International Community’s Concerns Over ISIS Expansion in Afghanistan Under Taliban Rule

Hasht-E-Subh Daily Last updated Mar 21, 2023
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年3月21日

By: Amin Kawa
アミン・カワ

 

 (WAJ: ターリバーンは国内のIS系テログループの活動を否定しているが、この論考で取り上げられているものだけでも重大案件が目白押しである。米中央軍長官の発言は多分に予算獲得のための地ならし発言のきらいもあるが、テログループの復権がターリバーン支配下で進行していることは間違いない。この論考では触れられていないが、パキスタンではパキスタン・ターリバーンのテロ攻撃が増えており、アフガニスタンがその拠点化しているとしてパキスタンがターリバーンに苦情を申し立てている。依然としてアフガニスタン及び周辺地域でのテロの危険性は去っていないし、国際化する懸念も再燃している。)

2021年8月15日にターリバーンがアフガニスタンの支配権を取り戻す前、ISIS(イスラム国)は軍隊、軍備、イデオロギーの面で他の国際的および地域的な過激派グループと長年のつながりを持っていた。外国軍や旧アフガン政府の軍隊との戦いの中で、これらの戦闘部隊に属する数千人のメンバーは、他の過激派グループのメンバーと協力して戦った。ターリバーンが政権を奪取した後、ISIS、アル=カーイダ、その他のテログループのメンバー数百人が、旧政権の拘置所から解放された。国民抵抗戦線(NRF)をはじめとする反ターリバーンの政治団体は、ターリバーンがアフガニスタンを国際的および地域的なテロリスト集団の構成員のための安全な避難所にしていると以前から警告していた。

米中央軍(CENTCOM)長官の最近の発言によると、アフガニスタンのISISは、あと6カ月で海外攻撃を行えるようになるという。ターリバーンがアフガニスタンにおけるISISの存在を否定しているにもかかわらず、イスラム国ホーラサーン州(ISKP)の構成員は、過去2年間、暴力的で破壊的な作戦を展開してきた。最近の事件としては、ターリバーンのバルフ州知事ダーウード・ムザメル(Dawood Muzamel)の暗殺、マザーリシャリフ市でのジャーナリスト集団への攻撃などがあり、いずれもダーイシュ(訳注:イスラム国の別名)によるものと主張されている。

米中央軍(CENTCOM)長官のマイケル・クリラ将軍は16日(木)、米上院の軍事委員会で、アフガニスタンのISISがまもなく海外攻撃を開始できるようになると述べた。彼は、「ISISは、事前の警告なしに、6カ月以内に米国や西側諸国に対する国外活動を開始することができる 」と強調した。

参考記事
https://www.stripes.com/theaters/us/2023-03-16/centcom-kurilla-isis-afghanistan-attacks-9514063.html

フォックス・ニュースの報道によると、さらに将軍は、米国がアフガニスタンを離れてからは過激グループに対して1回しか攻撃していない(訳注:昨年7月のアイマン・アル=ザワヒリ暗殺)と米上院議員たちに指摘した。但し、ISISが米国を直接標的とすることは、さすがにとても困難だと予測し、その根拠は後ほど極秘会議で伝えると述べた。加えて、ISIS対策としてのオーバーザホライゾン作戦(訳注:ドローンなどによる遠隔攻撃)のための追加資金を要求した。

参考記事
https://www.foxnews.com/politics/isis-terrorists-afghanistan-conduct-external-attacks-us-6-months-us-commander

クリラ将軍の証言に先立って、2月に米国情報機関が出した「年次脅威報告」にはISISの危険性が記されている。しかしジョー・バイデン大統領は、アル=ザワヒリの暗殺を受けて昨年8月1日に「彼がいなくなり、アフガニスタンがテロリストの避難場所となることは無くなった」と宣言するなど、かなり楽観的である。

参考サイト:年次脅威報告(2023年2月6日)
https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/ATA-2023-Unclassified-Report.pdf

バイデン発言
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2022/08/01/remarks-by-president-biden-on-a-successful-counterterrorism-operation-in-afghanistan/#:~:text=Now%20we%20have%20eliminated%20the,pad%20against%20the%20United%20States

 

アフガニスタン国民抵抗戦線の反応

このことは米軍の最高司令官がアフガニスタンにおけるISISの動き出しに警告を発した形でショッキングではあるが、ターリバーンの支配に反対する政治家や関係者にとってはそうでもない。これまでにもターリバーンの保護の下で活動する過激派グループの成長について何度も警告を発してきたからだ。反ターリバーン派は、ターリバーンが政権を維持すれば、アフガニスタンがテロリストの安全な避難所になると主張している。中でも国民抵抗戦線はターリバーンとISISの両方を世界と地域の安全保障に対する脅威とみなして、ターリバーンとの戦闘に積極的に取り組んでいる。

アフガニスタン国民抵抗戦線のスポークスマンであるシブガトゥラ・アフマディ(Sibghatullah Ahmadi )は、ハシュテ・スブに「ISIS、ターリバーン、その他のテロ集団は、人々の生活に制限を加えるという点では同じコインの裏表であり、世界に真の危険をもたらしている。ターリバーンは、ISISという形で現れている狂信の主要な扇動者である。しかし、このテロ組織が持つかかる正体は、いくつかの国がターリバーンとつながっているために隠されてきた」と主張している。

アフマディ氏は、アフガニスタンのすべてのテロ組織は、海外で活動する能力を獲得していると主張した。さらに、これらの組織がターリバーンと共有しているのは、訓練施設、強力な武器や軍装品の入手経路、武器の携行能力、意思決定力、そして国際テロを実行するための専門知識であると述べた。

アフマディ氏によると、共和国政権がアフガニスタンで確たる地位を目指した当時、ISISは覇気も無く落ちぶれていたが、ターリバーンの支配下で再浮上することを保証されたという。さらに、彼は、「異なるアイデンティティを持つテロ組織がアフガニスタンでは協力かつ連携している」と指摘した。

国民抵抗戦線のスポークスマンはさらに、「ターリバーンの指導者の大半は、アブ・バクル・アル=バグダーディー(訳注:ISISの最高指導者。2019年、米軍特殊部隊によりシリア北西部で殺害された)の考えや手法に賛同している。これらの組織はすべて、現代社会の価値観に反したイデオロギーを持っている。ISISや他の類似のグループは、ターリバーンの支援を受けてアフガニスタンで繁栄しており、ターリバーンはこのことを利用して国際社会に対して戦争を仕掛けているのだ」と述べた。

 

ターリバーンの支配とISISの襲撃

ターリバーンがアフガニスタンを占領している間に、ISISの一派、イスラム国ホーラサーン州(ISKP)は、一連の自爆テロを行い数百人の死者を出した。ISISによるとされる主な攻撃地点を列挙すると、人々が避難する最中のカーブル空港、クンドゥズ・カーブル・カンダハールの都市部にあるモスク、ターリバーンの外務省庁舎、カーブルのパキスタン大使館とロシア大使館、そして中国のゲストハウスで、どこも少なくともこの2年間ターリバーンが支配した場所だ。またターリバーンが支配する以前から、ISISはしばしばテロ攻撃に関与し、多数のアフガン人の死者を出していた。旧共和国政権時代のアフガニスタンにおけるISISの自爆攻撃の事例として最も広く知られているのは、カーブル市の西部にあるホテルへの攻撃で結婚式の最中だった。

 

アフガニスタンでISISによる攻撃が続く

ISISは、3月12日(日)、バルフ州の州都マザーリシャリフにあるテビヤン文化センターを攻撃したと報じられた。ジャーナリストを称える式典中に爆発が発生し、2名の死亡者と30名以上の負傷者が出た。一方ターリバーンによるとテビヤン文化センターの警備員1名が死亡、子供3名を含む8名が負傷したという。

参考記事
https://www.agenzianova.com/en/news/attack-in-afghanistan-hit-an-iranian-cultural-center-in-mazar-e-sharif-30-injured/

 

3月9日(木)には、ターリバーンのバルフ州知事で、アフガニスタン東部の最高司令官の一人であるダーウード・ムザメル(Dawood Muzamel/訳注:バルフ州知事になる前はナンガルハール州知事でISISへの攻撃を指揮していた)が事務所で自爆テロにより暗殺された。これはISISのニュース配信サイトAmaqが発表したもので、ISISの自爆テロ隊の一人であるアブドルハク・ホラサーニ(Abdulhaq Khorasani)がこの暗殺に関わったと報じている。

参考記事
https://www.aljazeera.com/news/2023/3/9/taliban-governor-of-afghanistan-province-killed-in-suicide-attack

同じ3月9日、ISISはニュースレターを発表し、ヘラート水道局の職員を輸送する車両への攻撃を認めた。この攻撃の結果、水道局長を含む3人が死亡し、4人が負傷した。

1月11日(水)、ISISは、カーブルのターリバーン外務省前で発生した、40人が負傷、21人が死亡した自爆テロ事件の犯行を主張した。さらに、ISISグループは、カーブルのターリバーン軍事施設前で発生した、50人のターリバーンメンバーが負傷または死亡した自爆テロについても犯行を主張した。

参考記事
https://www.aljazeera.com/news/2023/1/11/explosion-outside-afghan-foreign-ministry-in-kabul

昨年12月26日(月)、ISISは、バダフシャーン州のターリバーン治安司令官であるマウラウィ・アブドゥル・ハック・オマル( Mawlawi Abdul Haq Omar)が死亡した爆破事件の犯行を主張した。しかし、バダフシャーン州のある信頼できる情報源は、マウラウィ・アブドゥル・ハック・オマルはターリバーン内部の不和のために殺されたとハシュテ・スブに語っている。

カーブルにある中国のゲストハウスもISISのテロ攻撃の標的だったと思われる。12月12日(月)、ISISは、中国人が宿泊するゲストハウスを攻撃した。ISISのニュースレターは、この攻撃で30人が死亡したと発表したが、カーブルの救急病院は、3人が死亡し、負傷した18人を病院に収容したと報告した。

12月4日(日)、ISISの本流「イラクとシリアのイスラム国」は、カーブルのパキスタン大使館襲撃につき犯行声明を発表した。ニュースレターには、パキスタン大使の警護を狙ったことが記載されていた。このグループは、1年以上前から、ターリバーンが支配する様々な民間組織や機関を標的にしている。

10月29日(土)には、ヘラートのアルファルーク地区の複数のターリバーン職員を襲撃し5人の死者と18人の負傷者を出したが、その映像はISISによって公開された。ターリバーンとISISの対立関係から、ISISは時折、ターリバーンの有力メンバーを標的にしている。昨年8月11日(木)にターリバーンの幹部の一人であるマウラウィ・ラヒムッラー・ハッカーニ(Mawlawi Rahimullah Haqqani)が殺されたことは、その証明である。

参考記事
https://www.business-standard.com/article/international/taliban-cleric-sheikh-rahimullah-haqqani-killed-in-blast-in-kabul-122081101333_1.html

過去19カ月間、ISISはアフガニスタンで、モスクや信徒を標的とした作戦を展開してきた。昨年6月18日(土)、カーブルのヒンズー教寺院が襲撃され、アフガン・ヒンズー教徒1名とターリバーンのメンバー1名が死亡し、その他7名が負傷した。

ISISはアフガニスタンの複数の州のモスクを標的とし、2021年10月8日にはクンドゥズのサイダバド・モスクが攻撃対象とされた。この攻撃により、シーア派の礼拝者約50人が死亡し、143人が負傷した。報告によると、死者数はターリバーンの統計が示すよりも多く、クンドゥズ州の住民の中には、この攻撃によって100人近くが死亡したと主張する者もいる。ISISはこの攻撃の犯行を主張し、自爆テロ犯を「モハメッド・ウイグリ(Mohammed Uighuri)」と認定した。

その1週間後、ISISは68人の死者と60人の負傷者を出した別の攻撃の犯行を主張した。現場はカンダハール州のシーア派イマーム・バルガ・モスクで、礼拝中に攻撃を受けた。ISISのニュースレターによると、2人のメンバーがモスクの警備員を射殺した後、礼拝者の間で爆弾を起爆させたという。

ハシュテ・スブの報告によると、昨年10月から12月にかけて、わずか2か月と7日の間に、アフガニスタンではISISの攻撃により96人が死亡している。その内訳はターリバーンが73人、民間人が23人で、さらに、21人のターリバーンと141人の民間人が負傷した。

特にカーブル西部のダシュト・エ・バーチ地区で多数の致命的な自爆攻撃が発生し、数百人の死傷者を出している。ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書によると、ISISは2021年8月から2022年8月にかけてハザラ人に対する13件の暴力的攻撃を認めており、最低700人の死傷者を出している。

ISISによると、カーブルのロシア大使館襲撃事件の実行犯はワカス・モハジェ(Waqas Mohajer)という名前だ。ISISは、アフガニスタンで多数の民間人の死傷者を出した他の暴力攻撃に関しても、その多くについて犯行を主張している。

参考記事
https://www.wionews.com/south-asia/islamic-state-khorasan-claims-responsibility-for-russian-embassy-suicide-attack-in-kabul-513283

 

諸外国から見たアフガニスタン内のISISに対する認識

ロシアの通信社TASSの報道によると、集団安全保障条約の統合参謀長であるアナトリー・シドロフは、アフガニスタンとタジキスタンの国境付近に4000人のISISメンバーが集まっていると明言している。さらに、アフガニスタンではすでに6500人のISIS戦闘員が活動しており、その大半が北東部のバダフシャーン州、タハール州、クンドゥズ州に再移動していると報告されている。さらに、ロシアのアフガニスタン特別代表であるザミール・カブロフは、今年1月20日(金)、ロシア24TV Stationのインタビューで、「アングロサクソン」がターリバーンの反対勢力つまりISISと接触し、密かに支援を提供していると述べている。

英国大使館の代理大使であるヒューゴ・ショーターはその任務完了報告にあたり、ISISのアフガニスタンにおける復活を警告し、アフガニスタンに潜むISISに対するロシア政府のアプローチにも注意を促した。2月11日(土)、彼は自身のツイッターでこの話題について述べた。これに先立つ2月6日(月)、米国国家情報会議は前述の「年次脅威報告」を発表した。それによるとアル=カーイダは大幅な再建が必要とされているものの、ISISつまりイスラム国ホーラサーン州は、ターリバーンと西側諸国にとって脅威となると予測している。

参考サイト
https://www.nationalresistance.org/en/press-and-media/news/news/202085.html

主要国の公式発表に加え、欧米のメディアはこぞってアフガニスタンにおけるISISの存在に関する記事を数多く発表している。例えば、ワシントン・ポスト紙は、テロ組織の活動を監視し、そうした情報を公表しているSITE Intelligence Agencyを引用して、ISISが2021年8月から2022年8月にかけてアフガニスタンで224件以上の大規模かつ致命的な攻撃を実施したと報じた。さらに、国連の「分析支援・制裁監視チーム」は昨年7月19日(火)、アル=カーイダやISISグループなど、アフガニスタンにおけるテロ集団の大規模な暴力行為を報告している。

同チームは、アル=カーイダとISISが、アフガニスタンの近隣諸国を標的にするために、他国から航空機やその他の高度な軍事装備の獲得を狙っていると主張している。アフガン国内でも、昨年6月1日(水)に発表された戦争平和研究所(IWPS/訳注:カーブルにあるNPOで軍事戦略と国防の研究機関)の声明によれば、その目的は彼らが国境を越えた攻撃能力を持つことを示し、ターリバーンの士気を下げることだと言う。

参考サイト:IWPSの報告書
https://iwps.org.af/wp-content/uploads/2022/07/RESEARCH-REPORT-MILITIAS.pdf

 

アフガニスタンを利用して他国を狙うISISの動き

ターリバーンはアフガニスタンの隣国であるウズベキスタンと強いつながりを持っている。ウズベキスタンはターリバーンの高官を集めた会議を主催しただけでなく、ターリバーンの司令官をしばしば迎え入れてきた。それにもかかわらず、アフガニスタンから発射されたロケット弾がウズベキスタンを襲った。最初は昨年4月18日(月)で、ISISがウズベキスタンの軍事施設をミサイル攻撃したと断言した。

一方、タジキスタン政府は、アフガニスタンにターリバーンが指導するテロリストがいることを以前から懸念していた。しかし、ターリバーンは、アフガニスタンから狙われる国はないと主張していた。そこへ昨年5月11日(水)、ISISは、系列の配信サイトAmaqを通じてビデオを公開し、アフガニスタンのタハール州からタジキスタンの軍事目標へ向けて発射されたミサイルの画像だと発表した。10発のカチューシャ・ロケットがウズベキスタンを対岸に眺める都市ハイラタンの工業地区「サレチャール」から発射されたのだ。

その後、7月5日(火)には、標的が再びウズベキスタンに戻り、サルカン・ダリヤ州のマジュノンタル地域に向けて5発のロケット弾が発射された。こうして共和国崩壊以後、アフガニスタンから発射されたミサイルで外国が攻撃されたのは、昨年4月(ウズベキスタン)5月(タジキスタン)7月(ウズベキスタン)と、合わせて3度に及んだ。

参考サイト
https://jamestown.org/program/rocket-attacks-on-tajikistan-and-uzbekistan-undermine-taliban-security-claims/

ターリバーンは、この事態を重視しISISを懲らしめて見せたが、それは米国や他の主要国からの信用を得るための策謀であると見るアナリストは多い。BBCペルシャの安全保障担当記者フランク・ガードナーもその1人で、イスラム国ホーラサーン州(ISKP)はターリバーンと密接な関係にあるハッカーニ・ネットワークと強いつながりを持っていると述べている。にもかかわらず、ターリバーンはアフガニスタンを完全に支配しておりISISは同国では活動していないと主張している。

原文(英語)を読む

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