ失われた領土の返還を要求し両国間の紛争が蒸し返されることだ。このことが、今後アフガニスタンの政治的支配を進めるうえでイスラマバードの最重要課題となっている。

アフガニスタンに安定した政府ができれば、国際舞台に出てこの国境の合法性に関する論争を引き起こす恐れがある。そのような危惧から、パキスタン当局は、ターリバーンのイデオロギーによってアフガン人が国境や民族紛争を忘れ、イスラマバードに追随することを信じて期待していた。ところが、パキスタンの競争相手であるインドへの支持がアフガニスタン内で高まっていることから、国境紛争に対して今後アフガン人が敏感になっていくのではないかと懸念している。

 

パキスタンによるアフガニスタンの代理占領は大きな間違い

現状を鑑みるに最近のISI長官のカーブル訪問は特筆すべき出来事だったが、ほんの一部のメディアしか見出しとしなかった。やけに大手を振って白昼堂々やって来た長官はプライドに満ちていたと同時にパキスタンの役割をあぶりだした。

一部のパキスタン当局者と報道機関は、この訪問は両国間の貿易を拡大し、国境問題に取り組むのが目的だったと述べた。だがISI長官が貿易や国境に関わっているなどという御託を誰かが信じようとは言った本人も思っていなかっただろう。

アフガニスタンでも他の領域国でも世界中でも世論はいまや、パキスタンと聞けば、ターリバーンをますます強く連想する。ターリバーン政権がまだ成立しておらず、国の外交政策を監督する閣僚が任命されていない時期にパキスタンの諜報機関の長官がカーブルを訪問したことで、アフガニスタンにおけるパキスタンの役割に対する疑念はさらに増した。パンジシールに対するドローン攻撃と空爆への関与、アフガン人将軍と国民抵抗戦線のスポークスマンの殺害、そうした攻撃におけるパキスタンの諜報員の役割については各地の情報源が伝えており、ターリバーン政府の顔ぶれを決めるのにもうらで画策したと報告されている。

アフガニスタンのさまざまな都市やテヘランを含む世界中のいくつかの都市で大衆によるデモが起こりターリバーンへの抗議に混じって反パキスタンの叫びも聞かれた。アフガニスタンの内外でパキスタンへの示威行動が起きている。イランでもパキスタンによるアフガニスタンへの干渉に反対する世論は広まり、ソーシャルメディアやウェブリンクで表明されている。

ターリバーンの結成、5年間のアフガン統治、米軍とNATO軍に対する反乱時代、そしてアフガニスタンで政府の形成を模索する現在まで、すべての段階でパキスタンは冷酷なテロリスト集団であるターリバーンと緊密に協力してきた。 9.11攻撃後にターリバーン政府は米国からアフガニスタンに潜伏するアルカイダの指導者を引き渡せとか追放せよと要請されたが、拒否した。パキスタンがターリバーンとの関係を断ち切ったのは、その後のわずかな期間だけだ。もちろん、米軍の攻撃で政権が崩壊するやターリバーン指導者は全員パキスタンに避難した。

1994年10月のターリバーン設立においてパキスタンが重要な役割を果たしたということは、パキスタン政府内の公式文書と確たる学術研究が一致して認めるところだ。元パキスタン軍人で内務大臣を務めたナスルラー・バーバル(Nasrullah Babar)は、自ら指揮してターリバーンを生み出したと自慢し、 ターリバーンは「わが子」だと述べている。バーバルがターリバーンを生み出そうとしたのは、主に地政学的な理由からだった。彼は、インドに対するパキスタンの縦深戦略(strategic depth)として、またパキスタンが中央アジアにアクセスする手段として、アフガニスタンの利用を欲していた。

またターリバーンとの接し方に関しては1994年の設立以来すべての分野で一切の制限も課せられなかったことが確認されている。つまりパキスタンはターリバーンの兵士を採用して訓練し、作戦を立案して指揮し、兵士には給与を作戦には経費を支払い、武器、弾薬、燃料を送り届けた。つまりターリバーンへ兵站支援、戦闘支援、そして最終的には外交支援までも与えた。パキスタンはターリバーンと一緒に戦うためにパキスタン人をアフガニスタンへ送ることにも積極的だった。

アハメド・ラシッド(訳注:『タリバン−イスラム原理主義者の戦士たち』2000年、講談社刊日本語版の原著者)によれば、1994年から1999年の間に約8万ないし10万のパキスタン人がパキスタン軍の訓練を受けたのち、ターリバーンと一緒に戦った。ピーター・トムソンらの信頼できる学者たちによって、パキスタン人の将校と兵士がターリバーンと一緒に戦っていることが確認されている。 実際、アフガニスタンでの戦争にも関わらず関与したパキスタン人の数が、アフガン人ターリバーンの数を時には超えることもあった。 その上1998年の米国務省の報告によると、もともとのターリバーン内にも20~40パーセントはパキスタン国民が混ざっていると確認されている。

不思議なことに、パキスタンはターリバーンがより過激になるよう常に後押しし、ターリバーンの最も過激な一派であるハッカーニネットワークを支援してきた。 2011年9月22日、当時統合参謀本部議長だったマイケル・マレン将軍は、ハッカーニネットワークに対するISIの主導的役割について上院に次のように報告した。「クエッタターリバーン評議会(訳注:ターリバーンの意志決定機関)とハッカーニネットワークがパキスタンを根城にぬくぬくと活動していることは紛れもない真実だ。かかる過激派組織はパキスタン政府の代理で、アフガン兵や市民さらに米軍をも攻撃している。例えばハッカーニネットワークはパキスタン政府の支援と保護を長らく受けきて、今では多くの点でISIの戦略的一翼を担うまでになっている」と。

他国への内政干渉は国際法と明らかに矛盾しているが、実際にはそのような介入が行われることがある。 しかし、ある国が堂々と他国を完全に乗っ取り、3500万人から4000万人もの人口を力ずくで無実の人質とし、その中でたった数万からなる集団を作って道具化し、自国の地政学的目的に利用するなどという行為は国際関係の歴史の中で前例がないのではなかろうか。

アフガニスタンに対するパキスタンの政策は、アフガニスタンの近隣諸国の正当な利益をも無視している。すべての民族グループの権利とすべてのアフガン人の公民権を踏みにじっている。ここ数十年で豊かな経験をしたアフガン人とその国の若い人びとは、そのような屈辱を受け入れず間違いなく抵抗することだろう。

つづく …

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です