Iran’s Failed Policies in Afghanistan
By Hasht-E-Subh Daily On May 29, 2023
ハシュテ・スブ・デイリー 論説 2023年5月29日
(WAJ: アフガニスタンとイランとの関係は微妙だ。宗教的にはアフガニスタン中部バーミヤン州を中心に居住するハザラ族と同じシーア派に属しもっとも近しい関係にある。しかし、パシュトゥーン族を中核勢力とするスンニ派のターリバーンとは厳しい対立関係にあり、ターリバーンはハザラ族に対するテロ攻撃を頻繁に行っている。ハザラ族を弾圧し難民化させその財産を奪うやり方は民族浄化政策ともいえるほどのひどさである。さらに最近ではイランと国境を接するヘルマンド川の水利権をめぐってターリバーンとイランは武力衝突を起こし、死者も発生している。パキスタンがターリバーンに対して行使している影響力と比べると天地ほどの違いがある。しかし、伝統的にイランとアフガニスタンはペルシャ時代から長い共通の歴史をもっている。宗派の違いはあっても宗教的原理主義という共通点をもつ両者の今後の関係がどのように進展するか、目が離せない。)
過去50年間、アフガニスタンの2つの隣国、パキスタンとイランはアフガニスタン問題に不可避的に関ってきた。しかし、イランはアフガニスタンでの進展に関して、特にパキスタンの役割と影響力に比較すると、一貫してインパクトを与えることができなかった。この間、イランが得た成功はすべて、アフガン情勢から受ける損失を減少させるだけのものだった。これに対して、パキスタンは自国の利益のためにアフガニスタンの体制を改変し、アフガニスタンをパキスタンの属州に貶めて来ており、アフガニスタンがこの状況から脱却して独立への一歩を踏み出そうとするたび「第5の州」の立場に引き戻されていることは、ターリバーンの支配を今日見ればわかる。
しかし、この地域の歴史において、アフガニスタンとイランは数千年にわたり同じ帝国の構成員であり、その首都はバルフ、ガズニー、ヘラート、ニーシャブール、メルヴ、レイ、イスファハーンにあった。この歴史の共有は、さらに文化的、言語的、宗教的な類似性を伴い、2つの国を他のどの国よりも近づけることができたのに、それは起こらなかった。その結果、アフガニスタンにおけるイランの政策の失敗はどこに原因があるのか、という疑問が生じる。
この地域の最初の亀裂は、サファヴィー朝(訳注:1501〜1736年、イランを支配した王朝)時代にさかのぼる。ある宗教(訳注:シーア派の十二イマーム派)を政府が公認し、それを他の市民に押し付けた結果、宗教間の大きな緊張が生まれ、現在に至っている。第二の要因は、20世紀にイラン民族主義が台頭し、同地域の文明的アイデンティティを現在の国境に閉じ込め、歴史的共通性を犠牲にし、新たな国民的アイデンティティを作り出したことである。しかし、より大きな要因は、イランにイデオロギー的な軍隊を導入したイラン革命(訳注:1979年、ホメイニによる)に起因する。この政権は、当初から原理主義的なアプローチをとり、対立的な道を歩むことで、アラブ世界から西欧諸国まで、多くの敵を生み出した。このイデオロギー的な政治観は、不必要な戦争(訳注:1980〜87年のイラン・イラク戦争など)と緊張によって国富を消費することになり、イラン国民に大きな犠牲を強い、地域に不信と緊張と敵意の種を撒き散らした。このイデオロギー的な政策の当然の結果のひとつとして、世界がアフガニスタンの代理人をパキスタンに託し、湾岸諸国から欧米までパキスタンをバックアップすることになり、パキスタンのアフガン政策を、進んであるいはシブシブ認めるようになった。
イラン政権はアフガン問題で主導的あるいは決定的な役割を果たせず、結果として政策の失敗を招いた。この失敗は、自国の外交官がマザーリシャリーフでターリバーンに殺され(訳注:1998年、マザーリシャリーフのイラン総領事館をターリバーンが占拠したさい、イラン外交官10人とジャーナリストを殺害し、50人のイラン人を人質にした)、イランが対応できなかったことで(訳注:国境に20万の兵を送ったが、ターリバーンが犠牲者の遺体を送還し、人質を解放したため撤退した)浮き彫りになった。さらに数年後(訳注:2001年ターリーバーンは政権を失い、反乱分子となった)、イランはアフガニスタンの合法的な政府に対抗するために、外交官を殺害したのと同じグループと関係を結んだ(訳注:表面上は新政府と友好関係を結びつつ、裏ではイラン革命防衛隊がコッズ部隊を通してターリバーンに武器や地雷などを提供した)。これが現在の水利権をめぐる国境の緊迫した状況につながり、ターリバーンを利し、両国の国民に害を与えている。
<参考サイト>
https://ctc.westpoint.edu/irans-ambiguous-role-in-afghanistan/
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