Economic Federalism a Desirable Option for Economic Development of Afghanistan!
Written by Dr Dastagir Rezai, economist/ 4 November 2022
著者:ダストギール・レザイ/ 2022年11月4日
原著者:ダストギール・レザイ氏(1961年生)はモスクワ人文大学で経済学の博士号を取得した元カブール大学教授。文化・市民活動家、経済問題研究者。主な著書は以下の通り。
1-「アフガニスタンの伝統的な多重構造経済から市場経済への移行」
2-「アフガニスタンにおける20世紀の国家資本主義経済と21世紀の資本主義経済展望」
3-「アフガニスタンに最適な経済システムを目指して」
4- 「諸論文および経済計画選集」
1- ” Transition of Afghanistan from a traditional multi-structured and hybrid economy to a market economy”.
2- “ Looking at the 20th and 21st-century state capitalist economy in Afghanistan”;
3- “Towards an optimal economic system for Afghanistan”
4- “A selection of articles and economic plans”.
Facebook Page of Dr. Dastagir Rezai
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Translated into English and edited by: Fateh Sami
英訳および編集 ファテー・サミ
Fateh Sami氏:カーブル出身。人口学、統計学、農業経済学専攻。元カーブル大学講師、アフガニスタン統計省計画調整部長。カーブルタイムズ編集者を経てUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)/IOM(国際移住機関)の上級統計家/人口学者。現在、オーストラリア・ビクトリア語学校(VSL)教師。NAATI認定プロフェッショナルバイリンガル(ダリー語-ペルシア語および英語)の通訳および翻訳者。カーブル大学、ロンドン大学、ボンベイ大学、ジャワハーラールネルー大学、オーストラリアRMIT大学などで学び、20年以上にわたり独立系ジャーナリストとして活躍中。
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概要
アフガニスタンは未開発の国である。経済発展の可能性は、成長と発展の舞台を整えることを含む徹底した政治・経済改革に根本的に関係している。安定した政府と政治体制は、この国のあらゆる開発の舞台にとって不可欠な前提条件である。疑う余地なく、安定した政治体制は、分権的な構造によって確保される。270年にわたる中央集権体制がアフガニスタンに経済の発展と社会の安定および繁栄をもたらせなかったことは、経験によって証明されている。特に前世紀には、十分な天然資源と人的資源が活用できたにもかかわらず。
多くのアフガニスタンの学者は、もしアフガニスタンの国民が合意に達し、地方分権型の政治システム(できれば「連邦民主主義システム」)を選択し、それに応じて適切な経済システムとモデルを選択し、新しい経済システムの枠組みを築いた後に、経済政策と経済開発プログラムを連動させて目標に向かえば、成長のための土壌が整い、組織的な経済開発への道がいくつも見つかり、うまく機能できると信じている。
「アフガニスタンを経済圏ごとに分割し、専門化すること」、これを私は「経済連邦主義」と呼んでいるが、これはアフガニスタンの経済を論じる上での新しい用語である。
これはアフガニスタンの経済発展にとって望ましい選択肢でありうる。分権的な政治システムという政治的舞台が整えば、特に「連邦民主主義システム」が提供されれば、その枠組みの中で、政府は持ち場の細分化、地域単位ごとの専門化を支援し、やがて連邦機関が誕生する。
あるいは、それぞれの地域や持ち場が元来有する特別な潜在力や優位性が下支えして、かかる連邦機関を生み出す。私はこの方式を「経済的連邦主義」と名付けているが、この意味での定義は我々の経済学の世界では革新的と見なされる。
はじめに
概要で述べたように、アフガニスタンは政治・経済構造だけでなく、社会・文化面でも後進的である。そのため、政府の発展計画のなかで優先されなければならないのは、一般的な国の発展、特にその経済的な発展である。中央集権的な政治体制における経済の中で、数年かけてどう流れが形成されるかを研究し、私は次のように結論づけた。
* 「アフガニスタンの経済発展は、安定した国家政府(地方分権型政治システム)によって立つ →資本主義経済システム、ミックスモデル →経済政策(目標、包括的)→経済開発計画(国家的、戦略的)→産業革命 →アフガニスタンの経済圏への分割と専門化 →地理的位置と地域プロジェクトの有効活用と…」! **
課題設計
アフガニスタンをいくつかの「特別な経済区域」に分けること、つまりその「経済特区化」は、経済発展のプロセスを加速させるための研究において、国家の経済発展の必要条件として認識されている。そのため、アフガニスタンは、経済的、地理的、人口的、文化的、社会的な特殊性を考慮して、各経済区域に分割される必要がある。
それぞれの経済特区の成長の可能性に基づき、どの経済地域に組み入れるかに焦点を合わせることが重要であり、それは経済区域における潜在的な専門性を差別化することを意味する。
所属する経済区域が、農業生産、観光名所、園芸、畜産、工業団地の立地、鉱業取得権、気候条件など、特別な利点を有する場合、その恩恵は、当該区域に住むすべての人々の幸福ためにバランスのとれた経済発展を導き出すのに役立つ。
ただし、区域の選定は、その収益性に基づき、政治的な動機による優遇は一切なく、世界中で共通の科学的なアプローチと経験に、純粋に沿ってなされることが条件である。
経済区域の創設と専門化は、仕事の分担、調整、効率化につながる。地域や地域間の専門化は、各地域が最小のコストで最大の成果を得るために、その強みに集中する機会を提供する。この基本的なアプローチの背景には、国家間の国際分業の歴史的な経験がある。
一国だけでなく、多くの国で専門化を進めると、少ない投入で最大の利益が得られることが証明された。手に入る限り最低コストの生産要素だけに絞って活用すれば、その安さが強みに転じ、最大の成果を得られる可能性が出てくる。
資本主義のもとでは、国際分業は輸入関税ほかの貿易障壁の圧力にさらされる。それゆえ、国々は二国間相互協定を結び、お互いに貿易障壁を取り除き、協定国間同士では開放主義を貫く代わりに非協定国間では閉鎖主義をより強めるという経済ブロック化に進む傾向がある。
共産主義国のほとんどは、今でもそのような閉鎖的なブロックを形成している。かつて、経済協力会議(コメコン)は、ソ連と共産圏諸国との強力な経済協力の現れであり、特に重化学工業を持つ国々に愛国心が十分にあったことから、そのように機能したのだ。
アフガニスタンはこの経験を生かして、そのニーズを追い、「経済連邦主義」または分散型経済システム、できれば「連邦制民主主義経済システム」の枠組みの中で専門化を目指すことができる。調整と、効率化と、有効性が特に重要だからだ。
経済圏の枠組みの中で、アフガニスタンはその経済発展のために産業革命を必要としている。言い換えれば、アフガニスタンの経済発展は産業革命、つまり工業化の加速に依存している。
まず、国の工業化は化学、物理学、数学、地質学、生物学などの現代科学の基礎知識、そして基礎知識の開発とインフラの整備を獲得することなしに実現することはできない。
アフガニスタンでは、科学論文を書き、雑誌に発表し、本を出版することは一般的であるが、それだけでは科学の進歩とはいえない。技術、製品開発、経済の進歩は、科学の進歩を達成するためのいくつかの「進歩の指標」である。
では、「書かれ、出版された論文の中で、新技術、生産開発、経済進歩の分野で発明・発見されたものがどれだけあるのか?アフガニスタンのどの地域が科学技術や商品・サービスの生産において進歩したのだろうか?」 答えは「どこも進歩していない」だ。
このまま同じ伝統的なやり方を続け、消費者であり続け、他者に援助を求めることが可能なのか、それとも解決策を考えることができるのか?
国の工業化には、国家開発計画が必要だ。国内の異なる経済部門が繋がりあって共に関係し、一カ所で、並行して、同時に連なっていくような。
そうすれば、ある部門の実行が、別の部門の土台となり、連鎖していく。
同様に、新しい経済圏の計画においては、地域同士や国同士の相性、有機的なつながりを考慮することが非常に重要だ。
例えば、現在のアフガニスタン経済の根幹である農業の発展には、水が必要だ。アフガニスタンにおける水の確保は、農産物の成長、エネルギー生産、環境改善と産業発展の基礎となる。
工業の発展は、インフラストラクチャー、近代的な高速道路、鉄道の建設、送電線の延長の基礎となる。道路や鉄道は、州と県、州と州、国の中心と国境や港をとおして近隣諸国とを結ぶ。
すると、敵対的にして敏感な点にも、よりうまく対処できるようになる。天然資源、水、民族拡張、宗教多様性などの諸問題である。地域プロジェクトが、よりうまくいく可能性もある。例えば、TAPI(訳注:トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタン・インドをつなぐパイプライン計画)、カサ1000(訳注:キルギスタンとタジキスタンの余剰電力をアフガニスタン、パキスタンに送電する計画)、ウズベキスタン-アフガニスタン-パキスタン鉄道計画(テルメズ、ハイーラターン、マザリシャリフ、プリクムリ、カーブル、トールハム、ペシャワール)、それに伴う、商業物資の輸送網など。
アフガニスタンが国内の政治的安定を確保することができれば、いつでも地域プロジェクトを最良の機会として活用し、経済開発計画の実施に着手することができる。
アフガニスタンは地政学的に特異な国であり、歴史の中で近隣諸国との領土・国境紛争に直面してきたことは特筆される。河川(ヘルマンド川、ハリルド川、クナル川、カーブル川など)は天然資源を含み、アフガニスタンの高地から流出し、隣国のイランやパキスタンに流れている。当然、川に手を加えて他国を害する行為は危険である。
したがって、国内の紛争を引き起こす舞台は管理されなければならない現実であり、これらの舞台の管理におけるいかなる失策も、外部からの介入と搾取の原因となり得る。紛争を引き起こす舞台の管理には、政治地理学の知識の充実が必要とされる。
もしアフガニスタンの政府がこれらの舞台を管理し、その機会を利用することができなければ、近隣諸国はそれを管理し利用する優先権を間違いなく乗っ取り、自国の利益を追い、アフガニスタンを害するはずだ。そうなれば、脅威と頭痛の種になる。
近隣諸国との関係においてバランスを重視し保つことは、生死を決する原則だ。アフガニスタンのどの政府も、その地域の地政学的・地理経済学的・地理戦略的重要性を認識して、建設的に国家管理の任務につけなければならない。政府こそがアフガニスタンの経済発展に直接影響を与えるためである。
開発プロジェクトを遂行する上で最も重要な要素は、決意の創造と国の指導者が抱く国家戦略的なビジョンである。しかるうえで、国家開発計画がある枠組みに沿って開陳される。その枠組みにおいては、すべての開発目標が細かく定義され、時間的・項目的優先性に基づき順次処理される。
国家開発計画は、前もって決められた監視指標に従って遂行されるべきだ。地域と国の有機的なつながりが各経済圏の間にフィットすることも重要である。つまり、優れた国家開発計画とは、以下のすべての特徴を含んでいるべきなのだ。それは、包括性、目標の明確性と簡潔性、柔軟性、経済性、標準性、バランス性、適用性、当時性、そして監視と評価の可能性である。
こうして、アフガニスタンでは政府形成および国家建設と密接に関連して、産業・経済革命が進む。先進国における民族国家の建設は、人々の参加による国民経済の結合を強化するのに役立った。それは、国家領土において人民大衆を統合するものであった。
国家と新しい意味での民族主義。両者は産業革命という理念を巡っても同じくお互い不可欠な要素としてもたれ合う。産業革命こそが、通常ならば帝国的な構造をもつ大きな地理的単位を、納得のいく民族単位に再統合させる。すると国境のみならず、経済的境界つまり関税的境界もついてくるとは、ありがたい。
産業革命の進展は、現代民族国家の形成において、また、それが生み出すコミュニケーション施設においても、非常に重要である。産業革命の進展は民族的な制約を打破するものであり、そのため、この産業革命が起こらず、現代的な産業インフラが見つかっていない国では、国家プロジェクトの実現は非常に困難だ。特にアフガニスタンのような国では、その傾向が顕著だ。
このような状況を目の当たりにしているのは、先住民たちとその民族構造をつなぐ現実の物質的インフラがこれまでに存在しなかったから、そして現在も存在しないからである。
地理的に限られた意味で民族や地域に帰属する意識は、民族国家が構成するマクロな地理的単位への帰属意識よりも強いのだが、20世紀初頭、それは非常に素朴なものだった。なぜなら、本当の意味でのインフラがなかったからだ。つまり、鉄道、道路、工場が来て初めて、経済関係が結ばれた。つまり、国同士の経済交流が先で、それが地域間の連結を促した。
強力で規制力のある政府は、これらの問題をある程度管理できるだろう。しかし、いっぱしの国政や国家、民主主義や市民社会の段階に至らないとそれは望めない。したがって、当時のアフガニスタンでは、インフラの成長と上部構造の成長が釣り合っておらず、この欠陥は、今日のアフガニスタンの状況においても存在している。
結論
アフガニスタンで国民政府を形成する上で大きな障害となっているのは、抑制的な構造を持つ中央集権的な政治秩序である。アフガニスタンでは、中央集権的な政治秩序とその抑制的な構造が大きな障害となっている。その結果、政治的・経済的不連続性が生じ、その結果、天然・人的資源は手つかず、あるいは略奪・浪費される危険に直面し、ついに国は進歩せず、この状態では繁栄と安定は達成されないままである。
経済知識の原理と論理は、経済過程が政治によって継続的に影響されることはあり得ないと規定しているのだが、必要であれば、政治は経済的利益を追求するために動くことができる。ただ経済をいつまでも政治化することはできない。経済を政治化すると、逆の結果を招く。
「アフガニスタンを経済的特区に分割する」という「経済連邦主義」とでも呼ぶべき計画・提案は(異端的用語使用と揶揄されなくば)、分権的な政治システムである好ましき「民主連邦制」と相性がよく、アフガニスタンの発展にとって最適な選択肢なので、即刻採用されるべきだ。
このシステムには大規模な民主主義が含有され、経済システムの重要な目標のひとつである「力と影響の自由な拡大」を阻害しない。歴史的な経験からも、独裁体制に比べ民主体制は、多様な才能の活用、労働生産性の向上、経済・科学の発展に適した舞台であることが確認されている。
民主的な方法による経済発展が専制政治よりも効率的で生産的であることは、今や誰の目にも明らかである。生産の革新、批評と探求の文化、アイデア・商品・サービスの向上、そして民主主義の経営には高いモチベーションが必要だ。思想の自由は進歩の基本的支柱である。だから、創造的で革新的な精神は、自由と創造的で革新的な文化の雰囲気の中で提供されうる。
自由な空間、力と経済的影響の拡大という空気感の中で、国内市場での労働力確保のための土壌が提供される。同様に、頭脳流出も防止され、国家資本が失われることもない。中央集権制では、地域の自由と機能は中央政府によって制限されるのに。
地方の自治体や企業の側からは、これまで物的向上と自治の確立を目指す努力と願望が絶えず提起されてきた。経験上、中央集権体制の政府は、地方分権体制の政府よりも腐敗しやすく、汚職に走りやすいことが分かっている。同様に、分権体制にはより多くの自由がある。
結論として、アフガニスタンは地方分権体制を確立し、国土を経済特区に分割し、産業革命、教育、知識の開発を行う必要がある。政治的地理的位置、現代社会のありよう、そしてそれを中心に回っているすべてのインフラとサービスを、考慮することが非常に重要である。
最後に、できれば地方分権(連邦民主)制が国内に確立されたとき、それは必然的なことだが、そのとき初めて、中央政府は税制と予算制度を利用して国レベルの経済発展プログラムを計画することができる。
また、中央政府はその計画を実施することで、経済圏ごとに分けた経済連邦制の利点を享受することができる。このタイプの経済開発モデルは、輸入代替(自動車などの製品を国内で組み立て国内生産能力を高める)と呼ばれている。
しかし、ここで言う生産向上の真の目的は輸出である。輸入代替のための生産向上戦略と輸出増進の戦略の両輪がそろってようやく、発展、繁栄、安定に到達するのである。