2022年8月3日 Hasht-E Subh(アフガニスタンの独立系日刊メディア)社説
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ザワヒリ殺害後、ニュースや談話のヘッドラインとして、アフガニスタンにおけるアメリカの役割に関する議論が再び加熱している。

今回の事件は、互いに対立するふたつの説を際立たせた。ひとつは楽観的な説で、ターリバーンに対する米国の忍耐が終わりターリバーン打倒へと国家戦略が変わった、とするものである。もう一方は今回の攻撃はターリバーンとの連携で行われたとする説である。つまりこれによって、この集団と米国の協力過程が始まり、お互いに信頼を築きターリバーン政府の承認への地盤固めが進むと見る説だ。この説に立てば、ターリバーンが米国を利する役割を効果的に果たす限り、アフガニスタンはテロリスト集団の支配下でより長く苦しむことになる。

陰謀論者は、前政権に幻滅した米国が、イラン、中央アジア、中国に圧力をかけるために、ターリバーンに政権を渡したと考えている。彼らによれば、ターリバーンがアイマン・ザワヒリ殺害に協力した理由は、この見方で説明がつく。アメリカがこの領域でテロ集団を配置した足跡と、ターリバーンとアメリカとの提携は、陰謀によって隠され、この集団の助けを借りて、領域内にアメリカのライバルを落とす大きな穴を仕掛けることになるのだ。

この攻撃を楽観的に見る人びとは、ザワヒリの殺害をアメリカが政策を根本的に原点回帰させた兆しだと分析する。彼らの信じる所によれば、アメリカが20年持ち続けたターリバーンとパキスタンへの敵意を忘れることはありえない。戦争のさらなる継続はアメリカの占領費を増加させる見通しとなって、それが彼の国の軍の撤退につながったが、未だ復讐への思いもターリバーン打倒への執念も捨て去ってはいない。ザワヒリの殺害は、ターリバーンの指導者たちに対して、アメリカはテロ組織との関係や接触をすべて把握しており、ザワヒリと同じようにいつでもどこでも誰でも排除できる、という二重のメッセージを発しているという。

ふたつの見解を裏付ける客観的な証拠がそれぞれ存在するが、この物語を単純な白黒で分析しても物事の完全理解には役立たないように思われる。諸大国とくに米国は、政治分野では様々な選択肢があることを承知しており、ほとんどのケースで、柔軟性を旨とし、いくつかのシナリオを予測・分析して、それぞれに備えている。アフガニスタンで米国と同盟した民主的で安定した政府が存在することは間違いなく最良のシナリオのひとつだが、外部変数がそのような選択肢を許さない場合、最悪のシナリオ、つまり、より高い目標を達成するためにテロ集団の政府との同盟もあり得る。それは道義的に正しくないかもしれないが、今日の世界政治に共通するプラグマティズムの流れに沿っており、経済的利益があれば、そのプロジェクトを実行しても良いということだ。

戦術と戦略とに分けて最近の動きを検討すると、この事件は次のようにみなせる。つまり、ターリバーンは国家管理において全面的に協力するとアメリカに約束したのに、不信感にかられて国際テロ集団の活動を許すという戦術を取った。その結果、アメリカや他の国は圧力をかけられている。それに対するアメリカの戦略は、ターリバーンを献身的な同盟相手にすることだ。しかし、この集団が中国、ロシア、イランと友好関係を続けていることには不満を持っている。ザワヒリの殺害は、この集団に自らの脆弱性を自覚させ、アメリカのライバルとの蜜月を終わらせる圧力とすべく決行された可能性が高い。アメリカは別のシナリオも考えているだろう。つまり、この事件によってもターリバーンがアメリカのライバルとの関係を考え直さない場合、ターリバーンに反対するグループが再び登場するだろう。彼らの有害極まりない不統一を克服することが条件だが。なにしろ敗北しターリバーンを勝利させる原因となったのが、彼らの不統一と分裂のせいであった。

[原文(英語)はこちら]

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2 thoughts on “<strong><主張>アメリカの戦略とザワヒリの死</strong>”
  1. 日本の論調に見られない『戦略と戦術、米国への二つの見方、』が社説として読める国と分かりました。日本はのほほんとしてますね。

    1. まったくその通りですね。武力で脅されても忖度しないジャーナリズムが育ったのですね。アメリカの20年の占領は全体としては成功しませんでしたが、着実に進歩と民主主義の種は植え付けられました。これからの推移が楽しみです。
      野口

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