ダビデ・ミノッティ

 

彼女は他の人を両肩に乗せて運ぶ
誰にも助けを求めないで
渓谷の暗がりの中
手すりは壊れている
片脚が折れた者たちのために
また寒くなったので
走りながら
ガンガンうるさい音から急ぎ遠ざかり
山々に似た形の鎚の下
腹を満たせない
製粉所にある石挽の小麦粉、
そして一人の女が前にいた
他の人は倒れたのに
一言も語らなかった
彼女が両肩に乗せてその女を運んだ
その足もとは揺らがない
水辺は遠くに退き
病院は遠い
倒れる者のための忘れられた悼み、
避難場所は無い
ユーモア感覚も
妄想のための自由も
彼女は他の人を両肩に乗せて運ぶ
昼間の務めを終えると
夜は緊張だ
すぐ後ろにガンガンうるさい音
また寒くなったので

ダビデ・ミノッティ
1989年イタリア・フロジノーネ生まれの詩人・映画編集者。
(訳・金子明)

Baamdaad-亡命詩の家/検閲と弾圧に反対する世界の詩人の連帯 より