(WAJ: パキスタンのイムラン・カーン前首相は5月9日に逮捕拘留されたがわずか2日後の11日に釈放された。大規模な暴動的抗議行動の勃発に慌てた政府側の醜態だった。イムラン・カーン前首相は、本サイトで再三報道しているように、首相在任中もその後もターリバーンの公然たる支持者としてターリバーンが国際社会から承認されるよう活動してきた。しかし、アフガニスタンのターリバーンは、パキスタンのターリバーンであるパキスタン・タリバン運動(TTP)と不可分の兄弟である。両国のターリバーンはパキスタンの軍と政治に緊密に結びついているだけでなくパキスタン内の政争とも深いかかわりがある。パキスタンは対外的、経済的困難に加えて、国内的には政治の深刻な分裂、アフガニスタン・ターリバーンとパキスタン・ターリバーンとの相克に苦しみ、矛盾を一層深めている。アフガニスタンの情勢とパキスタンの情勢は切り離して考えることはできない。)

『フォーリン・アフェアーズ』は2022年11月、ブルッキングス研究所のマディハ・アフザル名で次のように指摘をしている。

「逆説的だが、2022年4月に失脚していなかったら、カーン氏はおそらく現在のレベルの支持を享受できなかったであろう。経済危機に直面して彼の人気は低下し、次の選挙では大きな逆風に直面する可能性が高いと思われる。現在の連立政権と軍当局の観点からすれば、カーン氏の人気の急上昇は、昨年春の同氏排除キャンペーンの賢明さに疑問を投げかけている可能性が高い。パキスタン人にとって残念なことに、この絶え間ない政治闘争には実質的な余地がほとんど残されていない。パキスタンを度重なる債務危機と外国援助者への依存から脱却するための具体的な経済計画は、どちらの側にも持っていない。政治はパキスタン人にとって最も好きな娯楽かもしれないが、彼らは依然として国の指導者としての良い選択に飢えている。次の選挙で誰が政権を握っても、パキスタンの経済状況や発展状況の根本的な現実が変わる可能性は低い。」

今回のドタバタ劇で、ポピュリストとしてのカーン氏の人気は今まで以上に高まっている。

参考資料として、2023年5月10日のCOUNCIL on FOREIGN RELATIONSのDaily News Briefを紹介する。)

 

拘束された前首相の支持者がパキスタン全土で大規模な抗議活動を実施

イスラマバードの裁判所は、昨日汚職容疑で逮捕されたイムラン・カーン前首相を8日間拘束して尋問することができると裁定した(AP)(1)。当局はパンジャブ州で1000人近くを拘束し(CNN)(2)、デモに対抗してインターネットへのアクセスを制限している。デモでの衝突で少なくとも4人が死亡している。

カーンは2022年4月に内閣不信任案で解任されて以来、複数の汚職容疑で捜査を受けている(Al Jazeera)(3)。彼は自分に対する疑惑を否定し、野党とパキスタンの影響力のある軍が自分を権力の座から追い落とそうとしたと主張している。ほとんどの場合、カーンは有罪判決を受けた場合、公職に就くことを禁じられる。

<分析>

「カーン氏を排除しても、何の解決にもならない。むしろ、昨日の抗議が示すように、彼を逮捕することで、国民と国の軍隊との間の歴史的な結びつきが深く崩れるかもしれない」とドーン紙の編集委員は書いている。(4)

「パキスタンでは今、国民の怒りが軍に向けられ(5)、長い間見られなかったレベルになっている。今日、人々が軍の所有物を襲撃し、燃やす映像は、数年前には考えられなかったことだあ。ウィルソン・センターのマイケル・クーゲルマン氏は、「わずかな時間でこれほど劇的な変化が起きた」とツイートしている。(6)

(1)パキスタン、カーン前首相が新たな容疑で拘束命令を受け、暴動鎮圧のため軍隊を派遣

(2)イムラン・カーン前首相が汚職容疑で起訴され危機に瀕するパキスタン

(3)イムラン・カーンが逮捕されたアル・カディール・トラスト事件とはなにか?
(法律専門家らは、元首相の逮捕は最近改正された法律に違反する可能性があると述べている。)

(4)サイは投げられた(イムラン・カーンは逮捕され、ルビコン川を渡った。PTIと国家との間で新たな敵対関係が勃発したことは、現在進行中の政治的行き詰まりを交渉によって打開できるという期待が失墜する可能性があることを意味する。)

(5)(パキスタンでは現在、大衆の怒りが、非常に長い間見られなかったレベルで陸軍に向けられている。人々が軍事施設を襲撃して燃やしている今日のイメージは、数年前には考えられなかった。わずかな時間で劇的に変化する。)

(6)パキスタン議会が分裂 イムラン・カーンはいかにして国家を二極化させたか

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