Russia is All Eye on Development of Situation and Concentration of Terror Groups in North Afghanistan.
ファテー・サミ (Fateh Sami)
2022年7月18日 (18 July 2022)
歴史の概観: 全歴史とくに過去275年間(訳注:1747年にパシュトゥーン人のアフマド・シャーがドゥッラーニ朝を興した)、アフガニスタンは侵略、介入、内乱、内戦、権力闘争、独裁にさらされてきた。この傾向は現在に至るまで続いている。その間、住民や国民には、自分たちの運命を決定する役割がなかった。現在の危機の原因のひとつは、こうした古くから続く傭兵による独裁政権の紆余曲折の中に見いだしうる。アフガニスタンで成立した政権は、そのほとんどが当時領域内にある列強国間の政治的合意、協力、取引の産物だった。やがてそこに世界的な大国も加わり、アフガニスタンは今もって大戦略ゲームの支配下に置かれたままである。このような危機が断続的に発生し、継続する主な理由は、その地理的重要性にある。
そこまで遡らなくても、直近の50年間を分析しさえすれば、この国の状況は正確かつ現実的に評価できる。この国の政治状況を説明するために比較的わかりやすい視点を提供しよう。つまり、アフガニスタンの現在の政治、経済、社会、行政、文化の状況をすべて言い表すには、近隣諸国の活動、さらには大国間の競争を考慮する必要があるという点だ。このゲームでは、パキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールと結託したアメリカとイギリスが一方におり、ロシア、中国、イラン、インドがもう一方にいて、にらみ合っている。この戦略的なゲームについて、わかりやすい絵図を描くことはできない。冷戦時代、旧ソ連軍がアフガニスタンに駐留していた頃から、このゲームは始まっていた。
ソ連軍がアフガニスタンから撤退して12年後の2001年、9・11米国同時多発テロ事件、つまりニューヨークの世界貿易センタービルへ2機、バージニア州アーリントンのペンタゴンへ1機の3機の航空機が突入し、残り1機はハイジャック犯と乗客乗員との格闘中に墜落した事件の後、アメリカとその同盟国は、テロとの戦いの名目でアフガニスタンに侵攻した。すると、パキスタンはテロリストにとって安全な場所になった。アメリカは対テロという名の下、自作自演の戦争を仕掛けたのだが、その主な目的はアフガニスタンや中央アジアの原料や地下資源を入手し、中国やロシアの経済発展を遅らせることだった。
侵略と占領の正当化、テロ撲滅かはたまた助長か:テロリズムという言葉は中国・ロシア・イランへの攻撃・介入・挑発を正当化する手段に使われ、結果、アフガン国民は40年間、この覇権争いの犠牲になってきた。したがって、現在の混乱状況の原因を説明するためには、さまざまな構成要素を照らしあわせる必要がある。アフガン人の政治オブザーバーやアナリストたちによると、過去半世紀におけるアフガニスタンの状況と出来事を左右するのは世界の強大国による大規模な諜報ゲームのみで、前者と後者は表裏一体の関係にあるそうだ。こうした分析は彼らの鋭い眼力と確証に基づいている。
アメリカとイギリスの諜報機関は、アフマド・マスード(Ahmad Masoud)が率いる国民抵抗戦線の戦闘と前進を阻止し、逆にターリバーン集団を擁護しようとしている。アメリカ外務省は、ワシントンがターリバーンとの間で再び歴史的な政治的取引を締結する準備を進めていると述べている。
忘れてはならないのは、7月末にワシントンで「インターアフガン大協議会」というボンIIやカタールIIのような大きな会議が開催されようとしていることで、そこでアメリカと参加国の間で新しい合意がなされ、いわゆる包摂内閣がそれを承認する手はずになっている。トルコに駐留する「抵抗評議会戦線」と呼ばれる前政権の高官たちが恥知らずにも参加すると言われている。反ターリバーン抵抗戦線の指導者であるアフマド・マスードがこの会議に参加するかどうかは不明である。
米ニュースウェブサイト「フォーリンデスク」(The Foreign Desk/訳注:ジャーナリスト、リサ・ダフタリが創設し編集長を務める)※1 によると、バグラン州とパンジシール州における国民抵抗戦線の勝利は、アメリカとそのパートナーにとって容認できるものではないと言う。アメリカ国務省はこの抵抗勢力を非難し、「フォーリンデスク」の質問にこう答えている。
「我々は平和的手段による(アフガニスタンの)安定した政治秩序を望んでおり、ターリバーンに対抗する組織的暴力行為を支持しないし、他の勢力にこれをさせない。」※2
アフガン人は、そんな戯れ言を断固許さず、アメリカ人もアフガニスタンにおけるワシントンの戦略を理解する必要がある。世界の人々は非難している、「君たちはアフガニスタンで20年間何をしていたのか、20万人以上を殺害した挙げ句に」と。アメリカ国務省のこの発言は、アフガニスタンがこの血みどろのゲームの中でいかに混沌とした状況に陥ったかを示している。テログループが擁護されるのは、アメリカとパキスタンによって権力を握らされたからだと、オブザーバーは確認している。実際、アメリカのアフガニスタンに対する秘密政策がテロ集団であるターリバーンを支持する方向に180度変わったことで、モスクワは不愉快な状況に追い込まれたと言われている。
※1出典は7月8日付け「The Foreign Desk」:
https://foreigndesknews.com/top-story/afghan-resistance-forces-declare-victory-against-taliban-in-baghlan-province-u-s-state-dept-condemns-afghans-fighting-back/
※2実際の国務省報道官の発言は
“We want to see the emergence of stable and sustainable political dispensation via peaceful means. We do not support organized violent opposition to the Taliban, and we would discourage other powers from doing so as well,” the State Department spokesperson said to The Foreign Desk.
その他、参照:7月12日付け「FDD長い戦争ジャーナル」:
https://www.longwarjournal.org/archives/2022/07/u-s-state-department-does-not-support-organized-violent-opposition-to-the-taliban.php
ロシアの独立系新聞の記事で、研究者にして政治学専門家のアンドレイ・ニコラエヴィッチ・セレンコは「7月8日の米国務省の発言は、ターリバーンを承認し公然と支援する手形ではないが、米国の政策の価値を世界に紹介した」と書いている。そして、アフマド・マスードの敵が誰であるかを示し、その価値はマスードや国民抵抗戦線よりも高いとした。しかし、このセレンコのスタンスは、抵抗戦線にも好意的である。同紙によれば、抵抗戦線がパンジシール州とダール・バグラン州で大きな成功を収めたときから、アハマド・マスードに対する脅威が始まったという。そして、このことは、ワシントンにとって快いことではなかった。
この専門家は、ロシアの独立系新聞記事内で、米国務省のメモからいくつかの結論を導き出している。
まず、2021年8月のアフガニスタンにおけるイスラム共和国体制の崩壊とこの国のターリバーンへの引き渡しを主導した者たちが、ISIの協力を得てアメリカとターリバーン指導者の間で舞台裏の取引を行っていたこと。つぎにワシントンは戦略的作戦としてターリバーンの味方となることを選び、今日に至っては武装した反対派からターリバーンを守ろうとしている。
第二に、抵抗戦線を指導するアフマド・マスードがロンドンやワシントンとつながる「痕跡」を持つと非難していた人々は間違っていた。すべてが完全に逆であることがわかったのだ。アメリカとイギリスの代表者は、数か月間に渡ってカーブルやドーハでターリバーン政権関係者の歓心を買おうとしており、「怒れるムッラー」に対して様々な人道的、経済的、政治的支援活動を約束した。逆に国民抵抗戦線の指導者たちは、アフガニスタンという新しい「偉大なゲーム」において、ワシントンの審判から最初のイエローカードを受け取ったのだ。
アフガニスタンというチェス盤上でアメリカが公然と動き出したことは、モスクワでアフガン政治を動かしていた者たちにとっては、もちろん不愉快な出来事である。これは間違いない。これまでモスクワの解説者たちは、ロシアの聴衆に対し、ターリバーンはアメリカと西洋に対する不倶戴天の敵であると熱心に説明していた。しかし、今やターリバーンテロ集団がパキスタンを通じてアメリカ人と協力していることは明らかだ。クレムリンは、ウクライナ以降の新冷戦下で、アメリカの計画を無効化する方策を立てつつ、このゲームに関与する必要がある。この目的を実現させるために、ロシアのアフガニスタン戦略の設計者は、ターリバーン指導者と戦闘員を感謝と政治的賛辞で甘やかすだけでなく、モスクワの中心地にあるアフガニスタン大使館をターリバーンに引き渡したのである。
同時に、解説者や政府機関は、ロシアの世論とロシア連邦の指導者の目に、アフマド・マスードが率いる反ターリバーン抵抗運動が信用できず弱体なものと見せようとした。モスクワがアフガニスタン政策を見直さなければならないのは明らかである。なぜなら、現在のプロセスを維持することは、ロシアの地政学的な主要なライバルに対して、バカ丸出しの役割を果たすことを意味するからである。「実はアフガニスタンではすべてが見た目その通りではない」という陰謀論を信じ続けることで、ロシアは中央アジアと南アジアにおいて、結果としての利益を見込んでゲームに参加できる。(このロシア発の記事については末尾の注(1)を参照。)
過去と同様、このゲームが再びアフガニスタンの運命を左右することになる。パキスタンの代理軍に対する国民抵抗戦線の闘いの継続は、間違いなくこの国の運命を決定する上で不可欠な役割を担う。米国が以前の腐敗したいわゆる選挙で選ばれた政府を支援したようにターリバーンを支援するかどうかは重要ではない。国民抵抗戦線は、すべての市民が平等な権利、自由、安全、正義を有する広範な政府が確立されるまで、闘争を続けるだろう。その政府は、テロリスト、強盗、前政権の腐敗職員やテロ集団からなる傀儡政権であってはならない。
アメリカの傀儡政権こそが現在のアフガン危機の原因だ:「国民統合」政府!と声高に叫ばれたが、その役割にビジョンと合理性が論理的に備わっていたのか。そしてカルザイ政権下、アフガニスタンには何十億ドルもの金が流れ込んだ。西側からの無制限の救済は、アフガン問題をめぐってパキスタンをへこませ、ロシアを挑発するためNATO会議で仕組まれた作戦だったのか、ぜひ教えて欲しい。テロを打ち負かして平穏で安全なアフガニスタンを創造すること、パキスタンの手を縛ってアフガニスタンに平和と安全を実現すること、これらの目的に対して西側諸国は誠実だっただろうか? 既存の能力と将来の援助をつかったアフガンビジネスとは、軍事力、防衛技術、治安部隊、テロ用武器などを強化することだったのだろうか?
われわれは彼らの「惜しみない援助」をけっして忘れない! アメリカを含む西側は、NATO軍として広範囲に攻撃したあとで、第三国への対外援助史上、前代未聞の資金投入をアフガニスタンに行ってきたように見える。米国とNATO同盟諸国はターリバーン政権を崩壊させて、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)とその仲間たちへ権限を委譲し、「再建と良い統治」という魅力的なスローガンでアフガニスタンを援助したが、もれなく「汚職と麻薬乱用」もついてきた。大量の援助は、現金としてハミド・カルザイおよび著名な指導者たちの懐に公然かつ密かに配られ、米英の長期目標を達成するある計画に使われた。ガニーとアブドラ(Ghani and Abdullah)という国民統合政府の両指導者は、それぞれ財政経済省と外務省を担当していた。つまり、ちょっと振り返ると、マフィアどもの宮殿出身の外国人勢力が意図的に作り出されたことがわかる。
腐敗したアフガニスタンの体制内部では、パキスタン情報部が積極的かつ歴然と、大統領府、治安機関、国防省、国会などアフガニスタンのあらゆる政府部門に存在していたことは明かだ。アフガニスタンのアナリストや元政府関係者によると、国は最高級の治安機関の必要性を認めず、国内の治安状況には無関心だった。この計画の主な実施者はパキスタンとアフガン宮殿だ。
アフガン全土とくに北部の安定化のため国連が要求した50憶ドルの援助(訳注:1月11日に発表された人道支援計画による※3)は、ターリバーンの前線における隊列を強化するだけで、国民に支持された指導者たちを孤立化させ、国家組織の正常な機能を阻む。国連は将来の選挙に向けて躍起となるあまり、傭兵信奉者をのさばらせることに集中している。
※3 参考:https://www.unhcr.org/jp/44133-ws-220112.html
20年におよぶアフガニスタンの占領と、西側諸国のいわゆる手厚い援助の主な目的が明らかになった。与えられた資金は、不安を醸成し、アフガニスタン北部に様々なテロ集団がのさばる地域を拡大した。そして今、われわれはその結果を目の当たりにしている。つまり、テロ集団が北部に大終結し、近隣の旧ソビエト連邦の中央アジア諸国に送り出されているのだ。※4 カルザイとアシュラフ・ガニー(Ashraf Ghani)の政権下でも、アフガニスタン北部のテロリスト集団を強化するためにかなりの資金が費やされていた。そうした経験から、ロシアは、ウクライナ流のテロで稼ぐ集団による悪質な攻撃に対応する準備は十分に整っているようである。相手が一握りの暴徒なら、それに対応するだけの防衛力を備えている。
※4 参考サイト:
https://www.fpri.org/article/2022/05/northern-afghanistan-and-the-new-threat-to-central-asia/
https://sgp.fas.org/crs/row/IF10604.pdf
このようなイライラする寝返りゲームの主目的は、アフガニスタンの地下資源の支配を強固にすることである。世論を甘く見ると悪魔のゲームに巻き込まれることを忘れてはならない。アフガニスタンへのこれまでの寛大な援助の結果、300万人の麻薬中毒者、泥棒、傭兵、悪魔、簒奪者、道化にして偽善者たるスパイたちが生まれ、その挙げ句に彼らが構成したのが、世界で最も腐敗した政府システムだった。今こそ、内外の知識人、若者、敬虔な人々を含むすべての愛国者が、現代の知恵と経験で団結して、アフガニスタンを救うべき時なのだ。国を破壊した、背信行為を行った、人道に反する罪を犯したと非難されている人たちだけが、世間で裏切り者として嫌われているのではない。
結論: 最近のアメリカ国務省の国民抵抗戦線に敵対する立場は、最終的には国民抵抗戦線に有利に働くことになる。アフガニスタンの危機の主な原因は米国とその同盟国だと、アフガン国民が信じているからだ。今、世界はアフガン問題で2つに分かれている。第一グループは、イギリス、アメリカ、パキスタン、そしてアラブ諸国たる「UAE、サウジアラビア、カタール」で構成されている。第二グループは、インド、ロシア、中国、イランで構成されている。今回の米露の両首脳がそれぞれ仲間の国々を訪問しているのは、ウクライナでアメリカが敗北した後の予防策を調整するためである。それは決して偶然の一致ではない。
アフガニスタンのケースは、国の内外どちらから見ても、チャレンジングで興味深い。しかし、アメリカは、アフガニスタンという地理的条件を使って、ロシアと中国に頭痛の種を押し付けようという別の理論でゲームを設計している。それを意識してか、ウクライナでの紛争において、プーチン大統領は「出口」の兆候を見せていない。 プーチンは、このような微妙な時期の、中央アジア諸国やイランへの訪問は極めて重要と考えている。アメリカの主目的を考慮することが大切だ。そうして初めて両国指導者の活動や訪問に効果を持たせ、アフガニスタンの運命を決め、混沌とした状況を改善へと向かわせることができる。
注(1):アンドレイ・ニコラエヴィッチ・セレンコの記事はアッタ・サファウィ(Atta Safawi)がロシア語からペルシャ語(ダリ語)に翻訳し、自身のFacebookで公開したものである。
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