Afghan Military Forces Collapse Due to Ghani’s Policies and U.S. Reliance, SIGAR Reports
ファヒム・アミン
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年3月2日
(WAJ: 「喧嘩過ぎての棒千切り」という言葉がある。SIGARのこの報告書のことかと驚く。『ウエッブ・アフガン』はターリバーン復権の数カ月前にプレオープンし、懸念の声を報じてきた。ファテー・サミ氏は、SIGARが喧嘩過ぎて1年半後に述べていることを、本サイトに執筆を始めた21年6月のガニー訪米時からすでに、すべてを暴露している(https://onl.sc/MC5H2vj)その後、ターリバーンへのカーブルの無血明け渡しの陰謀についても的確に事前に指摘していた(https://afghan.caravan.net/2021/08/18/conspiracy/)。当時のマスコミはこぞって、アフガン国軍がいかに弱いかを書き立てていたのである。すべては、アメリカとターリバーンの陰謀を覆い隠すための「陰謀」だったのではないかと疑うほどである。その後本サイトでは、アメリカは戦場ではターリバーンに負けていなかったとアサドラー・ケシュトマンド氏が書いている。(https://onl.sc/S7DCEHV)本サイト「アフガンの声」の発言をぜひ振り返ってお読みいただきたい。)
<本文>
20年間、国際社会はアフガニスタン共和国に資金と援助を提供してきたが、2021年8月15日にその構造は崩壊した。この出来事は、国内および国際的なレベルでの議論を促している。アフガニスタンのアシュラフ・ガニー(Mohammad Ashraf Ghani)前大統領と米国当局者は、ターリバーンの台頭と共和国の崩壊について互いに指弾し合っている。
米国のアフガニスタン特別査察官事務所(SIGAR)は最近、旧アフガン政府の軍事力の崩壊を招いた内外の要因を検証する調査結果を発表した。この報告書を読み解くと、アフガニスタンの軍事力を弱めた内的要因は、アフガニスタンの行政腐敗、民族差別、アフガン軍の最高司令官がもたらす軍の指揮系統の頻繁な変更、ガニーが国家の重要課題に焦点を当てなかったことだと分かる。またアフガン軍崩壊の外的要因に含まれるのは、外国軍への依存、そのパフォーマンスの低下、アフガン政府を代表する交渉団の要求を見過ごしたドーハ協定、アフガニスタンからの外国軍撤退、自国の政治問題に関して米国が政治的な透明性を欠いたことなどである。
参考:SIGARレポート(PDF)
https://www.sigar.mil/pdf/evaluations/SIGAR-23-16-IP.pdf
2月28日(火)、SIGARが発表した洞察に満ちた報告書「なぜアフガニスタンの治安部隊は崩壊したのか」から、まずその内的要因。
アフガニスタンの治安状況が悪化する中、ガニー前大統領は治安維持に関わる幹部を入れ替え、指令官のほとんどをパシュトゥーン人コミュニティ内、特にアフガニスタン東部出身のギルザイ族(訳注:ガニーが属する部族)から選んでいた。この悪あがきを、米国の特別査察官は「治安部門の政治化かつ(パシュトゥーン人を利する)民族化」と呼んでいる。それがターリバーンの激しい攻撃に直面したアフガン治安部隊の士気と戦力を弱めたことは、十分に信じられる。
特別査察官がインタビューした元アフガン政府関係者によると、アシュラフ・ガニーは、アメリカ合衆国とターリバーンの間でドーハ協定が調印された後は、アフガン軍に対し疑念を持っていた。ワシントンが自分を暴力的に叩きだすべく企んでいると信じたからだ。一説によると、ガニーは政権崩壊の前週に、米国の訓練を受けた軍の将校たちを、自分に忠実だと判断した共産主義者の将軍たちに入れ替えたばかりだったという。
ガニーの第一副大統領だったアムルラ・サレハ(Amrullah Saleh)によるミスリードも、本報告書で言及されている。アフガニスタンの元内務大臣がSIGARに伝えたところによると、ガニーは米軍が撤退を表明する4月14日の5日前にNDS(国家保安局)からその件を知らされたが、アムルラ・サレハは、それは米国の策略だから無視しろとガニーに伝えていたという。これは事実である。しかし、報告書の別の部分では、国会議員を含む多くのアメリカ政府代表がアシュラフ・ガニーと非公式に連絡を取っていることが述べられている。これにより、米軍のアフガニスタンからの兵力引き揚げに対するガニーの誤った認識が強められたとも察せられよう。
SIGARの調査結果によると、アシュラフ・ガニーとアブドラ・アブドラ(Abdullah Abdullah/訳注:ガニーの政敵で支持者は主にタジク人)の政治的対立がパシュトゥーン人とタジク人の緊張を悪化させた。それも国軍たるアフガン治安部隊を弱める要因の1つだったと思う。さらにSIGARは、2014年の大統領選挙後に政党が結束を失い、2つの異なるグループ(訳注:ガニー支持者とアブドラ支持者)に分かれたことを指摘した。この点もパシュトゥーン人と非パシュトゥーン人の間の競争の一環と見なして良いだろう。付言しておくと、6月に行われたこの選挙の結果発表は遅れに遅れ、独立選挙管理委員会が勝者をアシュラフ・ガニーとしたのは秋(訳注:2014年9月19日)のこと。アフガニスタンで最も物議を醸した大統領選挙のひとつである。
アフガニスタン復興特別査察官(SIGAR)のインタビューを受けた元政府高官は、アシュラフ・ガニーが重要で国家的な問題よりも、地域や小さな問題に気を取られていたと伝えた。元外務副大臣のヘクマト・カルザイ(Hekmat Karzai/訳注:元大統領ハーミド・カルザイの従兄弟)は、地方が次々とターリバーンに掌握される期に及んでも、ガニーは政府調達会議や都市計画会議に長時間を割いていたと語った。さらに、マスード・アンドラビ(Massoud Andrabi/訳注:ガニー政権下で内務相を務めた)は「ガニーのために死ぬ者はいない、国を略奪しにやってきた輩どものために死ぬ者はいない」とSIGARに語っている。
アフガン軍崩壊の外的要因
アフガン軍の崩壊は、ワシントンがアフガニスタンからの米軍兵士の撤退を決定したことに起因するとされている。SIGARの調査結果を読み解くと、米兵がゆるやかな撤退を始めた頃(訳注:最初の撤退は2020年3月)すでに、ターリバーンはアフガン軍に対して優位に立つ事が出来ていたようだ。ところが、ガニー大統領が自国の軍隊が米国の後方支援を必要としていることを認識したのは、陥落のわずか4カ月前だったとも言われている。過去20年間、アフガン政府は海外からの供給に頼ってきたのに、あきれた話だ。
SIGARは、アフガニスタンにおける米国の駐留に関する方針が透明でも明確でもなかったことを明らかにした。報告書の中で、ジェームズ・マティス将軍(訳注:2010〜13年は米中央軍長官、2017〜18年は米国防長官)は次のように述べている。「目的、方法、手段について政治的に不透明だった。翌年も再びここに来るのか、いつも悩んでいた。翌年も予算が付くのかと。攻撃するのか撤退するのか様子見か、決めかねていた。」
旧政権の軍司令官たちが、ドーハ協定はアフガン軍の士気に大きな影響を与えたと唱えているのは周知の事実だ。兵士の士気が下がりすぎて、生き残ることだけが目的になってしまったと。SIGARの報告書によると、米国とターリバーンが2020年2月29日にドーハ協定に署名した後、米軍はアフガン軍への支援を縮小した。さらに報告書には、米軍はターリバーンに対して2019年に7423回の空爆を行ったが、協定締結後の2020年には1631回に激減したと述べられている。
SIGARは、米国がアフガン政府の交渉チームの要求を聞き入れなかったと言う。つまりワシントンは前アフガン政府の要求を考慮せずにターリバーンと交渉を成立させたとの分析である。ガニー大統領はドーハ協定の詳細を知らされず、アフガニスタンに対する米国の戦略変更に気づかなかったと。アフガン軍の陸軍大将は特別査察官にこう語っている。「ドーハ協定がアフガン兵に与えた心理的影響は大きく、多くが見捨てられたと感じた。米兵側も何をなし、何をなさないか混乱した。ドーハの事務所にいるハリルザド(Khalilzad)大使と国務省の面々に、どこまでやっていいのか毎時間確認する始末だった。」
さらにSIGARは、米国によるアフガン軍の訓練法も問題だったと分析する。そのため彼らは独立して行動できなかった。様々な訓練課程を終えても、独立した軍隊としての能力レベルにはほど遠かった。SIGARは、この原因をワシントンとカーブル間の協力の欠如に求めている。
ドーハ協定に対する三者三様の評価
ガニー大統領が最終的にカーブルを脱出して、20年間、国際金融支援とNATOの軍事支援によって支えられてきたアフガニスタン共和国の体制が崩壊するに至った。テレビのインタビューやツイートの中で、ガニー氏は自分を擁護し、カーブルから逃げたのも「陰謀」だったと暗にほのめかした。靴を履き替えることすら許されぬまま官邸から引き出されたことを強調した。カーブルを離れる前政権の最後の高官たる覚悟があったのにと。挙げ句に、彼の仲間たちは、大統領が命を惜しんでアフガニスタンを脱出したという主張を信じないよう、人々に忠告した。大統領氏によると、アメリカ合衆国とターリバーンが結んだドーハ協定が、彼の政府を崩壊させた大きな要因だと言う。また、アメリカは自分に対して不誠実であったとも述べている。
アシュラフ・ガニーがアフガニスタンを去ってから、ドーハ協定の条項は実行されていない。これはザルメイ・ハリルザド(Zalmai Khalilzad)の言い分である。彼こそが米国務省、アフガン政府、ターリバーン指導者の間の調停役を務めた元アメリカ合衆国アフガニスタン問題特別代表である。ハリルザド氏は、ドーハ協定を「アフガニスタンの困難を解決するための理想的な枠組み」と自画自賛している。
1年半以上にわたってアフガニスタンを支配してきたターリバーンは、米国がドーハ協定の条件をまだ履行していないと主張している。締結2周年を迎え、カタール在住のターリバーン政治局員であるスハイル・シャヒーン(Suhail Shaheen)は、この協定はアフガニスタンの歴史の転換点となり、将来の世代はその恩恵を記憶するだろう、とコメントした。さらに、ターリバーンが制裁を受けてもいないのに、現政権が承認されていないことを指摘した。また、合意の他の条項にも言及し、ターリバーン集団の指導者の名前を国連の「ブラックリスト」から削除すること、米国の懸賞金リストを廃止すること、せめてリストから自分たちの名前を削除することを求めた。米国はこれに注意を払うべきだと強調し、これらの措置を実施しないことはドーハ協定の本質に反すると述べた。
Afghan Military Forces Collapse Due to Ghani’s Policies and U.S. Reliance, SIGAR Reports
[…] 今号ではターリバーンをめぐる情報を4本集めた。 ・インドのデオバンド主義者はなぜ女子教育の禁止に沈黙するのか ・パキスタンのターリバーンTTPが無敵である理由 ・TTPは政府をカイバル・パクトゥンクワ州から追い出してシャリーアを確立したがっている (「トピックス、2023年3月1日<DAWN>」) ・SIGAR報告書:アフガン軍の崩壊はガニーの政策と米国への依存が原因 […]