<ウエッブ・カンファレンス>
教育、労働、自由
アフガニスタンの女性と少女のために私たちには何ができるのか
(WAJ; カナダ大学女性連盟(GWI)とオタワ・クラブは、2023年1月25日午後8時(中央ヨーロッパ時間、日本時間26日午前4時)より、「教育、仕事、自由。アフガニスタンの女性と少女のために私たちにできること」と題したウエッブセミナーを開催しました。ここには、勇敢で長年のアフガニスタン女性の権利活動家であり、アフガニスタン議会の元議員、初の女性副議長であるファウジア・クーフィさんがゲストスピーカーとして招かれました。『ウエッブ・アフガン』からは野口と金子が参加しました。以下は、主催者であるGWIのセミナー趣旨説明と当日の再現です。講演内容の書き起こしと翻訳は金子が行いました。当時の参加者としての感想は「編集室から」の金子つぶやきをご覧ください。)
<主催者(カナダ大学女性連盟)のあいさつ>
ファウジア・クーフィ氏は、アフガニスタンとターリバーンの和平交渉チーム42人のうち、4人の女性のひとりでした。 2021年のカーブル陥落で、彼女は自宅軟禁され、身の危険を感じるようになりました。 2児の母である彼女は、娘たちのことを最も心配し、数カ月以内に戻ってくると信じて国を離れる以外に方法がないと思ったそうです。
今回のファウジアさんのお話は、アフガニスタンの女性や少女にとってますます困難な状況にある、ターリバーンの強権的な布告、少女や女性の教育の撤回だけでなく、働く権利や家を出る自由さえも否定されたことに焦点が当てられます。このウェビナーでは、次のような問いを考えていきます。「自分たちのコミュニティーで、自分たちの政府とともに、そして国内外を問わず互いに協力して、変化をもたらすにはどうしたらよいのか」という問いについて考えます。 アフガニスタンの声を聞き、アクションのためのアイデアを共有するために、基調報告のあとにひらかれる分科会にご参加ください。
基調演説
ハリーさん(訳注:「国際大卒女性」=GWI内に「アフガン女性を援助する大学女性」= UWHAWを立ち上げたハリー・シドンズ)、ご紹介くださり、ありがとうございます。おはよう、こんばんわ、こんにちわ、私の全姉妹と友人の皆さん。この機会をありがとう。
私がアフガニスタンの状況について語るとき、皆さんの全てがまず思い起こすのは、ターリバーンが乗っ取ったこの1年程のことで、特に去年の3月、学校の戸口から追い出され家に戻された幼い少女の姿が、最初に皆さんの心に浮かぶことでしょう。そして明白なのは、ターリバーンのやり口の厳しさで、それを印象づけたのはカーブルの路上で抗議する女性たちを残忍にも押さえつけた重機関銃の姿でした。
暴力に屈しない女性たちの誇り、粘り、強さ
と同時におそらくわれわれの目に焼き付いたのは、彼らの抑圧的手法に対して断固抗議するアフガニスタンの女性の姿でした。そこには彼女たちの奮闘、粘り、力が見て取れました。ですから、アフガニスタンの女性が伝えた姿は、憐れなアフガニスタンの女性像ではなく、そう、彼女たちの基本的・根本的権利を求める誇り、さらには粘り、そして力強さでした。ひとたびその権利を手に入れれば、彼女自身のみならず、国全体の誇りとなります。
また、われわれが度々話すのは、アフガニスタンの女性にのしかかっている大規模な抑圧についてです。しかし女性の労働や、少女の教育を阻害しているのはターリバーンばかりではありません。この2つは、女性の権利に対する世界中にはびこる大問題です。人権への21世紀における大侵害です。そんな中、ターリバーンは既に35もの命令と通達を出して公の場から、つまり社会的かつ経済的な分野から、女性の権利を消し去ってしまいました。
ターリバーンの最大の敵は女性の自由と権利
さて、2021年8月15日にターリバーンは権力を握りました。以来支配した15か月と少しの間に、彼らは35もの通達を発したのです。つまり毎月2つずつ通達を出し、女性の権利を消し去ったのです。
いまの時代、3千5百万もの国民が貧困に苦しみ飢餓に瀕しているという国家を想像できますか? その上、いまだに不安定な国家です。これまでに幾度もカーブルで教育機関を狙った爆破テロがあり、少数民族も狙われています。標的暗殺も数知れず起こり、ターリバーンによる強制監禁、市民の不法殺害、また国民の強制移住も頻繁です。
しかし、ターリバーンが焦点を合わせている大問題は、これらではありません。ターリバーンが挑むもっとも大きい敵が、女性の自由と権利です。だから月に2つの通達を出し、女性の権利を消し去ったのです。つまり彼らによるアフガニスタンの女性に対する明らかな宣戦布告です。
こんな状況は誰もが許せません。特にモスレム諸国、その指導者たちには痛恨事です。ターリバーンが勝手にイスラームを曲解して、われわれの文化にも宗教にも全く相容れない悪行を、これぞモスレムだと言いつのっているからです。彼らの目指す行動は、宗教にも文化にもそぐわないのです。
1か月と3日前にあたる2022年12月21日に出した通達が直近のものですが、それについては多くのモスレム諸国が声を上げました。彼らは言いました、これはイスラームに反する、ターリバーンは即刻改めよと。
さて、ターリバーンがこうした行動を取るのはなぜでしょう? ターリバーンと交渉した経験から語ってみます。私はターリバーンと2年間交渉していました(訳注:クーフィはドーハ会談の出席者の1人でもあった)。彼らを感化できると思っていました。もうアフガニスタンは変わったと彼らに伝えられると思っていました。1996年から2001年までの第1次政権の頃と同じアフガニスタンではないのだと。世代はすっかり入れ替わったと。メディアのおかげで、そう、外の世界とアフガニスタンの国民が手を組んだおかげで。もはや、完全にアフガニスタンの国民は世代交代したのだと。
そして、その世代交代の主要部分が女性たちでした。ですから、もしターリバーンが本当に政治的に生き残りたいなら、新生アフガニスタンの基盤を受け入れねばなりません。これが私の彼らに伝えたかったメッセージです。そして彼らに理解させようとしました、もし人権を踏みにじり国民を抑圧するなら、国民はこぞって外の世界に訴え、抵抗するでしょうと。そして、このことがまさに今起きているのです。
しかし、当時ターリバーンは上手な作り話をこしらえ、もはや自らは変わったと訴えました。ターリバーン2.0だと。女性の権利を認め、人権も擁護すると。女性が政治や教育に参加するのを許すと。実際、思い起こすと、彼らは私たちと会談中、そこには私の姉の1人もいましたが、確かにそう言いました。モスクワの会議室で60人ほどの前での話です(訳注:2019年2月、モスクワでアフガン政治家とターリバーン代表が会談した)。彼らははっきりと言いました。もう時代は変わった、女性が外相や首相にまでなれると。そして女性もPHDが取れるほど高い教育を受けられると。
これは全て記録されており、アフガニスタンの国民はターリバーンが述べたこうした見解を見返すことができます。それが、正反対なことに、権力を握ると、彼らは最初の通達を2021年9月17日に出しました。少女たちが中学校に通うのを禁止すると。
ターリバーンの狙いは国民への恐怖の植え付け
では、彼らはなぜこんなことをするのでしょう。とても単純なことだと思います。ターリバーンの権力の仕組みは、彼らがアフガニスタンをかく支配したいと欲する方法は、国民への恐怖の植え付け、抑圧の植え付けに根ざしているのです。その植え付けを彼らは宗教と称しています。
もしアフガン女性が教育されたら、まず第1にその子を、男の子でも女の子でも、過激派の大物や兵士にはしないことを彼らは知っているのです。第2に、教育を受けたアフガニスタンの女性は必ずターリバーンの独裁的・思想的支配に抗うからです。そして、今まさにアフガニスタンの女性は抗っています。そして、すべてにおいて明らかに、ターリバーンの支配は男性社会の極端な悪形態です。彼らは女性が力を増すと、自分が弱まると信じています。だから古き因習にこだわり、宗教を持ち出すのです。しかし現実には、それは単純な権力の問題です。その証拠に、ターリバーンのやり方は世界のどこに行こうが特別です。ほかのモスレム諸国にも見られません。彼らは勝手にイスラームを解釈し、それを押しつけるのですが、多くの場合、イスラームとは相容れないのです。
さて、今のターリバーンは明らかに分裂中です。分派化されつくしました。その原因は思想の相違ではありません。産声を上げた第1日から、思想のために戦ったことなどありません。権力闘争でした。ところが、その権力を求めて再び分裂したのです。つまり、カンダハルの指導者集団がまず1つ。残り、カーブルにはターリバーンの別働隊がいます。その閣僚たちは公式な立場を保持し、国際社会から賓客が来ると、その訪問期間中だけは、彼らに甘言をたれます。
たとえば、国連副総長アミナ・モハメッドが率いた前回の使節が訪問したときには(訳注:2022年12月末、アフガニスタンに4日間滞在し、女性の権利の制限に対し苦言を述べた)、カーブルとカンダハル、別個に訪れましたが、どちらも国際社会の扱いは手慣れたもので、いいことばかり言います。国際社会が聞きたいことを言うのです。
でも実情は、権力を持つ意思決定者は指導者たる首長(訳注:ハイバトゥラー・アクンザダ)のみです。彼にイスラームの本当の知識があるとは思いません。アフガニスタンの理解も怪しく思います。彼の視点は抑圧のみで、自分以外の社会を抑圧することで運動の一貫性を保とうとしています。それは女性の抑圧のみならず、全社会の抑圧に繋がります。
女性の抑圧は世界安全保障への脅威
さて、今危険にさらされていることがらを話しましょう。私はアフガニスタン中で学校を支援してきています。全国に200人ほどの学生がいます。こうした学校には100人以上の女性の教員がおり、国内で他の人道支援活動も掛け持ちしています。
禁止令によって、われわれの学校も閉ざされました。女性教員はもう職場に来ません。私が毎朝起きると受け取るメールは、学生たちからのものや、家族からのものもありますが、こうした教員たちのものは特に抑圧のひどさを訴え、失望の程を伝えてきます。よりよきアフガニスタンと自らの人生を目指した彼女たちの希望や夢が粉々にされたと伝えてきます。
こうしたメールは開いて読むだけで勇気が必要です。こうしたメールはたいてい涙の絵文字で悲しみを訴えます。国を照らそうとした女性たち、医者や芸術家や教師になろうとした者、政治の世界やジャーナリストを目指した者、大きな夢をなくしてしまった女性たちが伝える心を砕く物語です。
女性たちは夢を叶えられることを既に証明していました。それがこの20年の成果です。教育の分野のみならず、多方面で成功を収め、アフガニスタンの女性たちは誇りに満ちていました。スポーツの分野でも、芸術の分野でも。彼女たちの活躍をわれわれの国は誇りに思いました。
今、彼女たちの希望は粉々になりました。そのリスクは何でしょう?またしても、そのリスクはアフガニスタンとその国民に限られたものではありません。ターリバーンは自分たちがダーイッシュ、つまりイスラム国と戦い、打ち勝てる唯一の集団であると力説していますが、私は信じません。それは世界を信用させ、自らをパートナーと見なして欲しいが故に彼らがこしらえたお話でしょう。
ターリバーンが国民を抑圧すればするほど、国民はあきれてイスラム国に登録すると私は確信しています。より困難な道を選び、より多くがイスラム国に加わり、他の軍事組織にもより多くが加わります。それは世界の安全保障にとってゆゆしき事態となりかねません。
だからこの女性の権利の状況を見るにあたり、われわれは、アフガニスタンにおける女性の問題のみならず、世界の安全保障の問題でもあると捉えています。だからアフガニスタンの女性と共に立ち上がりましょう。アフガニスタンの国民と共に。ターリバーンを追い詰め、圧力をかけましょう。そうすれば、彼女たちは今のアフガニスタンにおける自らへの抑圧的手法を逆手にとって戦えるのです。
今後、世界の安全保障がアフガニスタンを起因として脅かされるでしょう。ターリバーンの勝利がアフガニスタンやパキスタンや中央アジアで活動する多くの他の過激派軍事組織を勇気づけたからです。そうです。あなたの今の場所、多分カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアでしょうか。そこから見るとアフガニスタンは、はるかな中央アジアにある小さな不安定な小国ですよね。だから、アフガニスタンの状況であなたの状況が左右されることなどない? もしそのように考え続けるなら、われわれはターリバーンの言いなりです。
アフガンの現状はジェンダー・アパルトヘイト
われわれはアフガニスタンの女性の状況を本当に性差によるアパルトヘイトと捉えねばならないと思います。あらゆる手段を駆使した性差によるアパルトヘイトです。ターリバーンを捕らえ、人道に対する犯罪を犯した責任を取らせねばなりません。その行動を咎め、制裁せねばなりません。ターリバーンの取引先や支援者も制裁せねばなりません。
そして、ターリバーンに対してこそ移動の制限を加えねばなりません。彼らはアフガニスタンの女性が家を出ることを許しません。ならばなぜ自らは西洋諸国の首都へプライベートジェットで右や左と旅ができるのでしょうか? 今こそ、特に世界中の女性が、もちろんよい心を持つすべての人たちが、団結して立ち上がり、アフガニスタンの女性に意味のある支援をするときです。そして、ターリバーンに圧力をかけ、世界がアフガニスタンの国民と、アフガニスタンの女性と共にいて、性差によるアパルトヘイトをよしとする政権とは共にいないことを理解させねばならないのです。
ありがとうございました。
質疑応答(質問者はUWHAWのフラン・ハーディング)
<質問>
ターリバーンの分派には、より穏健な一派がいますか? もしそうであれば、国連や各国政府やNGOが彼らと接触するのはどうでしょう?
<回答>
フランありがとう。ひとつずつ答えますね。先ほど述べたように、確かに穏健派はいます。われわれもそこを衝きたいと思っています。うまくすればターリバーンを変えられるかもと。今後分派は増え、ターリバーンも大変でしょう。ただし、意見の相違はイデオロギー的なものではありません。イデオロギーと分派の原因は無関係です。権力と資源を争っているのです。
たとえば、カーブル入城の際、私はカーブルにいましたが、ハッカーニに率いられた軍事グループがいました。第1期のターリバーン政権を牛耳った連中です。ちなみに彼は今、内務相ですが、自爆テロ部隊を組織したのも彼です。
さて、彼らが入城したとき、ハッカーニは出遅れてしまい、うまく権力につけませんでした、そこで権威を示そうと、女性の蔑視を促したのです。女性は不幸にも御し易き獲物で、デモ以外にターリバーンに抗う手段を持たなかったからです。そのデモは今も続いていますが。そういう訳で、彼らは女性を標的にするのです。
さて、国際社会がいわゆるターリバーン2.0をより柔和で、穏健な者たちと見なして付き合うかどうかについてですが。
実は穏健派などいないと個人的に思います。ターリバーンは1つです。やり方が違うだけです。国際社会がこれまで相手にしてきたのはカーブルの閣僚たちですが、確かに副首相や他の閣僚の中には、女子教育を支持する見解を公にした者もいました。しかし彼らの力はゼロです。学校の変化を止められませんでした。学校を開かせ大学を開かせることはおろか、自らが君臨する省内に女性を招き入れることすらできません。他は知るべしです。
だから直ちにやるべきことはこれです。せめて今後5、6か月はターリバーンに圧力を加えることが本当に必要です。そうすれば、彼らは自らの行為が代償を伴うと感じ、もはや国際社会に頼って贅沢三昧ができないと悟り、国際社会が設ける制限の存在に気づくでしょう。そして彼らへの圧力を高めれば、やがて再びターリバーンはさらに分裂を招くと思います。そこがわれわれの目の付け所でしょう。うまく行けば、そこからターリバーンを変えられるのです。
<質問>
なるほど。ではそうした圧力はどう加えれば効果的だと思いますか?
<回答>
現時点で発表できる点はわずかしかありません。まず第1に、ターリバーンの最大の敵である女性に対し意味のある援助を差し伸べることです。女性が政治や社会生活に参加する足場となるべき理想的な空間がアフガニスタンにはありません。そこで事務所を立ち上げ、政治活動を促すべきです。さらに、その女性事務所は今ターリバーンを支援する国や領域に、またかつて支援した国にも作ってやる必要があります。女性が力を持ち、外の世界によって権限を認められたと知るや、ターリバーンは自らの権力が永遠ではなく、やがて滅び去ると気づくでしょう。彼らとて政治的解決を考えねばなりません。それが圧力によって彼らを政治的解決に導く手法です。これがまず第1点。
第2は先に述べたように、彼らの出自たる政治的身分や階級に関わらず、全員を国内に足留めすることです。その措置に例外は認めません。圧力をかけて、ターリバーンをアフガニスタンに閉じ込めるのです。
第3は、彼らの金の入手先です。ご存じですか? 子飼いの兵隊に払う給料をどうしているか? 私は最近になって、彼らがわれわれの天然資源に関する契約を取り結び、その一部を売ることにしたと知りました。相手は中国です。よくやった。では、天然資源を売ることで中国から得た金を、教師を雇うために、女生徒やアフガニスタンの全国民のために使えばいいじゃないですか?
やるべきことは一杯ありますよね。彼らは国際社会に働きかけ、人道支援を通してアフガニスタンの国民を食べさせようとしています。ところが、われわれの天然資源を通して得た収入は、子飼いの兵隊に使う。だから私は制裁すべきと思います。まずはターリバーンを、そして収入源を、さらに献金者たちを。それも意味のある制裁を。
ところで、ターリバーンの事務所は国外にもあり、彼らの子息は中東やその周辺の大学に通っています。私の姉妹、私の学生たち、アフガニスタンの少女たちは毎日一所懸命勉強しても、その成果は遅遅として得がたいのに、ターリバーンの娘たちはなぜ最高の大学に通えるのでしょう? 私の個人的な疑問です。
やはりターリバーンの子息はそうした国々から追放され、アフガニスタンに戻るべきです。そうすればアフガニスタンにいる私の姉妹、われわれの娘たち、アフガニスタンの娘たちの苦痛を感じるでしょう。ありがとう。
<質問>
イランでは多くの男性が女性を支援しています。アフガニスタンでも女性のためにと高名な男性たちが個人的に立ち上がりました。でも、さらに多くの男性たちがリスクを越えてターリバーンに対して立ち上がると思いますか? 特に国際社会の反応はどうでしょう? また世界中に散らばったアフガン男性たちの出方、アフガン以外の世界の男性たちの考えについては?
<回答>
正しいご指摘です。そう。軍事独裁者が女性を抑圧する手法を取るのは、その支配を生きながらえさせるためだけです。試しに独裁者に経済プランなど、国民のためになるプランがあるのか聞いてみましょう。答えはゼロプランです。しかし、女性を押さえつける手段に目をやり尋ねると、長いリストが返されます。彼らには共通点が1つあります。彼ら全てにとって女性は敵なのです。だから、カーブルだろうが、テヘランだろうが、われわれは皆がターリバーンに対して立ち上がるのです。ターリバーンの顔は様々です。見た目も多様。でもみな同じターリバーンだと、私は言いたい。
さて両国を比較すると、まずもってわれわれはイランにおけるわれわれの姉妹、特に兄弟を誇りに思います。しかしながら、2つの違った文脈があることも忘れないで。イランでは少女の弾圧がきっかけでした。それと経済的状況は、アフガニスタンほど悪くありません。さて、アフガニスタンで男性がどう抗議したかですが、女性が大学から排除されたとき、主な抗議者に混じって男性も活動しました。そしてご存じのように、われわれの大学から多くの教授が辞職しました。その数は200人以上です。
彼らは今私にメールを送って来ます。彼らのメッセージです。実は今日私は1人の大学教授に100ドルほど送りました。彼は辞職して以来、収入源がないと言うのです。それでは家族を養えません。この寒く厳しいカーブルの冬に。
国民を苦しめるのは経済的な欠乏で、その原因はターリバーンでもあります。市民的で穏健な手法でも、反対の声を上げる個人はみな基本的に弾圧の標的とされます。女性を逮捕しているのはご存じでしょう。こうした抗議の形として辞職した男性教授を捕らえようとしています。彼らを追っているのです。こうした教授の逮捕状を大学に見せに来ます。だから実際、彼らも最大の弾圧を受けているのです。知っておいてください。
とはいえ当然ながら、男性たちの中には不幸にも困難な選択を迫られる者もいます。彼らは反ターリバーンの抵抗軍に加入しています。この事態が続けば、アフガニスタンでまた戦争開始です。そうなれば、最悪でしょう。今のところは、これまでわれわれが励まされてきたように、われわれの兄弟たちによる抗議行動を本当に励ましてきました。だから、争いも多く、辞職も多く、多数がかつてのやり方に抗っています。
さて、国外に逃れた人々はもっと活動的です。記事を書き、インタビューに応え、通りのデモに参加しています。イランで行われたほど大規模ではありませんが、それは2つの文脈の違いによるものです。でも目的は1つです。宗教を使ってただ国民を抑圧し、権力に居座る集団への抗議です。そして人々は常にそれに抗うと信じています。
<質問>
外国からの援助の配分を担っていた女性が追放されました。それによってアフガニスタンの国民はどんな影響を受けますか? 援助のみに頼らざるを得ない階層がおり、女性がいないと援助を届けられないのでしょうか?
<回答>
12月24日に出された女性を職場から追放する通達以来、当然女性職員は仕事を続けられなくなりました。そこで女性職員にのみ目が行きがちですが、NGOや国連のもと働いていた女性たちのことについてのみ、われわれが話しているのではないことを忘れないでください。問題はこうした人道支援を、女性職員越しに受け取っていた女性の受給者なのです。
去年私は私の別の姉妹たちと連れ立ち、国連のキャンペーンに参加しました。国連がアフガン援助をするにあたり、女性の職員を登用し働かせることを前提条件としてターリバーンに飲ませたのです。すると、援助配分の分野ではそれまで0%だった女性職員の割合が、結局30%にまで増えたのです。
確かに彼女たちが仕事と収入をなくし、この厳しい冬を過ごしているのは悲劇です。しかし彼女たちが報告してくるのです、自分が担当していた障害者たちが家に閉じ込められていると。障害を持つ児童がいて、その家は凍えていると。彼らの収入源は絶たれたと。
寄せてくるのは悲しい、痛々しい話ばかりです、ターリバーンはこうした女性労働者たちを通じて援助を受けていた女性や家族たちにこそ衝撃を与えたのです。30%の女性職員が人道援助で働いていたとばかり言っているのではありません。その援助を受けていた大多数のことを語っているのです。
個人的には今こそ、代表的国民として、私が決断すべきときだと思います。われわれはターリバーンに強い意思表示を見せねばならないと思います。ターリバーンが女性を職場に戻し、もといた国連やその他の人道的な仕事に復帰させない限り、しばらく人道支援を中止すると。
冬の厳しさは知っていますが、性差で差別する人道支援はサポートできません。妙な愛国的2重定義は嫌いですし、称賛などしません。多くの男性たちが言い訳としてこう言うのです、今は道を整備中だと。またこうも言い訳します、家族を代表する男性が援助を受ければ、女性もその恩恵に授かるではないかと。これは男性を利せんがために考案されたトンデモ思考です。援助を独り占めにし、女性の権利を無視するために。
だから思うに、働く女性たちのみならず、援助を受けていた家族も影響されるのです。私の事務所は国内6州にありますが、スタッフにはどんなリスクにもめげず仕事を続けなさいと励ましました。すると彼女たちは全員とは言いませんが、勇敢にも事務所に来ます。ターリバーンはそこが私の事務所だと知っているので、とても危険度が高い。それが私の事務所で、それがあるから、私の部下は私と働けるのです。
当然彼女たちは高いリスクにさらされます。でも彼女たちはターリバーンの決定に対する抗議の手段として事務所に通い続けるのです。
<質問>
われわれはターリバーンに圧力をかけ続けねばならないと、あなたは提案しました。どんな手法が彼らに対し有効でしょうか?どうにか彼らを変えさせるためのうまい話の進め方は何だと感じますか?
<回答>
うまい進め方は、別の道の提示です。別の道を探らないなら、つまりアフガニスタンで唯一の現実はターリバーンだと考えるなら、何も変わりません。そしてターリバーンも、彼らを変えようとする圧力の意味を決して理解しないでしょう。ところが、あなたがたは、ターリバーンにこの上なく贅沢な暮らしをさせています。それは本当です。なぜなら人道支援は元来、普通の人々のための措置でしたが、それがターリバーンの懐も潤わせているのです。彼らは援助の分配に携わる人々の名簿を持っており裏から操ります。本来ならアフガニスタンに注がれた援助は、教師や支援活動家、医師たちの給与に当てられるべきなのに。その上、ターリバーンは中国や周辺国と契約を締結し、その上前を全てはねています。ロシアとその関係諸国とも同様です。彼らは、その金で兵隊を雇うのです。
だから思うに、契約で儲けた今こそ、ターリバーンがその金を医師や教師を始め、その他アフガニスタンの国民のために使うことを考えるときです。兵隊に支払うのではなく。一方、彼らは知っておくべきです、人道支援の金も永遠に続くわけではないことを。
<クロージングコメント>
アフガニスタンにおける女性の問題や国全体の問題については、皆さん全てが聞き飽きていることと思います。多分もう20年以上も同じ事を耳にしたでしょう。でも今は全く別の時代です。物語の中心は今や女性たちです。1人1人の女性が、わが国の最新の歴史を作っています。20人だろうが50人だろうが、少数なのにもめげず、女性たちが通りに出てイデオロギー支配に異を唱えることは容易ではありません。安全に帰宅できないかもと覚悟しています。なのに続ける。それは自らの国と世界の安全のためです。だからこの試みの最後には、小さな希望の光がともっています。そしてわれわれ皆が、世界の安全を形作り、世界を繁栄させるよう頑張らねばならないのです。ありがとうございました。
【Fawzia Koofiの基調講演と質疑/英文書き起こしpdf(by 金子)】