How the ‘Fantasyland’ Created?
By Hasht-E Subh Daily Last updated Nov 22, 2022
ハシュテ・スブ・デイリー社説(2022年11月22日)
(WAJ)アフガン戦争でアメリカが負担したコストは20年間で2兆2600億ドルと米ブラウン大学の「戦争のコストプロジェクト」は見積もっている。しかし、失われた命という意味では犠牲はもっと大きい。少なくても2500人の米軍兵士、4000人近くの米国民間人契約者、6万9000人のアフガン軍・警察官、民間人4万7000人、5万1000人の反政府側兵士らが死亡した。さらにアメリカは軍費を借金でまかなっており2050年までに支払うべき元金利子総額は6兆5000億ドルにのぼるという。これは米国人1人当たり2万ドルの負担。アフガニスタン復興支援の監査を担当するアメリカ合衆国連邦政府内の機関であるSIGARはアメリカ政府の支出がこれまで正しく使われていたか、さらには今後も関連支出が正当なものであるかを監査する機関である。国税の使われ方を監査するのは民主国家であれば当然の行為である。日本もアメリカに追随しておおよそ1兆円を支出しているはずである。果たしてアメリカのように厳密な監査をしているであろうか。なお、SIGARのレポートに関しては金子編集員が「編集室から」で解読をつぶやいているので参照されたい。
<リード>
アフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)はこのほど、アフガニスタン政府の崩壊を評価する新しい報告書を発表し、ターリバーンが同国を支配した理由を6つ列挙した。SIGARによると、この破滅的な崩壊の主犯は、アフガニスタン政府、米国、そしてターリバーンであるという。
<本文>
59ページに及ぶ報告書の中で、SIGARはアシュラフ・ガニー率いるアフガン政府が共和国体制崩壊の主犯であったと認定し、アフガン政府はターリバーンよりも腐敗していたと述べ、ターリバーンのような強い戦意を持っていなかったと強調している。他方、ターリバーンは外国の占領に反対し自分たちの信じる宗教を広めるために戦っていると信じていたのである。
報告書の大部分はアシュラフ・ガニーの行動と政策の叙述に割かれており、大統領は「アフガンの現実から切り離され」、白昼夢を見るのに忙しい人間として描かれている。その中で、前駐カーブル米国大使マイケル・マッキンリーが、アシュラフ・ガニーは幻想の国に住んでいると述べたと伝えている。その幻想の国はどのように作られたのか、その中でアメリカはどのような役割を果たしたのか、問う必要がある。
2014年以降(訳注:この年、米国はアフガニスタンでの戦闘的役割を終了したと発表した)、米国は、軍の撤退およびアフガン政府との将来の協力のあり方について明確なメッセージを発信せず、多面的かつ矛盾した作法で行動してきた。一方では、アフガン政府と戦略協定を締結し、両国の敵は共通であると保証し、軍事能力を伸ばして、アフガン開発計画を支援するために中長期的な関与を約束した。だがその裏で、ターリバーンと内密かつ公然の二者会談を行い、アフガンの政党はターリバーンと権力の分有について話し合うべきと警告していたのである。
米国は矛盾した怪文書であるドーハ協定を策定した。その簡潔な協定の裏で、両当事者は詳細な義務規定についても署名したと言われている。それらは隠れた付属文書と呼ばれるまでになっている。2021年4月、アフガン政府の支配下にある地区の陥落が始まり、その勢いが徐々に加速すると、米国は、アフガニスタン国内での合意なしに武力によってターリバーンが国の行政を引き継ぐことは許さないと発表した。
この同じ二面政策を根拠にターリバーンに敵対するグループは、ターリバーンが全国民を包含する政府を樹立するとの幻想に今日までしがみついている。彼らは、話し合いが再開され、その名が交渉人名簿に載れば、会員制政府の株主として楽しめると信じて、ワシントンの動静に耳をそばだてている。アシュラフ・ガニーだけが幻想の国に暮らしているのではない。非ターリバーンの政治家ならば、清濁合わせてそのほとんどが、アメリカの行動とその曖昧な立ち位置の陰で夢を見ているのだ。
SIGARの報告書は、腐敗と権力集中によって、アシュラフ・ガニーとその腹心の輪が暮らす幻想の国が効率よく形成されたとする。しかし、米国を悪しざまに言う批評家たちによると、かの国はアフガニスタンから軍隊を撤退させるまで、根本プランの策定、付随する各プロジェクトの実施、そのためにアフガニスタンに提供されていた資金の配分を、一度たりともガニーたちには任せなかったと言う。
そんなアフガン政府に代わり、まるで随伴政府であるかのように振る舞ったのが、各国の大使館やNGOだった。彼らは政府を助けようとプロジェクトを立案し、援助を受け取り、消費し尽くした。その上、最終報告をアフガニスタンという国家当局に提出することはなく、適当な当局宛てでお茶を濁した。SIGARの報告書で、首都と地方、都市と村の距離が遠くなり、その結果、政府が孤立する原因とされた中央集権体制も、ボン会議におけるアメリカの支援とそれに続くジルガ(訳注:村落共同体の長老や宗教指導者や軍閥たちからなるアフガニスタンの伝統的な合議体)の庇護の元に形成されたものであった。
今日、ターリバーンは、米国と領域諸国から支援され、それらとの連携を誇りながら、この国の住民のニーズおよび望みとは明らかに矛盾する幻想的な政権を構築しつつある。ターリバーン指導者が国に対して抱く恐ろしい夢の根本の問題点は、ハイバトゥラー・ムッラー(訳注:ターリバーンの最高指導者ハイバトゥラー・アクンザダ師)本人の双肩にあるのか、それとも彼やその他の空想家ムッラー(訳注:イスラームの指導者)を取り立てて、協定や武器や資金を提供した人たちにあるのか?
(訳注:参考文書:当該リポート
https://www.sigar.mil/pdf/evaluations/SIGAR-23-05-IP.pdf)
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