The UN Security Council’s Afghanistan Resolution Lacks Clarity and Political Grounding

By: Lisa Sorush
By Hasht-E-Subh Daily On May 2, 2023

リサ・ソラッシュ
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年5月2日

 

(WAJ:アメリカ人の論評だが、元がアフガン系であるためか、極めて厳しく国連の姿勢を批判している点が特徴的だ。また、確信ポイントを繰り返し繰り返し反復しているところにも、国連が口先だけで実質的な措置をとっていないとの悔しさがにじみ出している。人道援助分野では国連が果たせる部分がまだまだあるのだが、ターリバーンへの形だけの表面的な批判や人道援助では、逆効果だとの思いが、原著者にはある。この決議案の作成・提案の共同提案者に日本がなっていることにも注意を払おう。)

 

アフガン女性の権利に対して理事会が示した表面上の関心は、彼女たちを保護し、力を与えるための真の努力というよりは、リップサービスのようにみえる。

日本とアラブ首長国連邦は共同で、現在進行中のアフガン情勢に関する決議案を国連安全保障理事会に提出した。本決議案は、アフガニスタンにおいて、教育をうける権利、雇用の機会や移動の自由など、さまざまな女性の権利がターリバーンによって侵食されていることに懸念を表明している。さらに、アフガン女性が国連機関で働くことを禁止したターリバーンの決定を非難し、アフガニスタンにおける女性と女児の完全かつ安全な社会参加を求めている。決議案は、人道支援の継続と国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)をはじめとする国連機関のアフガニスタンでのプレゼンスの重要性を強調しているが、他方では国連がターリバーン政権に対して政治的な明確さを欠いていると批判する声もある。

<参考記事>
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/backstories/2422/
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014052011000.html

女性、女児、マイノリティの権利保護を呼びかけながら、ターリバーンの抑圧的な政策とアフガニスタンの安定と安全に対する脅威を実質的に批判しない決議は何を意味するのか。ターリバーンの弱者に対する抑圧と暴力の歴史を無視する表面的なアプローチは、アフガニスタンにおける有意義な変化を妨げる危険性があるのではないだろうか。 アフガニスタンの政治的現実に対処し、最も弱い立場の人々のニーズを優先するためには、どのようなアプローチが必要なのだろうか。

すなわちアフガニスタンにおいて、有意義な変化を促進し、脆弱なグループ、特に女性と女児の権利を保護するためには、一歩ずつの踏破が重要である。その課程では、ターリバーン政権に関して政治的な明快さを欠いた決議案への憂慮こそ注視されるべきだ。現場の実態を認識した包括的なアプローチをとることで、保護を必要とする人々の権利を守り、アフガニスタンのより安定した安全な未来を準備することができるだろう。

決議案のアプローチは、表面的に映る。ターリバーンが弱い立場のアフガン人に対して抑圧と暴力を加えてきた残酷な歴史を無視しているからだ。政治に根ざしたアプローチがなければ、アフガニスタンにおける意味のある変革は妨げられ、保護を必要とする人々の権利は十分に守られないだろう。したがって、同国の政治的現実と最も弱い立場にある人々の具体的なニーズを考慮した、実情への包括的なアプローチを検討することが不可欠なのだ。

「安保理は、純粋にアフガン人主導で、アフガン国民の願望を反映した政治的解決策の推進を優先すべきだ。アフガン国民が自分たちの未来を決めるべきであり、彼らの声を聞き、尊重しなければならない。」

さらに、決議を通した欧米列強による押し付けは看過できない懸念材料である。それは決議の正当性とアフガン国民への潜在的な影響に関する疑問を引き起こす。むしろ、安保理は、純粋にアフガン人主導で、アフガン国民の願望を反映した政治的解決策の推進を優先すべきだ。アフガン国民が自分たちの未来を決めるべきであり、彼らの声を聞き、尊重しなければならない。安定した平和なアフガニスタンを作ることは極めて重要だが、外国勢力の押し付けでは実現できない。アフガニスタンの指導者やコミュニティと協力してこそ、アフガン国民のニーズと要望を真に反映した永続的な解決策を見出すことができる。したがって、アフガニスタンの主権を尊重し、純粋にアフガン人主導による解決策推進の重要性を考慮することが肝要である。

「・・・アフガニスタンの主権を尊重し、純粋にアフガン人主導による解決策推進の重要性を考慮することが肝要である。」

アフガニスタンの女性と女児の窮状に十分な注意を払わない決議は、アフガニスタンの悲惨な状況を考えると警戒すべきものである。ターリバーンの抑圧的な体制と執拗な人権侵害により、アフガニスタンの女性と女児は虐待と抑圧にさらされている。アフガン女性の権利に対して理事会が示した表面上の関心は、彼女たちを保護し、力を与えるための真の努力というよりは、リップサービスのようにみえる

「アフガン女性の権利に対して理事会が示した表面上の関心は、彼女たちを保護し、力を与えるための真の努力というよりは、リップサービスのようにみえる。」

理事会は、アフガニスタンの女性と女児の保護と社会進出を確保する責任を負わなければならない。彼女たちの権利をリップサービスで唱えるだけでは足りないのだ。彼女たちの生活に実際に影響を与える行動をとらないのだから。女性の権利は、アフガニスタンに関するあらゆる決議において最優先であらねばならず、それを弱めたり無視したりするいかなる試みも、強力に拒否されなければならない。私たちは、アフガニスタンの女性と女児と連帯し、自国の平等、正義、安全を達成するための努力を支援しなければならない。

「ジェンダー平等に対して単にリップサービスをするだけでは十分でない」

ジェンダー平等に対して単にリップサービスをするだけでは十分でない。安全保障理事会は、アフガニスタンにおけるジェンダー平等を促進するための具体的な行動をとらなければならない。これには、女性のための継続教育の義務付けや、あらゆる部門における女性の指導的役割の促進が含まれる。そうすることで、アフガニスタンの女性と女児が能力を十分に発揮できないでいる制度的な障壁を打破することができるのだ。

さらに、理事会が主導権を握って必要な資源と支援を確保し、アフガニスタンの女性と女児に力を与える必要がある。これには、教育、医療、経済機会のための資金提供や、女性の権利団体への現場支援などが含まれる。安全保障理事会は、アフガニスタンのジェンダー平等を推進する上で重要な役割を担っており、今こそ具体的な行動を起こすべき時である。私たちは、アフガニスタンの女性と女児が同男性および男児と同じ機会と権利を持ち、アフガン社会のあらゆる側面で彼女たちの声が聞かれ、尊重されるよう、協力しなければならない。

アフガニスタンにおける決議案の最終目標は、ターリバーンの持続的な人権無視と有意義な対話の拒否によって達成が疑わしい。アフガニスタンの安定と安全の促進、女性の権利の保護、人権の確保という決議案の当面の目標も、ターリバーンの行動によってすべて危険にさらされている。決議をより効果的なものにするためには、ターリバーンの明白な人権侵害をはっきりと非難し、決議の履行を確保するために具体的な措置を示すべきである

安全保障理事会は、ターリバーンに対してその行動の責任をとるよう働きかけ、有意義な対話に参加するよう圧力をかけなければならない。現場の複雑な状況と、アフガニスタン女性と女児がその権利の実現において直面する課題を考慮した、現実的なアプローチが不可欠である。決議案は野心的かもしれないが、問題の根本原因に対処し、侵害を行う者たちに責任をとらせる具体的な措置を確立する必要がある。そうすることで、より安全で、より安心で、より公正なアフガニスタンの実現に貢献できるのだ。

アフガニスタン女性と女児の権利や幸福よりも、自国の政治的利益を優先させようとする国があるのは、不愉快だ。これは受け入れがたいことであり、地政学的目標の追求のために人権をないがしろにするより広範なパターンを反映している。ターリバーンのひどい行動を見過ごしたり軽視したりする試みは、ターリバーンの圧政の影響を受けている女性や女児に対する冒涜である。今こそ、国際社会はターリバーンの行為に強い姿勢を示し、全個人の人権を守るために動き出す時だ。

これは、人権侵害に対して声を上げ、侵害を行う者たちにその責任をとらせることを意味する。また、アフガニスタンの女性と女児に力を与え、教育、医療、経済的機会への平等なアクセスを確保する努力への支援も意味する。人権を政治的利益に従属させることは決してあってはならない。国際社会は、ジェンダー、民族、国籍にかかわらず、全個人の人権が尊重され、保護され、支持される世界を作るために協力しなければならない。

結論として、アフガニスタンに関する国連安保理の決議は不十分で、政治的な明確さを欠きジェンダー平等のための具体的な行動の提供に至っていない。全個人の人権を守ることを優先し、特にターリバーンの圧政に最も弱い立場にある女性と女児を優先することが極めて重要だ。国際社会は力を合わせて、ターリバーンにその行動に対する責任をとらせ、アフガニスタンの女性と女児に力を与える努力を支援すべきだ。政治的な利益が人権より優先されることは決してあってはならない。安全保障理事会は、アフガニスタンの全個人の権利と幸福が尊重され、保護されるよう、大胆な行動を取るべきだ。そうしてこそ、すべてにとって、より安全で、より安心で、より公正な世界を作ることができるのである。

著者について:リサ・ソルシュはアフガン系アメリカ人活動家で、アフガニスタンの女性や女児の権利、さらに人権全般の擁護に尽力している。サンディエゴ大学で政治学修士号、カルフォルニア州立大学フラトン校で文学士号、インド人権研究所(Indian Institute of Human Rights)で人権学準学士号を取得している。リサは、メディアで政治分析や解説を提供している。

 

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The UN Security Council’s Afghanistan Resolution Lacks Clarity and Political Grounding

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