Remote Diplomacy but Close Contact for Recognition of Taliban Terror Administration Doomed to Failure
遠隔外交の陰で接触—ターリバーン・テロ政権の認知は破綻の運命にある

 

ファテー・サミ (Fateh Sami)
2022年9月28日 (28 September 2022)

(WAJ)ターリバーンのアメリカ人人質とグアンタナモ基地に収監されていた麻薬王との人質交換の意味するところ解明の第2弾。

マーク・フレリックス(Mark Frerichs)とバシール・ヌールザイ(Bashir Noorzai)との交換に関するたわごとは、パキスタンと共謀してターリバーンを政権に就かせた米国のバランスを欠き現実を無視する姿勢を示している。現在、米国はアフガニスタンを遠くから操らんと、囚人交換や女性問題に焦点を当て、多次元的「遠隔外交」を展開している。

米国の関わりはアフガンゲームを始めたころからずっと、遠隔外交だったわけではない。20年におよぶアフガニスタンへの直接関与は「密着外交」にほかならない。パキスタンの指示の下、米国の代理人であるターリバーンが現地の状況を監視しているのだ。ドーハでの2年間のいわゆる和平交渉の後、どのような事態となったかは明らかだ。米政権の示唆と同意なしに、パキスタンが単独でこのような破壊的役割を敢えてアフガニスタンで果たすことができただろうか?

 

ヌールザイ釈放の狙い

ヌールザイはアフガニスタン国軍の兵士とアメリカ海兵隊の両方から追われ、捕らえられたが、アメリカによって釣りあげられたあと、スポーツフィッシングの魚のようにリリースされた。ヌールザイはいざという時のために軍によって鳥獣保護区で飼われていたのだ(訳注:キューバ領内にある米軍基地内のテロリスト収容所グアンタナモ刑務所に収監されていた)。彼は、ウクライナ危機との関連で、中央アジアにおけるターリバーンの地位を高めるために、アメリカ軍によって釈放されたのである。

アフガニスタンで戦争と不安定を促し、流血で味づけさえする根本原因は何か? その答えは、紛れもなくアフガニスタンにおける米国行政のダブルスタンダード政策である。テロ集団ターリバーンを呼び戻した責任が誰にあるかは議論の余地がある。だが、とにかく彼らは舞台に現れ不必要に長期化する戦争を戦い、拡張させた。アフガニスタン戦争は、アル=カーイダというテロリストに制裁を加え、併せてターリバーンとパキスタンのような、その支持者および避難所の提供者を裁くためのものと主張された。 かつて、イラクの国民を「解放」する唯一の手段は戦争であった。そのためアメリカの新保守主義者が掲げた「自由と民主主義」を広めるという空虚なスローガンはただの口実だったと証明された。それと全く同じである。屁を放って笑うとは、何たるジョークだ。

パキスタンがターリバーンに避難所と訓練基地を提供していることはよく知られている。ターリバーンに対処する際の米国行政のアンバランスな政策の根本的な原因を探るための鮮明な実例がある。それは一時避難の場所、アヘン栽培と麻薬取引が生み出す資金、そしてドーハでの「和平交渉」の名の下での2年間の積極的な関与の機会。これらがターリバーンに与えられたことである。

 

ターリバーンをどう操ろうとしているのか

ターリバーンを権力の座に就かせた国々は、現在、非合法なテロ政権を承認するための土台を何とかして固めようとしている。無法なテロ集団ターリバーンにも使い道がある。アメリカとその同盟国の歩兵として、中央アジアで暴れさせ、紛争を創出し、後にはイランに向かわせるのだ。日経アジアに最近「ターリバーンが唯一の選択肢ではない:遠方のアメリカがアフガニスタンに物申す」と題する記事(訳注:2022年9月4日付)が掲載された。以下ではこの記事(下線部)を批判的に解読する。

(訳注:<該当記事>
https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Afghanistan-turmoil/Taliban-not-only-game-in-town-U.S.-engages-Afghanistan-from-afar)

ドナルド・ルー米国務次官補はターリバーンによるフレリックスの釈放を「正しい方向への大きな一歩 」と呼んだ。

最近の米国の行動としては、アフガニスタンで活動する人道支援団体に7億7千万ドルを拠出したし、USAIDを通じた3千万ドルの開発支援の発表もした。また、アフガン基金を立ち上げ、ターリバーンの復活後に米国が凍結しスイスと共同管理しているアフガン中央銀行の資金のうち35億ドルを目的に応じて活用するとも発表している。

数字や流れはその通りであろう。しかし人道支援の名目での金銭的貢献は、国民の手元には届かない。ただターリバーンのテロ組織の生存を引き延ばすだけなのである。

ターリバーンが全国で女子の高校進学を禁止してちょうど1年になる今週、アントニー・ブリンケン米国務長官はAWER(アフガン女性経済回復同盟)の発足式典に登壇した際、ターリバーンの女性抑圧を批判し、イスラム主義者の政策がもたらす経済的不利益を指摘した。

このような偽善的な言い回しが、アフガニスタンの全人口、特に女性や少女にとって何らかの利益をもたらすのだろうか?

(訳注:<参考サイト>
https://www.state.gov/secretary-of-state-blinken-launches-alliance-for-afghan-womens-economic-resilience/

こうした取り組みの先駆者、米国のアフガン女性・少女・人権担当特使のリナ・アミリ(Rina Amiri)によると、AWERは「有力な企業や慈善団体をひとつ傘の下に集め、米国政府と民間機関の協力を促進する」機能を持つ。その設立目的は、アフガニスタン女性の起業、労働力参加、教育を、アフガニスタン国内だけでなく、亡命者のためにも促進することである。

 

新たなアフガンロビイスト

ところが、リナ・アミリはターリバーンのロビイストであり、諜報機関とつながっていると、ほとんどのアフガニスタンの政治アナリストは言っている(訳注:リナ・アミリは1969年アフガニスタン生まれで現在はアメリカ人)。アフガニスタンの国民は彼女の人脈をよく知っており、彼女を信頼できる女性だとは思っていない。

ハイテク企業のメタもサポートするこの同盟には、世界最大規模の総合コンサルティング会社デロイトがポッド・ネットワーク(訳注:1976年に設立された教育開発機関で現在1500以上の大学・短大などがその会員)の会員となり後援している。発表時に手渡された国務省の資料には、「アフガニスタンの女性の経済的安全保障のために、持続可能で市場主導型のソリューションを生み出す道を作り、アフガン女性と少女への米国の深い関わりを明確にするもの」とある。

(訳注:<参考記事>
https://www.khaama.com/us-launches-awer-to-empower-afghan-women/

君たちがアフガン女性と深い関わりを持つだと?  君たちの手足たるターリバーンが、アフガン女性たちを4つの壁で囲われた狭い部屋の中に閉じ込めることを、関わりだというのなら分かる。いや、ちょっと待て。女性は家の中でさえ安全だと感じていないのだ。ターリバーンの野蛮な民兵は家に入り、タンスやスーツケースや家の隅々まで徹底的に調べ、見るものすべてを散らし尽くし、家宅捜索の間に身体的・性的暴行を加え、男性やその家族を強制的に連れ去り、拘留先を明かさない。目撃者によると、1222人の男性がターリバーンの諜報機関によって姿を消し、殺されたか、投獄されたという。世界中に人権思想を普及させ人権の保護を使命とする国連人権理事会の諸君は一体全体どこにいるのか?

ドナルド・ルーは、国務省と手を組む民間部門の重要性を強調し、民間と市民社会の取り組みを加速させ、今後5年間で100万人の女性と少女をほぼ遠隔的に指導することを目指すと述べた。

もし悪名高いターリバーンが間接的および遠隔的に支援されれば、5年以内にアフガン女性は全滅するか、さもなければ精神に障害をきたすことは必至だと心に留めておいてほしい。

「いいニュースだ、だがハードルは高い。ただの高望みに終わるだろう」と当該領域から帰ってきたばかりのマイケル・クーゲルマン(ワシントンにあるスミソニアン学術協会傘下のシンクタンク、ウィルソン・センターの上級会員で、南アジア担当)は述べている。

ターリバーンのドーハ事務所長で国際報道官のスハイル・シャヒーン(Suhail Shaheen)はアメリカの努力を受け流しこう述べた、「もしアメリカがアフガン女性の状況を改善することに興味があるなら、アフガニスタンの最も貧しくとも有能な女性が住んでいる地方にやって来て、母子ケアセンターや産科病院の建設を手伝ってはどうか。」

「この構想は、ターリバーンへの米国の制裁体制に抵触しない範囲で、人道支援を越えて米政権がアフガン人援助に乗り出したとの号砲を意味するようだ」と、マイケル・クーゲルマンは分析している。

果たしてそうだろうか? 概してシンクタンクの研究員は、いろいろな考えを持ち、その時々で政策決定者が聞きたいことを話す者が選ばれる。この根拠のない解説は、ターリバーンを支持するという政権の真意をオブラートで包み込む。たとえアフガニスタンの全住民が恐怖政治の下で抹殺されようとも彼らはお構いなしだ。つまり、この種の解説はテロリストの側に立って彼らを支援するだけなのだ。

案の定、クーゲルマンはこう続けた、「ターリバーンは決して協力しないし、特に現地から米国が撤退した今、そのように野心的な構想をどうすれば運用できるのか」と。 このような表現は、アメリカがターリバーンを承認する何らかの道を探っており、見返りにアフガニスタンへの再進出の下地を築こうとしていることを明示している。

「いかなる援助も、干渉の道具とみなされないように、政府と調整されるべきである」とシャヒーンは付け加えた。

これもターリバーン系ロビイストとその代理人が使う常套句だ。こうして、すべての援助を政府と調整するよう米国に迫る。ところで、どの政府だ?  ターリバーンの政府を生み出したのはドーハ和平交渉で密約を仕組んだ米国ではないか。

 

ターリバーンとの新たな密約

「必要ならばターリバーンとも関係する。だが彼らと世界に対して、我々にとっては彼らが唯一の選択肢ではないことを示さなければならない」とアミリは語った。

確かに超大国アメリカにとって歩兵のスペアはいくらでもいるだろう。アミリらしい大胆な発言だが、これがこの記事のタイトルの一部となった。

話を戻すと、ターリバーンは、自分たちがパキスタンISIに導かれて、アジアのライバルたちに対するアメリカの歩兵となっていることを知らないのだ。それは白日のごとく明らかなのに。

「われわれは、ターリバーンと市民社会が関わる機会を探っている」とドナルド・ルー米国務次官補は述べた。「ターリバーンはここ数日、自らこう言っている。彼らは西側にいる米国と一緒にページをめくることを望んでいる」と。

もしそれが彼らの本意なら、彼らが占領アメリカ軍を打ち負かしたと自慢するのは奇妙である。アフガン国民や近隣諸国はすべてお見通しなのだ。秘密協定によって、自由に使える高度な軍事装備を丸ごと与えられ、その結果彼らが政権を握り、アフガン国民全体かつ特に非パシュトゥーン民族をいま弾圧していることを。

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