Editorial

By Hasht-E Subh Last updated Sep 20, 2022

ターリバーン当局は、ハッジ・バシールとして知られるバシール・アフマッド・ヌールザイの解放を、米国の好意の表れであり、ターリバーンと米国の関係における「新しい章」であると述べている。ハッジ・バシールは、メディアや政界ではアフガニスタンの麻薬マフィアのゴッドファーザーとして知られている。

アフガニスタンの麻薬王は、麻薬の生産・加工・売買網の管理を通じて巨額の富を得、ターリバーンの経費の重要な部分を賄ってきたと言われている。同時に、ハッジ・バシールは諜報機関(訳注:CIA)とつながりがあるとされ、2002年から2005年の逮捕までの間は、アメリカ人と協力し、密接に接触していたという報告もある。しかし、17年以上も麻薬市場や政治から遠ざかっていたハッジ・バシールが、ターリバーンの輪の中でどんな役割を果たすことができるのだろうか。

ハッジ・バシールは、カーブルでの解放の祝賀会で、ターリバーンに対する世界とアメリカの協力の重要性について語り、自分の解放はそのための一歩だと訴えた。この1年、ターリバーンは、かつてのおなじみの戦術で麻薬市場をより熱くすることに成功もした。つまり麻薬栽培の禁止を発表することで、この財の価格を何倍にも高めたのだ。こうして彼らは、この数十億ドル規模の市場の管理を独占しコントロールしようとしている。

ハッジ・バシールは、ターリバーンが深刻なリソース不足に直面しているなか、彼のネットワークを指揮して、かつての役割に返り咲く可能性が高い。ドーハ交渉の間、そしてその後もターリバーン指導者が何度となく強く要求したにもかかわらず、彼の釈放はここまで遅れた。おそらくその裏には多くの格闘があったのだろう。結果としてターリバーンはひとりのアメリカ人を囚われの身から解放しただけだが、ターリバーンの外相アミールハーン・モッタキーの言葉からは、この交換がより大きな合意の一部分であると読み取れる。ターリバーンは、領域ゲームにおける協力を約束したのではないだろうか? 特に中央アジアで事が起きる可能性は高く、「国際テロリスト」と呼ぶ勢力に対するアメリカの監視には、ターリバーンの手助けが必要だから。

ドーハ協定がその付属文書を隠して締結された日が始まりとなって、やがてアフガニスタンの行政はターリバーンに委ねられ、法外な額のドルが毎週カーブルに送られるようになり、アル=カーイダの指導者アイマン・アル=ザワヒリが暗殺され、ハッカーニは無傷のままで、そしていま麻薬売買のトップが解放されてしまった。そこに見えてくるのはアメリカとターリバーン間の相互協力への道筋である。とは言え、アメリカや世界の世論はターリバーンへ赤裸々に協力して、政権として認めるレベルにまで至っていないことも事実である。領域や世界には様々な役者がひしめき、ターリバーンの跡目争いもまだ終わってはいない。

ターリバーンとアメリカにとって、これらの諍いの結果がどうであれ、世界は同情を乞う場所ではないというメッセージを我が国民に伝えている。テロから救い、国が麻薬生産と密売の中心地になるのを防ぎ、学校の門戸を開き、政府を作るのは国民自身の責任であり、国際社会やかつてアフガニスタンの民主化を促し国家建設を支援すると言っていた国々の責任ではないのだ。

私たちの国だけが、飢えた人々、忘れられた人々、人身売買や戦争、原理主義の犠牲者たちが暮らす地ではない。国が貧しくなり、自国の問題を管理し、国権を守る能力を失うと、その無防備な土壌に倉庫よろしく害虫が住みつき、やがて血生臭い政治と経済の競技場として利用されるようになる。多くの国、たとえ国境に守られ、長い過去から学んだ民主主義の伝統がある国でも例外ではない。

テロ、暴虐、アヘン、密輸、飢餓の輪が昔より緊密になり、国を解放するためのアフガニスタン国民の責任は前よりもさらに重くなっているのである。

 

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