Why Iran Prefers Taliban Over Ahmad Massoud?

 

By: Shahab
By Hasht-E-Subh Daily On Jun 5, 2023
シャハブ
ハシュテ・スブ・デイリー 2023年6月5日

 

(WAJ: アフガニスタンの現状は、復権したターリバーンが武力によって反対派を鎮圧し、アフガンニスタン領域を実質支配していることにある。反対派は蹴散らされ、相互の連携を失い、ターリバーンに代わる政権を担い得る勢力はない、と言わざるをえない状況にある(まるで日本と同じ)。しかし、いまだにターリバーンをアフガニスタンの合法政権として承認する国は一国もない。かつて第一次ターリバーン支配を国家承認したパキスタン、サウジアラビア、UAEでさえ、いまだに承認していない。そんななかにあって、アフガニスタンと歴史的な共通点を周辺諸国よりより豊富に持つイランは、イスラム原理主義政権をいただくターリバーンとの類似点をもっている。イランがなぜ、アフガン国内で武力抵抗をつづけているマスードらのNRF(国民抵抗戦線)でなくターリバーンを支持するのか、その根拠を、本論説は暴いている。)

 

ターリバーンとイラン国境警備隊の国境紛争(訳注:5月27日に発生)を受け、国民抵抗戦線(NRF)の指導者であるアフマド・マスード(Ahmad Massoud)は、ルーミー (Rumi) (訳注:13世紀のイスラーム神秘主義詩人)の有名な詩の一節をツイートし(訳注:5月27日付け「そこに行くなと言わなかったですか、あなたの知り合いは私です」(下記参考サイト))、イランにターリバーンのもとへは行くな、自分がイランの真の知人であるからと警告した。このツイートは幅広い反響を呼び、アフガニスタンやイランの人々からさまざまな反応が寄せられた。こうした反応はあったものの、マスードのツイートの内容から、マスードの抵抗戦線とイラン政府との関係が良好な状態ではないこと、および経済的・道徳的な支援を説得するイラン人への試みが失敗したことが、初めて公式に明らかになった。

<参考サイト:ルーミーの詩>
https://allpoetry.com/Did-I-Not-Say-To-You

 

過去2年間にアフガニスタンで起こった出来事に対するイラン政府の公式な姿勢を見ると、イラン政府がターリバーンを信頼できるパートナーとみなし、「西側が支援する政権」に対する勝利に高揚感を感じていることは、以前からよく知られていた。イラン外務省の役人の一人が、ターリバーンに対する抵抗はアメリカのプロジェクトであると断言したことすらかつてあった。(訳注:2022年、当時の対アフガニスタン特別代表ハッサン・カゼミコミが「NRFはアメリカのプロジェクト」と発言し、その後すぐに訂正した。)

<参考記事>
https://www.afintl.com/en/202208170643

 

この話の要点は、ターリバーンを勝利に導く役割を担うと信じるイランが、この集団に恩を着せたと思い、アフガニスタンにおけるイランの利益を増す形で貢献する能力がこの集団にあると信じていることである。イラン人はターリバーンとの関係を維持しようとするあまり、イランとターリバーンとの国境での衝突で死傷者が出たことへの反応として、こうした紛争を軽微なものとみなし、「家族の争い」と呼んだ者もいる。

<参考記事:国境での衝突とイランの反応>
https://www.iranintl.com/en/202305299777

 

イラン当局は、広範に非難されているターリバーンへの支援を正当化し、世論を動かすために、さまざまな戦術をとってきた。彼らは、現在のターリバーンは1990年代のターリバーンとは異なると主張している。この点は2年前、西側メディアも同様の指摘をしていた。イラン政府関係者の中には、ターリバーンをアフガニスタンの文化と土地に根ざし、外国の影響を拒絶する「この地域の真の運動」とまで言った人もいる。そのため、ターリバーンは支援に値するというわけだ。

テヘランの新聞「ハミハン」は、イラン政府関係者が、ターリバーンとの宗教的共通点を強調し、マスードの対ターリバーン戦略を否定したと報じた。自分たちが世俗主義者と見るマスードとは共通点がないが、ターリバーンはムスリムであり、イランは彼らの思想の10%程度を共有していると述べたとされる。このイラン政府関係者の発言は、イランと反ターリバーン勢力との間の亀裂の大きさを示しており、容易な和解はできないようである。

私の分析では、イランの外交政策立案者とアフガニスタン内の同盟者がターリバーンを揺るぎなく支持しているのは、ターリバーンがムスリムで敵対者が非ムスリムだとの理由ではなく、またターリバーンの運動が深く根付いていて本物だからという訳とも違う。もし世俗的であるかどうかという基準であれば、イラン人はシリアの独裁者であるバシャール・アサドをそれほど支持しないはずだ。彼らは、マスードがアサドよりも世俗的だと考えているのだろうか。事実、イランがターリバーンと同盟を結び、その反対派を軽視するのには、他の要因やパラメータが関係している。それは以下に挙げることができる:

<1> イラン外交政策の策定をイスラム革命防衛隊(IRGC)が担っていることを、モハンマド・ジャバド・ザリフ前イラン外相が認めている。ザリフ前外相の説明は、イランの外交戦略の展開において外務省が大きな役割を担っていないことを意味している。その背景には、治安部隊や軍部が、隣国や域内の事件や展開を安全保障の観点から捉えがちで、状況の複雑さを考慮したり、長期的なアプローチをとったりしないことがある。

IRGCの政策立案者は、外交政策を決定する際に「敵の敵は味方」という公式を用いることが多く、ターリバーンは米国をアフガニスタンから撤退させることでイランに大きな奉仕をしたのだから、友情と同盟に値するという考えを持っている。しかし、この極端な反米主義がイラン政府関係者の事実誤認を招いている。現在、最も信頼できるアナリストによると、ターリバーンは自国領土における米国の利益を守るために尽力しており、米国や他の西側諸国はターリバーンに対する反対運動を支持しておらず、むしろ明確に非難しているのだ。

<2> イランは、2001年に米国と協力してターリバーンを打倒した。しかし周辺地域に民主主義、人権、女性や少数民族の権利の原則を尊重し、地域の自由と発展のモデルとなるようなシステムを作ろうとは決して考えなかった。その結果、イランはボン会議後のプロセス(訳注:2001年のボン会議で取り決められたターリバーン後のアフガニスタンにおける和平と復興促進のためのロードマップ)を妨害するためにあらゆる努力をしてきた。イランの支配者は、アフガニスタンで進行中の動向が、それまでイラン・イスラム共和国の支配政策に反対してきたイラン市民を刺激し、反乱を引き起こすことを懸念していた。

ターリバーンの復活により、イランはアフガニスタンで、個人、政治、社会の自由を制限し、女性の教育や日常生活を否定するなど、多くの共通点を持つ政権と対峙することになった。イランもパキスタンと同様、アフガニスタンにおける強力で有能な支配体制を望まず、自国の利益追求には歯止めを設けない。このことは、イラン議会の国家安全保障委員会の委員が、2人のイラン人兵士が死亡したイランとターリバーンの国境紛争を家族の争いだと考えていることからも明らかである。

<3> ターリバーンは以前から麻薬の栽培、生産、密売に関係しており、彼らの復帰によって麻薬の密輸がより盛んになり、その結果、今年は栽培高が顕著に増加した。また、イスラム革命防衛隊(IRGC)も、域内の麻薬取引に大きな役割を果たしている。イラン議会の国家安全保障委員会の元委員長であるヘシュマトラ・ファラハットピシェは、インタビュー(訳注:イランのニュースサイトRouydad24の5月27日記事)でイランの外交政策担当者への批判を表明し、彼らがイランの対アフガニスタン外交を及び腰にさせた結果、ターリバーンが在テヘランのアフガン大使館を占拠してしまったと主張した。さらに、ターリバーンによるイランへの大規模な麻薬輸出の源を断ち切るべきだと示唆し、ターリバーンと仲間のアフガン密売人がイランへ麻薬を輸出して得る収入は、イランの年間総建設費を上回ると述べた。

<参考記事:ファラハットピシェの発言>
https://www.iranintl.com/en/202305275782

 

<4> ファラハットピシェの発言は、イラン政府が麻薬取引でターリバーンに協力しており、その出所を絶つ能力を持ちながら、野放しにしていることを暗示している。しかしその発言は、ある事実を無視している。つまりターリバーンの麻薬の出所を絶てば、ターリバーンだけでなく、イラン政府とその同盟国も域内で影響を受けるのだ。世界的に最も厳しい制裁を受けている政府が、この収入源を無視し、時々の国境紛争を理由に麻薬の通過を阻害することは合理的とはいえない。結論として、ターリバーン政権の安定はイラン政府にとって経済的に有益であると言える。そうした動機付けからイラン当局は、アフガニスタンにおいて国際法や条約に従わない政権を支援し、同国内の麻薬を排除するどころか、彼らによる栽培、生産、輸送を手助けしている。

ターリバーンの敵対勢力が芳しい成果を出せないでいる今こそ、イラン政府はターリバーンと連動せねばならない。それが政治的現実主義というものだ。ターリバーンは現在アフガニスタンを支配し、3000万人の市民を従える責任を持ち、いかなる武装抵抗も容易に弾圧することが可能である。イランは、国内にいる数百万人のアフガン難民に手を差し伸べるため、また、アフガニスタンにおける自分たちの利益を守るために、ターリバーンと交流しなければならない。それは他の派閥や集団と組んでも達成できない目的である。文明やペルシア語の共通点がイランとターリバーンを結びつけるという考え方は見当違いである。イラン政府は、言語や宗教が自国の利益につながる場合にのみ利用し、そうでない場合は利用しない。政治の複雑さを理解し、外見に惑わされないことが重要である。

結局のところ、ターリバーンは一貫して武力行使によって目的を達成し、30年近い存続期間中、いかなる譲歩もしなかったことを認めなければならない。この集団はまた、アフガン市民を服従させるために、武力と武器を広範囲に使用している。ターリバーンの指導者や司令官たちは、自分たちが米国を自国から撤退させたと信じており、それゆえに誇りを抱いている。このような態度をとる集団が、隣国に寛容に接し、自分たちの基本的な思想信条を貫くことを控えるとは到底思えない。米国がターリバーンに働きかけ、イランとの国境を不安定にし、イランをアフガニスタンの泥沼に引きずり込んでいるとの見方もイラン国内にある。この分析がイランの意思決定者の間でどれほど広く受け入れられているかは不明だが、こうした指摘は、最近の国境紛争後の一部のイラン政府関係者の発言にほのめかされている。

イラン政府関係者がこの分析を真剣に受け止めるなら、重武装し、西側諸国と怪しい関係を持ち、危険な思想信条を持つ集団にいつまで甘い態度を取り続けることができるかという問題に取り組まねばならない。今イランは、すべての卵をひとつのカゴに入れ、ターリバーンに決定的かつ包括的な支援を行い、この集団への反対勢力を無視している。それはイランにとって最善の利益を生むだろうか。長期的にはイランの評判を損なうことにならないのだろうか。イラン政府はターリバーンがいつまでも政権を維持すると信じているのだろうか。

原文(英語)を読む】☟

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