Relevance of the Lying Shepherd Parable to the Taliban and ISIS in Afghanistan
By Hasht-E-Subh Daily Last updated Apr 9, 2023
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年4月9日
(WAJ: 2021年8月15日、米英NATO軍の最終撤退時にターリバーンがカーブルを占拠してもアフガン国内での戦闘やテロ攻撃はつづいている。その実情は本サイトの「トピックス」欄を見ていただければ一目瞭然である。しかしその戦闘やテロの意味や本質が世界から正しく理解されているとはいいがたい。つまり、国際社会はターリバーンを承認せず経済制裁をしていおり国民には支援が届かず悲惨な状況に置かれている、との認識が存在する。一見良心的な見立てのように見えるが、アフガニスタンへの人道支援はこの間続けられているしターリバーンが支配するアフガニスタン中央銀行には米ドルが毎週4000万ドル送金されている。それらの金はターリバーン一族の懐に入ってしまい苦しんでいる国民には届かないとの批判がアフガニスタンからは発せられている。しかしターリバーンはそれでも不足だと、アラブ系テログループを操り、集金活動をしているのである。本論説は短いがこのような現状とからくりを極めて明確に指摘している。)
ISIS(訳注:イラクとシリアで発生したアラブ系のイスラム過激派組織)とターリバーンの関係は誰に対しても複雑な問題となっており、それぞれが自分の政治的および経済的目的に従って解釈している。ターリバーンは世界の強国を欺かんがために、自分たちの第一目標はISISと戦うことであり、そうしなければISISがアフガニスタンを支配し、他の国にも広がっていくと主張する。ターリバーンの代表たちは外国に向けてISISの脅威を誇張し、自らの負の側面を隠し通す。さらに、欧米の一部の日和見主義的なグループは、地域紛争にかこつけてISISの脅威を利用し、各国を脅してターリバーンに金を貢がせ、危険に満ちた次の目標の実現を目指す。
ターリバーンがカーブルを掌握して以来これまで「ISISとの戦争」と称する衝突が起きてきたが、メディア報道や内部の観察者によれば、それは3つに分類することができる:
(1)確かにISISと認められるグループ対ターリバーンの戦争、
(2)旧政府軍兵士、旧ムジャヒディーン、国民抵抗戦線、自由戦士戦線、自由戦線など様々な抵抗勢力対、ターリバーンの戦争、
(3)権力中枢に潜り込み政府を牛耳りたいターリバーン各派閥間の内輪もめ。
ターリバーンのメディア弾圧により、衝突の件数を正確に把握することは難しいが、非公式な報告によると、反ターリバーン戦線への攻撃件数は、ISISからの攻撃件数を大きく上回っているといわれている。
ターリバーンは、国内で戦争や攻撃が起きると間髪入れずにISISのせいにするが、その行為の目指す所は様々である:
(1)ISISの危険性は非常に高いと見せかけ、世界からもっと多く金の提供を引き出す、
(2)ターリバーンの敵はISISのみと見せかけ、地域および世界の各国がアフガン国内の他の政治・軍事勢力を真剣に受け止め、彼らと交流することを防ぐ、
(3)ターリバーンに内部分裂などあり得ず、すべての構成員はアミール・アルムーミニーン(訳注:信徒たちの長、つまり最高指導者ハイバトラー・アクンザダ)に絶対の忠誠心を持って従い、結果として統一かつ強力なグループとなったと見せかける。
ISISの脅威を誇張し、アフガニスタンの入り組んだ現実を見ない者は、ターリバーンが提唱するプロパガンダに乗せられ、自らの政治的および経済的目的を達成するため、アフガニスタンの危機に目をつむる。何十万人ものアフガン文民および軍人が国外脱出を余儀なくされ、さらに何百万人もが逃げ道を探っている。何百万人もの少女が教育を受けられず、何万人もの女性が収入源を奪われてしまった。その上、民族間の緊張が高まり、暴力的で危険な戦争を誘発しそうな勢いだ。それらもすべて、彼らにとっては顧慮するに足りない事柄なのだ。
アフガニスタンでISISの勢力が拡大しているというターリバーンの訴えは正確ではない。ISISはサラフィー・ジハーディー派(訳注:預言者ムハンマドから3代までの「サラフ」が実戦したイスラームのみが真正で、以降の付け加えは誤りであるとするのが「サラフィー主義」だが、その「真のイスラーム」を武力によって実現しようとする宗派)の一集団。方や大多数のアフガン人はハナフィー派(訳注:スンナ派の4大法学派のひとつで、最も寛容で近代的と見なされている)、シーア派(訳注:第4代カリフ、アリーの死後にスンナ派と分裂した宗派で、アリーとその子孫のみをムハンマドの後継者として認める)、イスマーイール派(訳注:シーア派の一派で、神秘主義的な教説が特徴)なので、社会的支持を得られないからだ。国内各地でISISに加わる分子が見られるが、多くはターリバーンの抑圧、差別、民族弾圧に耐えかねての加入である。ターリバーンは抑圧をさらに推し進め、より多くの金と特権を得るための手段としてISISを利用し、自らに好都合の商業プロジェクトに変えているのだ。
【原文(英語)は下記をクリック】
Relevance of the Lying Shepherd Parable to the Taliban and ISIS in Afghanistan
[…] この講演の2日前、ターリバーンが国連のアフガニスタン組織で雇用しているアフガン人女性数百人の就労を禁止し家庭にこもらせろと通告したとのニュースが飛び込んできました。ターリバーンはなぜかくも執念深く女性を抑圧するのか、国際社会はなぜ制裁をつづけるのか、などなど、アフガニスタンの窮状に心を寄せる参加者に、複雑で不可解なアフガニスタン問題について聞いていただいたのは大変にありがたいことでした。ターリバーンが女性の抑圧や困窮する国民の存在を自分たちを国際的に承認させるための策略、つまり女性や国民を人質に自分たちの政策を海外に認めさせようとしている、などとは常人には理解不能のことでしょう。(この件についてはちょうどよい記事があったのでトピックス欄に載せておきました。「国連との対立にはまりこむターリバーン」、「オオカミ少年のたとえ話――アフガン・ターリバーンとISISの関連」) […]