The U.S. Holds Limited Influence in the Taliban’s Afghanistan
By Max Boot, CFR Expert
August 16, 2022 3:56 pm (EST)
マックス・ブート(CFR専門家)
2022年8月16日 午後3時56分(米東部時間)
(WAJ:CFRはCouncil on Foreign Relationsの略。アメリカの外交政策に影響をもつ、1921 年に設立されたアメリカの著名なシンクタンク。詳細は → https://www.cfr.org/about)
米国の撤退後1年、アフガン国民の半分は食糧難に直面しているにもかかわらず、ターリバーン体制は残酷で無関心な行動をとっている。
米国の最長の戦争が終わって1年、アフガン戦争は勝つ見込みがあったのか、あるいは戦う価値があったのか、依然としてかなりの意見の相違がある。米国議会は超党派の委員会を設置し、戦争の実態を調査し、将来への教訓を導き出そうとしている。しかし、この戦争をどう捉えようとも、2021年8月末のアフガニスタンからの撤退が無秩序なものであったこと、ターリバーン体制への対処法について米国の選択肢が限られていることに異議を唱える人はほとんどいないだろう。
1年前、カーブル空港に数千人のアフガン人が逃げようと押し寄せ、空港を守っていた米軍兵士13人が自爆テロによって殺害された。米国は12万人を避難させたが、米軍に協力した数万人のアフガン人は閉じ込められたままである。米国の撤退はドナルド・トランプ政権が交渉したとはいえ、政治的に大きな代償を払ったのはジョー・バイデン大統領で、2021年8月に支持率が低迷し始め、さまざまな理由でいまなお回復からはほど遠い。7月31日に米国の無人爆撃機がカーブルでアル=カーイダ指導者のアイマン・アル=ザワヒリを殺害したことで、政権にとって状況は少し良くなったようだ。ザワヒリの死は、米国が「オーバー・ザ・ホライズン」(訳注:地上人員を極力使わず空から挑む)対テロ作戦を成功させることができるというバイデン大統領の主張を裏付けるものである。しかし、ザワヒリがシラージュッディン・ハッカーニ内相代行の最側近の家に住んでいたと伝えられる事実は、米国特使との交渉でターリバーンが表明した約束にもかかわらず、彼らにアル=カーイダとの関係を断つ意思がないことを示すものである。
ニューヨークタイムズ紙にリークされた米情報機関の分析はバイデン政権の立場を支持し、たとえザワヒリの安全な隠れ家がカーブルにあったとしても、「アル=カーイダは米国撤退後、アフガニスタンでその存在を再構築していない」と結論づけ、古くからのアル=カーイダのメンバーが数人いるだけと評価している。しかし、この発見には、CFRのブルース・ホフマンなど、外部の研究者が異論を唱えている。
米国撤退を歴史的にどう判定するかは、今後数年の間に何が起こるかに大きく左右される。アフガニスタンが西側諸国へのテロ攻撃の起点になるのか。もしそうなれば、バイデンは厳しい評価を免れない。歴史家は、数千人の米軍顧問のアフガニスタン残留を主張した軍司令官たちの意見を覆すべきではなかったと結論づける可能性が高い。しかし、アフガニスタン発でこれ以上テロが起こらなければ、バイデンの危険な撤退は正当化されるかもしれない。どちらに傾くにせよしばらく、バイデン政権は1年前に権力を握ったターリバーン体制と格闘せねばならない。
ザワヒリの死の前に、バイデン政権は米国で凍結されている70億ドルのアフガン資産の一部を解放すべくターリバーンと交渉していた。しかし、ターリバーンがアル=カーイダの指導者を匿っていることが判明し、アフガニスタンの女性や少女を組織的に抑圧し続けている今、バイデン政権が資金を解放する見込みはないだろう。これらの要因を理由に、米国は共通の敵である「イスラーム国」と戦うためのターリバーンへの援助も渋っている。現在の環境では、バイデン政権がターリバーンに協力すると素直に考えることはできない。
もしターリバーンが本当にアフガン国民のことを考えるなら、欧米の援助が受けやすいような穏健な路線を追求するはずである。ターリバーン支配の内部には、例えば小学校6年生以降も女子の就学を認めるなど、現実主義を説く者もいるが、最高指導者マウラウィ・ハイバトゥラー・アクンドザダを中心とする強硬派によって、その声は掻き消されてしまっている。ターリバーンの残虐さと無関心による犠牲者は、自分たちの国民である。
国連によると、アフガン国民の半分にあたる少なくとも2,000万人が食糧援助を必要としている。多くの人が飢餓に瀕している。米国は、撤退以来、7億7400万ドル以上の援助を行い、単独で最大の人道支援国となっているが、大惨事を食い止めるには十分でない。他の国、特にターリバーン体制と外交関係を結びつつある中国、パキスタン、ロシアは、もっと支援を行うべきである。
米国はアフガニスタンでの情報収集を続け、価値の高いターゲットに関する実用的な情報があれば、さらにドローンによる攻撃を行う可能性がある。しかし、アフガニスタンで無人機による攻撃が再び日常化するかどうかは疑問であり、ザワヒリを殺害した攻撃も昨年8月以来初のものだった。また、米国がターリバーンをより大規模な軍事行動で脅しアル=カーイダ戦闘員を追い出させるとは思えない。なぜなら、戦争再開へは米国内の支持が全く見込めないからである。米国が援助を活用してターリバーンを誘惑し、その政策を穏健化させようとする試みさえ、惨憺たる結果に終わっている。
アフガニスタンにおける米国の利益、そしてアフガニスタン国民の利益を守るためとなると、ワシントンにはほとんど良い選択肢が残されていない。アフガニスタンの将来に影響を与える米国の能力は、多くの米政府関係者がお認めになるよりも常に限られており、今やほとんど存在しないのである。ターリバーンが支配し、アフガニスタン国民は彼らのなすがままになっている。
(CC)
『ウエッブ・アフガン』はCFRが主張するCC(クリエイティブ コモンズ)要求を順守しています。
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