Taliban’s Afghanistan, the only country to prohibit women’s education
Mujtaba Haris
By Hasht-E Subh Daily Last updated Jan 4, 2023

 

 ターリバーンのアフガニスタン、唯一女性の教育を禁止している国 

ムジュタバ・ハリス
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年1月4日

(WAJ:ヒジャブのかぶり方で死亡させられたマフサ・アミニさんをきっかけにした女性弾圧への抗議がつづくイラン。しかし、その国の女性の大学進学率は男子に遜色ないほど教育の面では男女平等が進んでいる。しかしその隣国アフガニスタンでは、女子の中高大の教育が禁止されるにいたった。イスラームの律法を厳守して女子の社会進出を抑えていたサウジアラビアやUAE、クウェートなどは、経済力にものを言わせて近年は女性の要求を取り入れ、女性解放を進めている。ところがアフガニスタンでは、社会の半分であり、重要な労働資源である女性を、教育から締め出すだけでなく家庭に閉じ込め、自ら経済的困難を招く政策(政策とも言えないが)を強行している。働き手を失った女性ばかりの寡婦家庭は飢え死にするほかない。女性の自殺や心中事件が増えている。自ら自らの首を絞める政策が長続きするはずはない。ハシュテ・スブ・デイリーは、女性の教育や就労を許さないターリバーンの政策と果敢に闘っている。)

【本文】
イスラム強硬派のターリバーンは、全国的に女性の大学教育を禁止し、教育と自由に対する女性の基本的な権利の侵害を一段と深めた。ターリバーンがアフガニスタンを掌握して以来、彼らは女性の生活のあらゆる側面で制限を強化し、わが国における女性の権利を究極的に悪化させてしまった。

ターリバーンのネダ・モハマッド・ナディーム(Neda Mohammad Nadeem)高等教育相は、すべての国公立および私立大学に対し、禁止令を守るよう指示する書簡を発出した。書簡には次のように書かれている、「追って通知があるまで女子教育停止命令に従うよう通達する。」

同省の報道担当、ジアウラ・ハシミ(Ziaullah Hashimi)は、報道機関に対しテキストメッセージを送りこの命令を確証した。この動きは、ターリバーンが女性の自由に対して課した一連の制限の中で最新のものであり、ターリバーン集団は女性の権利に対する取り締まりを強めている。

女性の教育に対する現在の制限は、教育を受け労働へ参加するという点で近年前進してきたアフガン女性にとって、大きな後退となる。大学教育の禁止は、多くの有能で野心的な若い女性が自分の目標を求めることを妨げ、早婚や家庭への拘束を余儀なくさせる可能性が高い。

「ターリバーンが500万人以上の女子の中等教育を禁止したことで私の10代の妹たちも学校に通えなくなり、私は悪夢にうなされましたが、まさかターリバーンが私に同じ事をしでかすとは思いませんでした」とカーブル大学法学部学生のナスリン(Nasrin)は、ハシュテ・スブに語った。

疲れきった声と涙目で彼女はつづけた、「もう絶望です。国を助け、持続可能な生活を送るという私の夢は、すべて粉々に砕け散ってしまいました。」

この禁止令は、全国で何千人もの少女や女性が大学入試(Kankor)を受け、その多くが将来の職業として教師や医学を志すようになってから3カ月も経たないうちに出された。

「ショックです。教師志望の私は大好きなジャーナリズムの勉強を諦め、文学を専攻したのに、今度は自分たちが課した科目の勉強まで制限するとは、正気の沙汰とは思えません。」高卒で20歳のマージャビーン(Mahjabeen)は、ハシュテ・スブにこう語った。

この禁止令がアフガニスタンの社会に与える影響を認識し、アフガニスタンの男女平等と女性の地位向上に向け活動を続けることが大切だ。

20年前、教育、特に高等教育に対するターリバーンの原理主義的なアプローチは、アフガニスタンに広範な破壊と停滞をもたらした。そして今、女性の教育に対するこの偏狭で制限するばかりのアプローチは、国の進歩と発展を妨げており、将来にわたり革新や批判的思考が生まれる余地をほぼ全て奪い去ってしまう。

高等教育の抑圧は、国家と国民に広範囲かつ長期的な影響を及ぼす可能性がある。成長と発展のためには、労働と教育に関する女性の基本的権利を優先し、保護することが肝要だ。

国連女性機関の事務局長であるシマ・バフース(訳注:ヨルダンの国連常駐代表で、2021年9月より現職)によると、現在のアフガニスタンにおける女性の雇用制限は、直ちに10億ドル、つまり同国のGDPの最大5%(訳注:世界銀行によると近年のアフガニスタンの年間GDPは200億ドル前後を推移)の経済的損失を発生させるだろうという。一方、ユニセフの分析によると、女子を中等教育から遠ざけておくことで、アフガニスタンは年間GDPの2.5%(訳注:約5億ドル)を損するが影響はそればかりではない。「現在300万人いる女子群が中等教育を修了できず、雇用市場に参加できないことで、これら女性が将来アフガニスタン経済に貢献できたであろう少なくとも54億ドルが失われる」とユニセフは声明で述べている。

参考サイト
https://www.unicef.org/press-releases/depriving-girls-secondary-education-translates-loss-least-us500-million-afghan

このことは、女性の雇用機会均等を確保することの重要性と、制約が国家経済に及ぼす有害な影響を浮き彫りにしている。女性が労働力として社会に完全に参加でき、アフガニスタンの成長と発展に貢献することが大切なのだ。

抵抗

2022年12月20日に発表されたターリバーンによる女子の大学登校禁止令に対し、約50人のアフガン女性のグループが、即日平和的な抗議デモ行進を行った。ヒジャブを着用し、一部はマスクをつけた女性たちが首都カーブルに集まり、禁止令に反対するスローガンを唱えた。しかし、事態は暴力沙汰となり、治安部隊が参加者と抗議行動を取材していたジャーナリストのうち幾人かを殴り拘束したようだと、目撃者した女性抗議者たちはハシュテ・スブに語った。

デモ参加者のひとりシャーラ・アレフィ(Shahla Arefi)は、私服の女性警官数名が行進に潜入し、武装したターリバーンの男性が到着したときに逃げようとした人々を抑止したと述べている。ターリバーンはこの事件に関してまだコメントを出していない。

参考記事
https://www.voanews.com/a/afghans-protest-taliban-education-ban-for-women/6887810.html

 

強硬なイスラム主義者は権力を握って以来、基本的な権利を擁護するためにすべてを賭ける勇敢なアフガン女性を弾圧してきた。

11月4日、ザリファ・ヤクビ(Zarifa Yaqubi)、ファルハット・ポパルザイ(Farhat Popalzai)、フマイラ・ユスフ(Humaira Yusuf)といった著名な女性人権擁護者とその同僚をターリバーンが逮捕した。アムネスティ・インターナショナルは、この逮捕はターリバーンの圧政に対する平和的な抗議や反対意見を抑圧しようとする暴挙であると非難している。

参考サイト
https://www.amnesty.org/en/latest/news/2022/11/afghanistan-women-human-rights-defenders-arrested-by-the-taliban-must-be-immediately-released/

 

ターリバーンのもとでの学術研究機関

1990年代のターリバーンによるアフガン統治は結果として国の高等教育制度を破壊しつくした。ターリバーンが支配した地域では女子への高等教育が禁止されたが、それは国民の半数を占める女性を学問から排除することにつながった。何百人もの女性講師や大学の女性事務職員が働くことを禁じられた。学問の自由と組織の自治は完全に失われ、女性の教育的・社会的権利が著しく侵害された。その暗黒の時代に、高等教育制度は崩壊寸前にまで追い込まれ、その結果、後の国の進歩と発展は深刻な影響を受けた。高等教育の抑圧と停滞は、あの時代のアフガニスタンで見られたように、国家とその国民に広範囲かつ長期的な影響を及ぼす可能性がある。

そこへアフガニスタンにおける今回のターリバーン台頭である。国の教育部門の将来が懸念されるのは無理もない。

現政権の主張によると、イスラム教とシャリーア(訳注:イスラム社会における法体系)が学校や大学で教えることのできる科目を決定する唯一の正当な根拠かつ基準であり、シャリーア法に反する科目はカリキュラムから排除される。

今回の全体主義政権の台頭は、国の高等教育制度に大きな影響を与え、それは今や破綻寸前である。ターリバーン集団の政策により、高等教育機関では女子と男子が分離され、女性にはヒジャブの着用が求められ、また私立大学にも高等教育省の息のかかった教員を採用すべく要求され、学部の教員たちはすでに国外に流出、あるいはその途上である。高等教育部門は今再びイスラム原理主義に基づく神権体制に支配されている。

イスラム諸国の教育

トルコとサウジアラビアは、アフガニスタンでターリバーンが女性の大学登校禁止を決めたことをそれぞれ非難した。トルコのメヴルト・カヴソグル外相は22日、この禁止令を「イスラム的でも人道的でもない」とし、ターリバーンに撤回を促した。最近、女性の自由を認め始めたサウジアラビアの外務省は21日、この決定に 「驚愕と遺憾」を表明し、「すべてのイスラム諸国にとって驚くべきことだ」と述べている。女性の権利と機会を制限することは、女性の人権を侵害し、平等と正義の原則に反するものである。各国当局は性別に関係なく、すべての個人の権利を尊重し、保護することが肝要である。

参考記事
トルコ:https://www.aa.com.tr/en/politics/taliban-ban-on-higher-education-for-young-women-not-humanistic-turkiye/2770003
サウジアラビア:https://english.alarabiya.net/News/world/2022/12/21/Quotes-Reactions-to-Taliban-led-Afghanistan-suspending-university-access-for-women

クルアーンは男女ともに教育を受けることを奨励しており、預言者ムハンマドはそれを男女の宗教的義務とみなしている。実際、ほとんど全てのムスリム女性は教育と労働の権利を有している。世界銀行の報告書によると、イスラム教徒が多数派を占める経済圏には4億5千万人の女性がいるが、その30%は外勤しており、そうした経済圏のほぼ全てにおいて、労働人口参加率は女性の方が男性より早く上昇している。

参考記事
https://www.weforum.org/agenda/2018/05/muslim-women-trillion-dollar-market-saadia-zahidi/
世銀統計
https://genderdata.worldbank.org/indicators/sl-tlf-cact-fm-zs/

 

イスラム教徒最大の国であるインドネシアでは、女性の大学入学率は1970年の2%から現在ではほぼ33%にまで増加している。サウジアラビアでは、大学生になる年齢に達した女性の半数が大学に通い、これはメキシコ、中国、ブラジル、インドなど他のいくつかの国よりも高い数字である。しかし、アフガニスタンでは女性の権利に対する最も激しい侵害がいくつか見られる。それはたとえば公立・私立を問わず大学への進学が禁止され、小学6年生を越える女子は通学が永久に禁止されるなどである。こうしてアフガニスタンは世界で唯一、女性の教育を禁止している国となっている。

国際的な反応

大学の門を閉ざすことは、ターリバーンが学術研究機関を不当に軽んじ、アフガニスタンの女性を束縛するための最後の手段だ。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この決定をターリバーンの新たな「約束破り」であり、「非常に厄介な」動きだと非難した。

「女性の積極的な参加と教育なくして、国が発展し、抱えているあらゆる課題に対処できるとは考えにくい」とグテーレスは述べた。

参考記事
https://apnews.com/article/afghanistan-taliban-3cea615c4d5d6d5d7da68b593a7546f2

米国国務省は、英国、カナダ、欧州連合、その他の西側同盟国との共同声明を発表し、禁止令を非難するとともに、ターリバーンが女性や少女を含むすべてのアフガニスタン人の権利を尊重するよう呼びかけた。教育はすべての人にとって基本的な権利であり、国際社会は団結してターリバーンの行動を非難し、この有害で差別的な禁止令の撤回を強く要求しなければならない。

参考サイト
https://www.state.gov/joint-statement-from-foreign-ministers-on-the-talibans-ban-on-afghan-women-working-for-national-and-international-ngos/

 

こうした発言のみならず、国際社会はターリバーンに対し即刻かつ適切な方法で外交的圧力を加え、女性を含む人権全般の尊重を保障させるべきである。

 

筆者紹介

ムジタバ・ハリス(Mujtaba Haris):
アフガン人で研究者ならびに作家。アフガニスタンの人権、人道危機、安全保障、開発状況について幅広く執筆している。いくつかの国際的なメディアでの発表実績あり。

 

【原文↓を読む】

Taliban’s Afghanistan, the only country to prohibit women’s education

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