Islamabad Meeting: What Will Beijing and Islamabad Say to the Taliban?

By Hasht-E Subh Last updated May 7, 2023
ハシュテ・スブ 2023年5月7日

 

(WAJ: この論考はハシュテ・スブ・デイリーの主張「ターリバーン閣僚、パキスタンで3者会談を開催」をより詳しく説明したものである。ここでは、直前の5月初めに国連事務総長が議長を務めたドーハ会議(注:「トピックス」欄、2023年5月1~2日 <中東かわら版>「アフガニスタン:国連のグテーレス事務総長主催会合がドーハで開催」参照)がなければ、今回のイスラマバード会議はありえなかった。会議の主目的のひとつが、ドーハ会議に参加した中国とパキスタンの口からターリバーンへ国際社会のメッセージを伝える任務であることを指摘している。つまり世界からの要求を実行するまでは、世界はターリバーンの政権承認へは踏み出さないだろう、とターリバーン代表に伝えるはずだ。中国はアフガニスタンにおける長期的な経済目標を持っており、この目標を達成するためには、近隣諸国およびアフガニスタンの安定が確保され、紛争が終結することが必須である。中国人は、米国のアフガン撤退を災難と捉えており、それによって中国に重い責任がかかってきたと考えている。中国がアフガニスタン、パキスタンにかかわる動機がそこにあるといえる。イスラマバード会議の結果を報告した各種報道(末尾の参考記事)では、経済援助やテロ対策はあるが、肝心の「ドーハ会議の結果伝達」には触れられていない。最後のThe Hinduの記事で「それ以上の情報は公開されなかった」という言い訳が正直な所だろう。結果発表を待たずして書かれたと思われるこのハシュテ・スブの分析の方がかえって詳しくその内容を言い当てているようだ。)

 

5月6日にパキスタンの首都イスラマバードで、中国、ターリバーン、パキスタンの代表による三者会談が行われる。ターリバーン代表としてムッラー・アミール・カーン・ムッタキ(Mullah Amir Khan Mutaqi)外務大臣が参加する。報道によると、ムッタキは国連の制裁リストに載っているため、今回の会議には参加できないはずだった。しかし、国連の制裁委員会は、パキスタンの国連特別代表の要請に基づき、一時的にパキスタンへの渡航を許した。これは、2022年11月29日と2023年2月22日の2度に渡り、パキスタン当局者がカーブルを訪れ、ターリバーン関係者と会談し、懸念と要望を同集団と共有した結果である。中国、パキスタン両国のターリバーンに対する影響力は他のどの国よりも大きい。両国はターリバーンとの密接な関わりを続けるだけでなく、他国にもその輪に加わるよう呼びかけている。

ターリバーンが政権に復帰した後、アフガニスタンの危機に対処するため、周辺諸国を中心とした多くの会議が開催され、中国やパキスタンも参加している。しかし、中国とターリバーンの代表が参加する今回の三者会談をイスラマバードで招集することは、波紋を広げている。この点で最も重要なのは、北京とイスラマバードがターリバーンに対して何を言うのか、ということである。この問いに答えるには、後述する3点を吟味する必要がある。

ここで本題に入る前に、今回のイスラマバード会議の意義を概説しておこう。この会議と、アフガニスタンに関して国連事務総長が議長を務めたドーハ会議(訳注:2023年5月1~2日にグテーレス国連事務総長主催で開かれたアフガニスタンに関する国際会議。ターリバーンは招待されなかった。そのため、中・パ代表が会議の結果をターリバーンに伝える役を与えられた)との間には関連性がある。つまり、この会議は前回の続きということになる。ドーハ会議がなければ、イスラマバード会議を開催する手がかりはない。ドーハ会議参加国からターリバーンへのメッセージの伝達が、今回の会議の論点のひとつである。その仮定が正しければ、北京とイスラマバードが中継するターリバーンへのメッセージは、良い知らせというよりはむしろ戒めと警告が含まれる。つまり世界からの要求を実行するまでは、世界は彼らの政権承認へは踏み出さないだろうと、ターリバーン代表に伝えるはずだ。

ターリバーンの頑固さと一途さは、彼らの支持者や称賛者をも怒らせている。北京とイスラマバードがターリバーンの友人であることは間違いないが、世界とターリバーンの対立の中で、両国がターリバーンに味方するという意味ではない。世界とターリバーンは両極にある。この2年近く、世界はターリバーンをその位置から少しも引き寄せることができなかった。この状況が続くと、ターリバーン信奉者にも不快感や不満が生じることは明らかであった。そんな中、吟味すべき3点は以下の通りだ。

1)イスラマバードは、パキスタンにおけるテロの拡大を懸念している。したがって、今回の会議の議題のトップには、パキスタンのターリバーン(Tehreek-e-Taliban Pakistan/TTP)鎮圧が必要であるとの強調が含まれるはずで、この点で(アフガン)ターリバーンに協力を要求することになる。パキスタンとターリバーンの関係は、当初は温かく友好的であったが、パキスタンにおけるTTPによる攻撃が急増した後、両者は友好関係の強化ではなく、むしろ関係を断ち切らずにすませる方策について対話している。パキスタン当局のカーブルへの公式訪問では、パキスタン人の口調は友好的ではなく、権威主義的だったと言われている。

当初、パキスタン側は、ターリバーンが効果を発揮してアフガニスタンへ楽に介入できると喜んだ。しかし結果はそうではなかった。TTPはパキスタン軍との停戦を破り、パキスタン軍への攻撃を再開し、パキスタン側は「TTP集団がパキスタンへのテロ攻撃をアフガニスタンから仕掛けている」と主張するほどになってしまった。パキスタンはTTPとの戦いに真剣かつ断固として臨んでいるようで、たとえ戦闘がアフガン領土に及んでも、彼ら集団を制圧するためなら必要なあらゆる手段を講じることは間違いない。国家の安全保障は、国の取引商品ではないのだ。

パキスタンは、たとえターリバーンの不興を買い関係を絶つことになっても、TTPを鎮圧し国家の安全を確保しようとしている。これまでのところ、ターリバーンはTTP鎮圧への協力要請に応じることができず、パキスタンは過去に比べ、ターリバーンの世界からの認知貢献に積極的ではなくなっている。とはいえ、パキスタンがこの問題への関心を完全に失ったわけではない。例えば、ターリバーンが政権に復帰した当初、イムラン・カーン前首相は、ターリバーンを承認するよう各国に働きかける目的で、域内のさまざまな国を訪問している。

2)パキスタンとアフガニスタンの一体化の維持は、中国にとって関心事である。中国の努力のひとつは、アフガニスタンをインドから切り離し、パキスタンに近づけることであるが、パキスタンの影響圏に置くことではない。今回の会談でおそらく議論されるポイントのひとつは、パキスタンとターリバーンの結束を維持する必要性であろう。中国が経済計画を適切に実行するためには、過去、現在、未来においてパキスタンとアフガニスタンの友好関係が不可欠である。ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)やモハマド・アシュラフ・ガニー(Mohammad Ashraf Ghani)の大統領時代には、パキスタンとアフガニスタンの国境紛争やパキスタンのターリバーン支援疑惑が折に触れて深刻化し、両国の関係向上の地盤を崩してきた。

ターリバーンが政権について以後、アフガニスタンとパキスタンの国境紛争は以前ほど深刻化しておらず、中国は両国間の和解のチャンスとみている。国境紛争といっても、ターリバーンの国境警備隊とパキスタンの国境警備隊の日常的な紛争ではなく、歴史的な国境紛争に関する双方の主張の隔たりを意味する。中国は、アフガニスタンとパキスタンの紛争を根本的に終わらせることができなくても、少なくともパキスタンとターリバーンの緊張関係が中国の経済的野心を害さないように、短期的には緊張のない関係を保つことができると考えている。一方、中国はターリバーン以前の政府に対して、今ほど影響力を持っていなかった。中国はまだパキスタンに対して影響力を持っており、その影響力を使って自国をターリバーンに近づけることができる。アフガニスタンの現在の状況は、ターリバーンとイスラマバードの関係を強化するのに有利で、この取引を通じて自国の経済計画をよりよく実行できると、おそらく考えているのだろう。

さらに、ターリバーンへの影響力を利用して、中国は恐らくこの集団に働きかけて、TTPの鎮圧に協力させたい。これまでTTPを鎮圧できなかったパキスタンは、そのような要請を、中国のテーブルの上に置いたようだ。こうした推測が正しければ、中国を介するこの方法こそ、パキスタンがターリバーンを説き伏せTTP鎮圧に協力させる最後の選択肢となる。中国が仲介して、ターリバーンがパキスタンの必要とする協力を惜しまず、TTPが鎮圧される。その筋書きがうまくいかない場合、パキスタンとターリバーンの関係は厳しくなる可能性がある。

3)中国はアフガニスタンの安定の確立を支持し、近隣に合法性のない政府を持つ国が存在することを望んでいない。中国は、アフガニスタンの不安定、混乱、過激主義を自国の不利益と考え、そのためアフガニスタンにおける包摂的な合法政府を支持する。ターリバーンだけではアフガニスタンの安定を実現できないことを認識した上で、包摂的な政治構造を作るという中国の強調は、今回の会議の議題に含められる点である。中国によれば、アフガニスタンの安定は、包摂的で合法的な政治構造ができたときに確保されるものである。中国は、米軍のアフガン駐留に不満を持っていた。しかし、当該兵力の撤退を歓迎もしなかった。米国の無責任な撤退とターリバーンの復権は、アフガニスタンの安定に悪影響を及ぼすと考えたからである。

中国はアフガニスタンにおける長期的な経済目標を持っており、この目標を達成するためには、近隣諸国およびアフガニスタンの安定が確保され、紛争が終結することが必須である。アフガニスタンが安定しない場合、中国は経済計画を運用するためのコストが倍増すると認識している。中国は、アフガニスタンの不安定さがこの国にとどまらず、パキスタンや中央アジアにも波及することを知っている。

中国の大規模経済計画に含まれる場所は、「新シルクロード」と呼ばれている。今回の会談で、中国の外務大臣はターリバーンに対して、柔軟な規則を持つ包摂的な政治構造を作る準備をするよう、むき出しの真剣な口調で説明するかもしれない。中国は、パキスタンがアフガニスタンで積極的かつ建設的な役割を果たすことを引き続き奨励する。中国がアフガニスタンに軍を送りたいわけでも、アフガニスタンに特定の政治・経済モデルを押し付けたいわけでもないことは明白だ。また依然として、アフガニスタンを自らの勢力圏にしたいわけでもない。ターリバーンが政権を握る前と後の中国の行動から、中国は経済的な目標をたびたび追求し、安全保障と政治的な目標の追求は稀であると解せられる。

中国は、アフガニスタンにおける東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)勢力の存在を懸念している。ETIMに忠実な勢力をターリバーンによって鎮圧する必要性は、今回の会議で議論される重要なポイントである。中国は、この運動の中心地である中国の新疆ウイグル自治区とワハン回廊でつながっているアフガニスタン北部に、ETIMに忠実な勢力が存在すると考えている。中国がアフガニスタンで安全保障上の懸念を抱くとすれば、それはETIMだけであるから、この運動の鎮圧は中国にとって重要である。

中国がターリバーンに求める最も重要な要求は、この運動の鎮圧に集約される。アフガニスタンの政治的安定の欠如、国中に広がる混乱と過激主義は、これまで以上に中国を不安にさせている。見てわかるように、ターリバーンはまだ中国のこの要求に応えていない。北京は、ETIM勢力がアル=カーイダやイスラム国ホラーサーン(ISS-K)と結び付き、自国の安全保障上の脅威を増大させることを恐れている。

中国人は、米国のアフガン撤退を災難と捉えており、それによって中国に重い責任がかかってきたと考えている。ひとつは、域内の大国として、パキスタンからアフガニスタン、中央アジア、イランに至る広大な領域の安全強化に他のどの国よりも力を入れる責任。二つ目は、ETIMを鎮圧することで自国の安全保障を強化する責任である。中国は、ターリバーンと対峙して彼ら集団に圧力をかけても実りがないと考えている。つまり、無駄な圧力はターリバーンにETIMの鎮圧を促すどころか、この集団がETIMに協力することを促してしまい、それは中国にとって損害なのだ。

これまで、中国はターリバーンとの緊密な関りの継続は前進であり機能的であると考えている。関わることで、ターリバーンがETIMに忠実な勢力を鎮圧することはないが、せめてこの運動の支援者になることは恐らく防げるのだ。北京はかつてアフガニスタンで経済的な目標しか持たず、静かにその達成を目指していたが、アメリカのアフガン撤退が囁かれた頃から徐々に、特にそれが国の方針として決定的になるとさらに、中国の経済目標に安全保障上の配慮や懸念が入り混じるようになった。中国はアメリカを疑うが、それは北京とワシントンの緊張が高まれば、アメリカはETIMを支持し、中国にとって重大な危険となりうると想定しているからである。

 

<参考サイト>
● https://www.ndtv.com/world-news/taliban-agrees-to-extend-chinas-belt-and-road-in-afghan-after-pak-meet-4012893
● https://www.aljazeera.com/news/2023/5/7/china-pakistan-and-afghanistan-fms-hold-talks-in-islamabad
● https://www.thehindu.com/news/international/pakistan-china-and-afghanistan-agree-to-combat-terrorism-at-islamabad-meeting/article66823837.ece

 

本文(英語)を読む】☟

Islamabad Meeting: What Will Beijing and Islamabad Say to the Taliban?

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