Afghanistan playground for Foreign Intelligence Operatives and Terror Groups under Taliban

 

ファテー・サミ (Fateh Sami)
2022年6月13日 (13 June 2022)

最近の出来事から判断すると、世界はアフガニスタンをインテリジェンス(諜報)の視点でしかみていないことが分かる。そうみると、政府間の国際的関係を調整する外交の役割が、アフガニスタンでは空っぽだ。そのため社会における政治と権力の役割が逆転させられてしまった。これだと本来、市民にサービスを提供するべきはずの権力と政治が諜報のための道具に成り下がってしまう。
アフガニスタンの場合、この主張には3つの特徴がある。

世界諜報網の中心地になったアフガニスタンの3つの特徴

まず第一に主だった競技者が情報回廊を通ってアフガニスタンに入ってくる外国人だという点。ニセ共和国から宗教首長国への移行は、すべて国外の諜報機関を通じて管理され主導された。その役割は恥ずべきもので、アフガニスタンの政治や外交を無に帰させた。そして首長国を標榜するテロ集団が都市の城塞でも田舎のポプラ林のなかでも、突然芽吹いたのであった。

国内の競技者らはすべて、世界各国と領域諸国の諜報機関の喉から出てきた痰唾にすぎない。カタール、パキスタン、アメリカ、ロシア、イギリス、サウジアラビア、イラン、中国、インドが、諜報傭兵を通じてアフガニスタンの権力に入り込んだ。どんなメッセージも決断も、諜報機関が思いのまま問答無用に押しつけた。その指導者たちはカーブルに赴き、内政状況を支配した。

第二にアフガニスタンにおける貧困、飢餓、戦争、社会的政治的危機が及ぼした影響。それらのせいで、犠牲とより広範囲の奉仕を強いられる無数の兵士が諜報機関に提供された危機の規模が広がれば広がるほど、こうした諜報兵が多くなる。この種の兵士は、貧しい若者ばかりで、自分の住居を壊し、自分の同胞を殺している。巨大な兵士集団は、宗教の名のもとに、天国、美しい乙女、イデオロギー、ニセ指導者、そして迷う心に描かれた祖国を渇望して、殺人、自殺、暴虐を厭わなくなるのである。アフガニスタンは今や、諜報機関の戦略的目標を実現するための競技場となっている。

第三にアフガニスタンでは、宗教が諜報の道具になっている点である。ターリバーンやその指導者、宗教的な政党や組織のバックグラウンドは、すべて領域諸国や世界各国の諜報機関と結託して次々と整備されて来た。これらのグループの指導者は、領域諸国の諜報部によって任命され、逆らう者は首を切られた。

アフガニスタン内外の政治オブザーバーによれば、アフガニスタンはこの40年間、特に2001年以降、世界の諜報網の活動の中心地になったという。世界の諜報網は、アフガニスタン人政治家を傭兵としてリクルートし、活動してきた。密集した諜報網の存在によって権力、政治、統治権が大国の玩具に変えられてしまった。その結果、いわゆる政治的、経済的、戦略的な指導者や管理者の大多数は、領域諸国や世界各国の諜報網の傭兵になってしまった。それが第三の特徴である。

 

世界諜報戦の悲惨な犠牲者アフガニスタン

かかる文化によって、誰もが他国のために働き、自分のためにお金を稼ぐようになった。その結果、諜報員の銀行残高は数百万ドルも跳ね上がったが、大多数の人びとはさらに貧しくなった。何千人ものアフガン人が、外国人の奴隷と化したのである。当時、この領域と世界における隷属的、傭兵的諜報活動は経営手段として文化的に認知された。その結果、よりよく他国の利益に奉仕する者が、より多くの資源と特権を得ることができるようになった。

うっかりして、知らず知らずのうちに領域諸国や世界各国の諜報機関に仕えていた連中もいる。大小のプロジェクトの実行者という名目で、彼らは諜報の輪に浸食されていった。一方、諜報機関はアフガニスタンで自分たちの利益を守るために傭兵を戦争に追い立て、数え切れないほどの犠牲者を出した。アフガニスタンは、おそらく世界で最も悲惨な諜報戦の犠牲者である。この点については、これまで何の調査も行われていない。なぜなら、各諜報機関にはそうした分析や研究を阻止する共通の目標と狙いがあるからだ。

ターリバーンの政治的・経済的な基盤が今後も弱く不安定であるため、アフガニスタンの状況は、非常に暗い。持続は困難で、抵抗が国中に広がり、やがて必ず崩壊する。国民各層を包摂する政府なしに下記のような状況が続くなら、政権を運営することは不可能と思われる。

<1> 武装集団によってアフガニスタンの北部と東部が強固に隔離され分裂していること。
<2> ターリバーン首長国の異なる派閥間の衝突が始まっていること。
<3> ターリバーン内部で相違が広がり、ハッカーニ派とムッラーの弟(訳注:ターリバーンの創始者ムッラー・オマールの義弟アブドル・オマーリ)ら派閥間でクーデターの可能性があること。
<4> ターリバーンの反対勢力に国民が加わり国中に様々な戦線が生まれていること。
<5> 一部集団による民族部族戦争と民族部族的主張の激化
<6> ISISの影響を受けてアフガニスタンの宗教界に宗教戦争の炎が燃え上がっていること。
<7> アフガニスタンにおけるアルカイダとISISの活動の拡大と、同国におけるテロ集団の存在を口実とした世界各国・領域諸国のアフガニスタン問題への介入があること。

アフガン情勢のオブザーバーによれば、ターリバーン・テロ政権は政治的に不安定である。ターリバーンには、イスラム首長国という単一の指導者と単一の政府があるが、実際には意見が鋭く対立している。政権内に異なるグループがあり、各グループは外国の異なる政府や異なる軍事グループと接触している。

それぞれのグループの客人たちも問題だ。例えば、アル=カーイダはハッカーニ・ネットワークの客人だ。アフガニスタンは、ターリバーン政権に潜入したアル=カーイダやISISの人的鉱脈になっている。これらの要素や成分は、いつ発火してもおかしくない火種のようなものだ。ターリバーンは国内的にも国際的にも政治的正統性を有していない。

経済面でも、ターリバーンは全く無計画で、経済の改善も開発プロジェクトの遂行もできない。 彼らの経済に対する考え方は単なる浪費で、女性を家に閉じ込めるのと同じように経済をとらえている。 彼らは国際社会から経済的な制裁を受けており、ターリバーン政府には何の援助も与えられない。したがって、すべての経済部門、農業、畜産業、手工業でさえも麻痺している。国の口座が1年間封鎖されれば国民の生活、貿易、開発全体が損なわれることになる。

国民は物理的にも心理的にも安全を感じられず、ただ恐怖と威圧の中で暮らしている。外国軍との銃声はかなり静まったが、治安の脅威は依然として残っている。旧政府治安担当者への無差別殺戮、ISILの自爆テロ、不満分子が起こす散発的な戦闘が、再び恐怖の雰囲気を醸成している。

ターリバーンは都市部住民の心の中に社会的居場所がない。貧困と失業で国民は不幸になり、女性、メディア活動家、市民社会活動家、人権擁護者がターリバーンに反対している。社会情勢は支持者ごとに分裂している。

南部住民は、ハッカーニ・ネットワークとのつながりが強い。したがって、北部のターリバーンとカンダハールやヘルマンド地域のターリバーン支持者は、一枚岩でなく同じものでもない。ターリバーンの人気は日を追うごとに低下している。ターリバーンの現状からすると、まともな政府になるには長い道のりが必要だ。彼らは、外国の諜報網の陰謀により政府を力づくで奪い、銃口と暴力で政権を維持している。

このような理由から、国民に投票権を与えて正統性を根拠づけるどころか、女性、メディア、市民社会に対して厳しい命令を出し、人権委員会を解散させたのである。ターリバーンが正当性を獲得するには、武力を捨て、独裁を止め、単一民族、単一階級の政府から、より包摂的で広範な政府に変身し、大衆化を図る必要がある。さもないと、他のイスラム諸国の規範からみてさえ、彼らが統治の基準や指標に適合することは決してない。

ところが政府は頑として変わらないのだから、ターリバーンを待ち受けるのは暗黒である。東部と北部のターリバーンたるハッカーニ・ネットワークと、カンダハール、ヘルマンド、ウロズガン、ザブールのターリバーンの見解の相違は、ターリバーン指導部内の衝突を引き起こし、様々なターリバーングループとアフガニスタン内の外国人戦闘員たちが巣くう権力の島を複数出現させた。その事態はターリバーンにはどうすることもできない。

 

二方面から邪魔立てしアフガニスタンを危機へと誘うパキスタン

パキスタンはアフガニスタンの強力な支援者ではない。しかし、パキスタン軍情報部はターリバーン・イスラム首長国の主要な支援者である。また同時に、パキスタンはヒズブ・ウト・タハリール (注1)の構成国で、欧米、アラブ、中央アジアの国々との関係を保持、支援している。このパキスタンの二つの顔がアフガニスタンの発展を妨害している

(注1) Hizb ut-Tahrirカリフ制統一国家樹立を目指す汎イスラーム主義的国際政治組織。「イデオロギーとしてのイスラーム」を標榜し、イスラーム国家の再設立を目的とする。新国家は、信者の共同体を統一し、連邦制ではなく一元制国家となり、ムスリムが人口の多数を占める国々をその内に含む超国家を形成する。(Wikipedia)

第一の妨害は、パキスタンの諜報機関が他のグループよりもハッカーニ・ネットワークをより支援していること。そのためクーデターやターリバーン同士の衝突が起こる可能性が高い。パキスタンの諜報機関は利己主義と権力追及を煽って、ターリバーン同士の反乱やクーデターを扇動している。ちなみに、Daesh(ISIS、ISIL)やアル=カーイダなど様々なテログループが、ターリバーンを含む国内の様々な集団から戦闘員をリクルートしている。

第二に、アメリカもロシア、イラン、中国の利益に対抗するために、アフガニスタン内の戦闘員を使いたい。同様に、イランとロシアは経験豊富なアフガニスタンの戦闘員を大勢ただ同然で召し上げる。一方、テロ集団はアフガニスタンに一時避難して力を回復し、この領域の政情不安定な国々における代理戦争へと追加派遣され、西側諸国を敵に回す。

そんな状況の中、アフガニスタン内のアルカイダの存在は言わずもがな、ヒズブ・ウト・タハリールもパキスタンの影響で存在感を増している。それは、イスラムのカリフとクード(訳注:エルサレムを指すアラビア語)の征服をスローガンに掲げ、欧米の耳には警告信号と聞こえる。ISILの戦争遂行集団としての活動が各地に拡大すると、その危険性は群を抜いて大きなものとなる。こうしてパキスタンは、イデオロギー的にもアフガニスタンの発展を妨害している

われわれはどうすべきか? 端的に言えば、アフガニスタンはこのままでは統一されず、分断されてしまう。どの民族も自分の支配下にある地域を主権的な領土として宣言する。やがて戦争が起こり、まずアフガン国民を痛打する。民族と宗教がからむ戦争だ。すぐに各国がどちら側かに加勢するが、誰も自分で戦う気などなく、様々な領域から代わりに戦ってくれる兵士をリクルートしようと血眼になる。そうして集めた代理部隊は、領域各地から、民族で選別され、宗教がからみ、政治観も異なる。しかし、この領域内の国々も、戦略的興味で世界各地から参戦した国々も、兵士として使うのはアフガニスタン国民だ。ただただ自国の政治的、宗教的利益のために。この宗教戦争を始めたのも、元はと言えば彼らなのに。

こんな危機を逃れる方法アフガニスタンは危機が寄せ集まった国である。とにかくそれを自覚すること。われわれがまず、あらゆる危機、度重なる暴動、山積みの問題の存在を知る。それを読者にしっかりと伝えれば、みな一旦は憂鬱になるが、そこから這い上がって、瞬時の解決を、苦境からの脱出を求める声が必ず生まれてくる。それが唯一の解決策だ

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