OIC Calls for Global Islamic Campaign Against Taliban for University Education Ban on Women

Hasht-E Subh Daily Last updated Dec 31, 2022
ハシュテ・スブ・デイリー 2022年12月31日

 

(WAJ) ターリバーンとどう闘うか、アフガン人はいま、切実にその方策を探っている。単にターリバーンの暴力に暴力で立ち向かっても内戦が激化するだけでアフガニスタンの不幸はなくならない。アフガンの不幸は、パシュトゥーン族の偏頗で狭量な中世的因習および部族主義と結びついたイスラームの誤ったご都合主義的な解釈にその源がある。アフガン国民の平和と進歩と人権をめざす闘いを国際社会は支援しなければならないが、非イスラームの外国勢力が前面にたつと、ターリバーンに「ジハード」の口実を与えてしまう。アフガン人民は自ら内部的矛盾としてターリバーンと闘おうと決意している(アフガン人は乞食ではないほか参照)。世界のイスラム諸国はターリバーンはイスラームの名のもとにターリバーンが行っている蛮行を自らの問題ととらえ、ターリバーンに対処すべきである。その際、この記事でアフガン人が要望しているように、単に談話や声明を出すだけでなく、実効性ある措置が必須だ。イスラム諸国のそのような行動を裏から支える形で非イスラーム諸国(特に英米NATO、日本など)は動くべきである、と考える。

 

【本文】

12月29日、国際イスラム法学評議会(IIFA/訳注:OIC加盟国のイスラーム学者=ウラマーが集まり新規の事象について宗教的見解=ファトワを示す専門機関で、本部はサウジアラビアのジッダ)の会合で、イスラム協力機構(OIC/訳注:イスラーム諸国が加盟する国際機関、IIFAの母団体で本部は同じくジッダ)事務総長は、ターリバーンの女子教育禁止令に反対してイスラーム世界を団結させる世界的キャンペーンを呼びかけた。ターリバーンは宗教的な正当性に基づき女性の大学教育禁止を決めたと主張しているが、OIC事務総長は大学教育禁止はイスラームのシャリア(イスラーム法)に反するとした。

57の加盟国からなるイスラム協力機構 (OIC) は、国連に次いで世界で2番目に大きい政府間組織だ。

ヒセイン・ブラヒム・タハOIC事務総長(訳注:チャド人で2022年11月就任)は、ターリバーンが女性と少女の教育を妨害し、「イスラーム法に反するという口実で」女性教職員を解任したとOIC公式ツイッターで非難した。

事務総長は評議会に対し、「大学教育を含む女子教育を妨げるターリバーン政府の決定とそれが及ぼす悪影響に異を唱え、イスラーム世界の学者および宗教権威が団結した上で世界キャンペーンを速やかに立ち上げ、イスラームの真の教えを表明し、女子教育を復活させよう」と呼びかけた。

アフガニスタンの民間人、女性の権利活動家、政治家はいずれもがOICの姿勢を歓迎し、この行動をターリバーンの顔から「宗教的神聖さの仮面」を剥ぎ取るための措置と考え、イスラーム世界の学者たちの動員によってターリバーンの女性差別的行為に反対する集団的仕組みを作り出せると述べている。

今回のイスラム協力機構の行動を、ターリバーンの顔から「宗教的神聖さの仮面」を剥ぎ取るための有効な措置と呼んだのは、アフガニスタン国家安全保障局(NDS/訳注:アフガニスタンの諜報機関)の元局長ラフマトゥラー・ナビル(Rahmatullah Nabil/訳注:2010年代前半に4年間に渡り歴任)だ。

12月30日金曜日、ナビル氏はハシュテ・スブにこう語った。「間違いなくこの前のOICの姿勢は良い動きです。しかし、ターリバーンは過激派であり操り人形集団です。イスラームの教えをねじ曲げて解釈するように根っから訓練されています。彼らの実践と信条が変わるとは思いません。しかし、今回のOICの行動は、ターリバーンの顔から宗教的神聖さの仮面を剥ぎ取ります。」

さらに同氏は、「アフガン大衆の心は、特にターリバーンをイスラームの擁護者だと考えていた伝統的な社会層の心は、気が抜けること請け合いです」と付け加えた。

宗教と政治の専門家も、イスラム学者の動員によって、ターリバーンの女性差別的な行為に反対する集団的仕組みを生み出すことができると指摘している。その一人アブドゥル・アハド・ハデフ(Abdul Ahad Hadef)によると、過去数年間、イスラム協力機構はアフガニスタン国民が満足できる行動を一切とってこなかったが、今回のターリバーンに対する新しい姿勢は重要だと言う。ハデフ氏は次のように述べる。「OICは組織として、イスラーム世界のすべての学者の意見を集めて一般論を構築し、それを制度化できます。するとそれに反する意見、すなわちファトワ(宗教的見解)および立場は、個々の勝手な思い込みとされます。つまりターリバーンとてそれに抗う姿勢をとることはできないのです。」

2週間前(訳注:2022年12月20日)、ターリバーン政権下の高等教育省は、公立・私立の全大学に対し、追って通知があるまで女性の教育を停止するよう書簡を発した。この命令がまず先で、数日後に同省大臣がその理由を明らかにした。それによると、大学においては、ヒジャブが着用されず、マハラム(親族の成人男性)の同伴なしの外出が横行し、けしからぬ女子寮生活にひたり、女子と男子の分離ができていないからだと言う。

ターリバーンのこの措置は、世界の報道機関がトップ記事で伝えた。サウジアラビア、カタール、トルコ、イラン、マレーシア、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国、国連、その他多くの国際機関がターリバーン政府の決定を非難し、その撤回を求めている。

しかしながら、女性の権利活動家たちは、ターリバーンが女性差別の行動をとるのは国際社会に政治的圧力をかけることを目的とした策略なのだから、それにはまらずターリバーン体制に対して外交的逆圧をしっかりかけるよう求めている。

「ターリバーンにとって女性問題は、宗教的見解ではなく、女性を実際に人質にした上で検討される政治課題です」と、抗議者で女性の権利活動家のムニサ・ムバレス(Munisa Mubarez)は述べた。「ですから、このキャンペーンがターリバーンに響くとは思えません。彼らは宗教的信念に基づいてこのような制限を課しているのではなく、政治的利益に基づいています。ターリバーンに不利益を及ぼすやりとりが深刻になるにつれ、このグループは宗教というツールを使って政治的利益を確保しようとするのです」と彼女は付け加えた。

「ターリバーンは自分たちのしていることがイスラームのシャリアに基づくものではないことを知っているのです」とムバレス夫人は詳述する。「ターリバーンは、科学を学ぶことが義務であることは知っているのです。しかし、その政治的見解が邪魔をして、宗教を自分たちの個人的な利益やビジネスを確保するための手段に矮小化し、悪行を続けるのです。そのため、さまざまな国際組織や国は声明を発したり助言をする役割に甘んじず、外交的な圧力をかけることがより効果的だと私は考えています 」と述べた。彼女によると、各機関のキャンペーンや宣言、ツイートは国民への注意喚起にはなるが、その影響力はターリバーンを変えるには十分ではないのだ。

一方、女性の権利活動家や市民たちの多くは、イスラム協力機構のこの決定を歓迎し、実のあるものだと称している。女性の権利活動家のひとりであるナウイダ・クルサニ(Nawida Khurasani)は、ハシュテ・スブに対し、「ターリバーンがイスラームを権威と考えていながら、自らの政治的利益のために反イスラーム的行動をとっていると仮定すれば、次に私たちが支持し歓迎するのは、ターリバーンの非イスラーム的行動を抑止するためにイスラム協力機構がこれからとる行動です」と述べた。

カーブル在住のファテマ(Fatema)も詳しく語った。「ターリバーンの女性差別的な行動は、女性の生活を困難にしています。ターリバーンはいつもイスラームを守るといって女性の排除を狙ってきました。」さらに付け加えた、「もしイスラム協力機構がターリバーンに対して行動を起こせば、ターリバーンの理不尽な言い訳を許す余地はなくなります。イスラム協力機構が動けば女性が再び権利を得る希望が膨らみます」と。

この16ヶ月の間に、ターリバーンは女性に対して数々の厳しい制限を課してきた。カーブルにターリバーンが戻ってきて3週間後、女性の権利活動家のグループが、女性の権利を守るためにカーブルとヘラートで抗議活動を行った。ターリバーンは抗議する群衆を空砲と催涙ガスで退散させ、デモを阻止した。その後もさまざまな女性グループが抗議行動を行ったが、ついにターリバーンはカーブルで数十人の女性抗議者を逮捕し拷問し、女性の抗議行動をさらに厳しいものにした。

ターリバーンの女性差別的な行動は、この2週間に出された新しい命令(訳注:2022年12月20日の大学教育からの排除に続き、同24日には女性がNGOで働くことを禁止した)にとどまらない。女性を内閣から排除することから、女性のスポーツ活動の禁止、女性従業員の自宅待機、女性のヒジャブ義務化、女性のマハラム(親族の成人男性)の同伴なき外出禁止、女子の教育禁止、女性の自動車教習禁止、テレビの女性出演者のヒジャブ着用義務化など、さまざまな命令が含まれている。

さらに、ターリバーンはこの1年半の間に、女性が公衆浴場、美容院、公共の公園に行くことを禁止している。これらの制限を課したことで、市民や政治家、国際社会から反発を受けたが、ターリバーンはこれらの反応にまったく関心を示していない。女性の大学教育の禁止、NGO(非政府機関)での女性の仕事の停止などは、直近のターリバーンによる女性に対する新しい制限であり、強い反発を引き起こしている。

エジプトのアル・アズハル大学も、ターリバーンが女子学生に大学の門戸を閉ざすことは「イスラームのシャリアに反する」と声明を発した。

ターリバーンは、国際社会が認める人間の価値とは何たるかや、イスラームの原則がそれをどう解釈していようかなど意に介さない。ただ首領であるムッラーが発する命令に従うだけなのだ。

 

訳語注1:本稿では、原文の「 Taliban’s misogynistic actions」を「ターリバーンの女性差別(行為)」と訳した。英語表記「misogynistic」は「女性に対する憎悪または嫌悪」を示す単語でインドからアフガニスタンにかけた西南アジアに古くから存在する女性差別・抑圧のベースとなる感情に由来した単語である。もともとの「misogyny」は、「差別」を表す英語「discrimination」では表現しきれない残虐さを内包している。ハシュテ・スブが「discrimination」でなく「misogynistic」の英単語を使用している背景には、ターリバーンの女性蔑視政策が、イスラームに基礎を置くものでなく、西南アジア特有の女性蔑視「misogyny」に基礎を置く差別政策・行為である、との認識(意識的に区別しようとする意図)があるものと思われる。しかし本稿では「misogyny」を感情的ベースとしながら行われる「差別・抑圧」の「行為・政策」の意味で、「女性差別」の訳語で統一した。
訳語注2:当『ウエッブ・アフガン』ではできるだけ原音に近い表記を心掛けている。例えば「タリバン ⇒ ターリバーン」、「カブール ⇒ カーブル」に関してはほぼ統一して使用している(ただし引用の場合を除く)。しかし、「イスラム、イスラーム」「シャリア、シャリーア」「コーラン、コラーン、クルアーン」などは長母音や異表現を混在させている。その理由は、新聞用語や慣用例として短縮語が好まれ、一般化している現実があり、当『ウエッブ・アフガン』ではまだ立場を決め切れていないからである。ただし、ネットメディアである当サイトとしては文字数制限の制約が少ないのでできるだけ原音に近い表記に近づける努力をしている。
(ただしこの問題はやっかいな課題であり、最近では、ウクライナが現地語表記を強く要望したためキエフ ⇒ キーフ、ハリコフ ⇒ ハリキュー、オデッサ ⇒ オデーサなどに公式な表記変更が行われた。さらに、昨年6月、トルコは国連に対して国名表記を「Turkey(ターキー)」から「Türkiye(テュルキエ)」に変更するよう要請したが、日本には従来の「トルコ」表記でもよいとしている。在日大使館は従来通り「駐日トルコ共和国大使館」としている。

原文(英語)を読む

 

 

 

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