Increase in Terrorist Activities, Central Asia Build Security Belts on the Border Lines with Afghanistan

By Hasht-E Subh Last updated Oct 29, 2022
ハシュテエ・スブ・デイリー(アフガニスタンの独立系日刊メディア)

2022年10月29日

【リード】
共和国政府の崩壊後、世界と領域の強国はアフガニスタンに焦点を合わせて様々な議論をなし、互いに相反する行動を取っている。ターリバーン政権の領域的同盟国であるロシアは、このグループと1年2ヶ月の交流を経た今、アフガニスタンの治安状況の悪さと、アフガニスタンから中央アジアに迫っている脅威について懸念を表明している。ロシア高官は、アフガニスタンには20のテログループがあり、1万人の戦闘員がいると発表し、アフガニスタンの惨状がテロリストを引きつけ、この領域の過激派に安全な環境を与えていると主張している。
一方、タジキスタンは、ターリバーンが3千以上のパスポートをテロリスト集団に配布したと発表し、中央アジアとアフガニスタンの国境にセキュリティーベルトを構築すべきと要求している。ターリバーンの支配下にあるISISグループの活動が日に日に活発化する中、こうした懸念の幅は広がっている。

【本文】

<ロシアの懸念>

10月26日(水)、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、独立国家共同体(CIS/訳注:現在の加盟国はロシア、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、ベラルーシ、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバの9カ国)の第50回安全保障・情報当局幹部会議で演説し、アフガニスタンからのISIS、アル=カーイダ、その他のテロ集団の脅威を前例のないものと呼んだ。同氏は、独立国家共同体の加盟国がこれほど広範な脅威に直面したことはないという。今回の会議でプーチン大統領は、ISISなどのテロ組織がアフガニスタンを経由してこれらの国々に入り込もうとしていると強調した。

(訳注:参考サイト:プーチンの開幕メッセージ
http://en.kremlin.ru/events/president/transcripts/69681)

ロシア大統領は、アフガニスタンと中央アジア諸国との国境地帯にテロ集団が集中していることが、領域内にある国々への侵入・浸透を含め、起こりうるリスクを増大させていると強調している。プーチン大統領はまた、独立国家共同体の加盟国がこれらのグループに対し一致して闘うべきと呼びかけた。彼によると、領域に平和と安定をもたらすためには、加盟国が利用可能なすべての軍隊、装備、知識を使い、国境に迫るテロ組織と対抗する能力を高めることが肝要だという。

ロシアのオレグ・シロモロトフ外務副大臣は、アフガニスタンでは20以上のテログループが活動しており、その配下には1万人の戦闘員がいるという。また、アフガニスタンの悲惨な社会・経済状況がテロリストを引き付け、この国の過激派を助長していると付け加え、ロシアはアフガニスタン情勢を注意深く監視していると忠告した。同氏はそうしたグループの名前を挙げなかったが、報道によると、アル=カーイダ、ISIS(イスラム国)、ウズベキスタン・イスラム運動、ジャマート・アンサルッラー(訳注:アッラーの戦士を意味し、ウズベキスタン・イスラム運動から分派してタジキスタンで活動)、東トルキスタン・イスラム運動(訳注:中国から新疆ウィグル省の独立を目指す)、コーカサス首長国(訳注:チェチェン独立派の武装組織)がターリバーンと行動を共にするグループに含まれる。

(訳注:参考サイト:シロモロトフの発言
https://www.afintl.com/en/202210275887)

さらにロシア外務副大臣は、特定の国や組織には言及しなかったものの、テロリストがアフガニスタン外の源から資金援助を受けていると示唆した。彼はまた、アメリカ合衆国とその同盟国が、アフガニスタン国内のみならず中央アジア諸国の国境地帯も不安定にさせていると非難し、次のように付け加える。「NATO軍がアフガニスタンに残した武器や弾薬が、テログループに利用されている」と。しかし、彼は、アフガニスタンがテロ活動の潜在的な源であるからこそ、ロシアはターリバーンと連絡を取り続けると強調する。ロシア外務副大臣は、ターリバーンに対して、アフガニスタンで包摂的な政府を形成し、テロおよび麻薬と戦い、人権を尊重するとの約束を果たすよう要請している。

<タジキスタンの懸念> 

その前週10月18日(火)には、タジキスタンの首都で開催された「テロ対策とテロリストの移動防止のための国際的・領域的国境警備・管理協力」会議(訳注:タジキスタン、国連反テロリズムセンター、国連中央アジア予防外交センター、欧州安全保障協力機構、欧州連合が主催し、カタールとサウジアラビアが後援)で、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領が、中央アジアのアフガニスタンとの国境沿いに「セキュリティベルト」を構築することを呼びかけていたので、これは重ねての懸念の表明となる。

(訳注:参考サイト:ドゥシャンベ会議
https://www.osce.org/countering-terrorism/529062
:ラフモンの発言
https://www.afintl.com/en/202210186379)

この会議でタジキスタン大統領は、テロリストが「移民と亡命希望者」を支援する組織の名を使って中央アジアの国境地帯に移動し、素性を偽ってこれらの国々に潜入しようとしていると強調した。また、「セキュリティーベルト」について、過去2年間だけでアフガニスタンとの国境沿いに175の検問所を設置し、さらにこの先300の検問所を設置する予定であると彼は述べている。ラフモン氏は、中央アジアの国々に対し、タジキスタンのこうした先駆的行動に習って、中央アジアにおけるテロの脅威を減らすよう切に要請している。また、前の週に開かれたアジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA/訳注:アジアの28カ国が参加する国家連合で、今回の会議はカザフスタンの首都アスタナで開催)で彼は、現在アフガニスタンでは約1万人の「ムジャヒッド(訳注:聖戦を戦う人(ムジャヒード))と呼ばれる自爆テロ隊」が訓練されていることを付け加えていた。

(訳注:参考サイト:ラフモン基調演説
http://tajemb-my.org/president-emomali-rahmon-addresses-the-high-level-international-conference-on-international-and-regional-border-security-and-management-cooperation-to-counter-terrorism-and-prevent-the-movement-of-ter/
:CICAでの自爆テロに関するコメント
https://www.khaama.com/tajik-president-says-security-belt-must-be-built-around-afghanistan-23674/)

(訳注:ターリバーンが内部に編成し軍事パレードでも行軍させている自爆大隊については「自爆大隊は戦術的・戦略的暴力」に詳述されている。)

一方、「テロ対策とテロリストの移動防止のための国際的・領域的国境警備・管理協力」会議に話を戻すと、その2日目にあたる10月19日(水)、タジキスタンのラムザン・ラヒムザデ内相は、ターリバーンが前年に「テログループ」のメンバー3千人以上にパスポートを発行したと明言した。この会議で彼は、ターリバーン政権が領域にとって危険であると裏付ける状況が整ったと強調した。ラヒムザデは、この会合の参加者に対し、アフガニスタンに焦点を当てるよう求めた。彼の前にも、前アフガニスタン政権の内相だったマスード・アンドラビが、ターリバーンがアル=カーイダなどのテロ集団のメンバーにアフガニスタンのパスポートや「タズキラ」と呼ばれるアフガンIDカードを与えて、テロ集団との関係を隠しているとツイートしていた。

(訳注:参考サイト:アフガンIDカード(ここでは「タスケラ」と表記)について
https://refugeestudies.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/report_afg_ukho_CPIN_2110_v1.0_j.pdf
他にwiki(https://en.wikipedia.org/wiki/Afghan_identity_card))

タジキスタンは、ターリバーンが中央アジア諸国との国境地帯にあるコチャ川(訳注:ヒンドゥークシ山脈を出てアラル海までつながる大河アムダリヤ川がアフガニスタンの北部国境を流れる。コチャ川はその支流でファイザバードなどを通って北西に下り合流する)の向こうで数百人の先住民を強制的に移住させたことに懸念を募らせている。現地関係者の主張によると、アフガニスタン北東部にあるタハール州のカジャ・バハウディン地区やダシュト・エ・カラ地区の一部で、ターリバーンが住民を追い出し、その住居にパキスタン人遊牧民を移民として住まわせているという。

<イスラム国の暗躍>

一方、アフガニスタンにおけるISISグループの活動も日に日に拡大している。このグループは最近、先週木曜日にヘラート州でターリバーンの軍隊を乗せた車両を標的として攻撃し、少なくとも2名のターリバーンが死亡し、他に数名が負傷した。9月30日には、カブール西部のカージ教育訓練センターで自爆攻撃があり、数十人が死傷した。ターリバーンはこの攻撃もISISグループの犯行だとしている。さらに、カーブルのロシア大使館付近での爆発も、ターリバーンによるとISISの仕業だという。

だが、ロシアが懸念を高めているのはパキスタンの反応が変わってきたからだ。ここへ来てターリバーンの支援者のひとつであるパキスタンも、アフガニスタンがテロリストの巣窟になることに懸念を表明した。以前(9月23日)、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は、第77回国連総会で演説した際、「アフガニスタンから主だったテログループがおよぼす脅威に、わが国もほかの国々と同様、強い懸念を抱いている」と語った。

(訳注:参考記事:シャリフ首相の演説とそれへの反発
https://tolonews.com/afghanistan-179994)

アフガニスタンと国境を接するイランも先週、ISISに攻撃された。ISISグループの出版機関のひとつである週刊新聞「アル=ナバ」は、イランのシーラーズ市にあるハザラット・アフメド・イブン=ムサのモスクに対する攻撃はISISによるものだと伝え、次のように述べている。「この最新の事件で、イスラム国(ISIS)の標的は、イランの多神教祠に巣くうマギ(訳注:ペルシャの司祭)だった。ISISのムジャヒディーンの1人が祠の中で発砲し、数十人の死傷者を出した。」報道によると、この攻撃の結果、20人が死亡し、40人が負傷した。

こうした状況になる前から、アフガニスタン国民抵抗戦線も、ターリバーンの支配下でアフガニスタンが外国人テロリストの巣窟になっていることを、何度も指摘している。同戦線によれば、世界がこのことに注意を払わなければ、2001年9月11日の同時多発テロのような事件が必ず再現されるという。

<米国の反応>

ロシアがアフガンの地にいるテログループの存在に懸念を示すちょうど2週間前の10月12日(水)に、アメリカのジョー・バイデン大統領は、アメリカの国家安全保障戦略文書の中で、アフガニスタンをアメリカやその同盟国に対するテロ攻撃を計画するテロリストの巣窟にはさせないと表明している。また、脅威が深刻化したため、米国の反テロリズムのアプローチも変化したと記している。

(訳注:参考サイト:米国家安全保障戦略文書
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2022/10/Biden-Harris-Administrations-National-Security-Strategy-10.2022.pdf)

この新たなる安全保障戦略文書には、アル=カーイダ、ISIS、その他のテログループに対して、空からの戦いを繰り広げる能力に自信があると書かれている。その実例が、カーブルでアメリカが起こしたアル=カーイダ指導者アイマン・アル=ザワヒリの殺害である。ワシントンがかつてアフガニスタンでテロとの戦いを始めたときよりも、今日のテロの脅威は思想的に多様化し、地理的に分散していることも、この文書で指摘されている。

<隣国へのロケット攻撃>

ロシアや中央アジアの国々は、アフガニスタン国境で脅威がエスカレートしていることを懸念している。それはアフガニスタンからウズベキスタンおよびタジキスタンへロケット攻撃が何度もなされているからだ。そして、ISISはこれらの攻撃を自らの仕業だと認めている。

タジキスタンがISISのロケット弾に攻撃されたと確認できるのは一度だけだ。このグループは、今年5月にビデオ映像を公開し、タハール州からタジキスタン領土へミサイル攻撃をしたと発表した。ISIS傘下のウェブサイト「Amaq」で映像を公開したのだが、ISISは攻撃目標がタジキスタンの軍事施設だったと主張した。またその映像によっても、ミサイルの発射地点は不明だ。しかし、アフガニスタンのメディアはすでに、このミサイルはタハール州のカジャガール地区から発射されたと報じていた。またその時、タジキスタンのメディアは治安当局の発言を引用し、アフガニスタンからBM1ロケット弾(訳注:ソ連製ロケット弾)が4発発射されたと伝えていた。

またウズベキスタンはアフガニスタンからのロケット弾によって3回攻撃されている。これらの攻撃はすべてイスラム国ホラーサーン州(ISKP/訳注:ターリバーンに対抗するテロ組織)が行ったものである。

アフガニスタンからウズベキスタンへの最初のロケット弾攻撃は、今年4月末に行われた。報道によると、この攻撃では、商業都市ハイラタン港(訳注:アムダリヤ川に面する国境の町で、対岸はウズベキスタンのテルメズ)の近くにあるサルチャ地区からウズベキスタン領内に向けて、多連装ロケット弾の一種であるカチューシャロケット弾10発が発射されたとのことである。アフガニスタンからウズベキスタンへの2回目のロケット弾攻撃は、今年7月初旬に行われた。メディアはアフガニスタン領土からウズベキスタンのスルハンダリヤ州テルメズに向けて5発のロケット弾が発射されたと発表した。アフガニスタンからウズベキスタンへの3回目のロケット弾攻撃は、今年7月中旬に行われた。

(訳注:参考サイト:ISKPによるロケット弾攻撃
https://www.cacianalyst.org/publications/analytical-articles/item/13731-iskp-attacks-in-uzbekistan-and-tajikistan.html
:3度目の攻撃とその否定
https://bakhtarnews.af/en/uzbekistan-reject-rocket-attack-from-afghan-borders/)

<国連の反応とターリバーンの主張>

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、アフガニスタンにおけるテロの復活は、世界の平和と安全に対する脅威の増大だと指摘した。彼は5月10日(火)、スペインのマラガで開催された「人権、市民社会、テロ対策に関するハイレベル国際会議」において、このような懸念を表明した。

(訳注:参考サイト:グテーレスのビデオメッセージ
https://media.un.org/en/asset/k13/k13zp4tcxv)

対照的に、ターリバーンはアフガニスタンのISISを殲滅したと主張しているが、このグループはこれまでの1年間、流血を伴う致命的な攻撃を行い、何百人もの死傷者を出している。ターリバーンは依然として領域内にいるアル=カーイダなどのテログループとの関係を絶ったと主張しているが、アル=カーイダネットワークのリーダーであるアイマン・アル=ザワヒリが、今年8月1日にカーブルでアメリカの無人爆撃機の攻撃により殺害されたばかりである。彼はターリバーンの客人であったと情報筋は主張している。ターリバーンは、アフガニスタンにおけるISISや他のテロ集団の存在を一貫して否定してきた。各国が様々な懸念を表明するなか、このグループの高官は、アフガニスタンから周辺国や世界に安全保障上の脅威が及ぶことはないとしている。

アミン・カワ(ハシュテエ・スブ:シニアレポーター兼アナリスト)
Amin Kawa-Senior Reporter and Analyst, Hasht-e Subh Daily

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One thought on “<strong>テロ活動の活発化、中央アジアはアフガニスタンとの国境線にセキュリティーベルトを構築</strong>”
  1. タリバンそのものが自爆テロ部隊を内部に持つテロ組織だった。権力を簒奪して自爆部隊を解散するかとおもいきや、逆に増強して軍事パレードにまで登場させている。人間をどこまで愚弄するのか、目をそらさず見つめ続けよう。

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