<映画紹介>
グレート・インディアン・キッチン
THE GREAT INDIAN KITCHEN
監督・脚本:ジヨー・ベービ
100分
2022年1月21日公開
圧巻のクロージングダンス (↑ 画像をクリックすれば動画を観られます。3分24秒)
面白い。アフガニスタンの女性に言わせれば、生温いのかもしれないが。
インドに今も残る家父長制とミソジニー(女性嫌悪)をテーマにした映画。中流以上の家庭を舞台にしているから、インドの女性差別のレベルから見ても、まだまだなまぬるいのかもしれない。
しかし映画は、文学や映画の永遠のテーマである「家」や「家族」や「伝統」や「男女の役割」などに、インドの現実を背景に、鋭く切り込んでいく。
インド南部のケーララ州が舞台。ある男女が見合い結婚をし、中東育ちで高等教育を受けた女性が、由緒正しい家柄の夫と彼の両親が同居する昔ながらの風習が残る家に嫁いでくる。朝早くから始まる家事と夫から自分勝手に体を求められる経験を経た彼女は、嫁ぎ先で男性たちの言うがままに奉仕するだけの生活に次第に疑問を抱くようになる。Facebookでその現実をアップしたら、夫の友人たちが押しかけてきてオートバイに火をつけたり暴力をふるったりして、FBの投稿を削除しろと迫る。宗教と伝統に反しているからだ、と。まるでターリバーンみたいだ。
女性に対する差別、抑圧、嫌悪の三相をすべて描き出している。
差別:就業や教育や娯楽など人権差別
抑圧:炊事、洗濯、掃除、夜のお勤めなどの強要
嫌悪:生理を穢れとする蔑視
人類の歴史はこのような女性観を克服する歴史でもあったのだが、もっとも荒々しい形でアフガニスタンやインドに残り、先進諸国でも隠微な形で残り続けている。万国の男女必見の映画だ。
映画の冒頭真っ黒なスクリーンに「科学に感謝」と字幕がはいる。生理のある女性を穢れとして扱う男の非科学的な愚かしさを一突きして映画を始める監督の姿勢に喝采。映画の締めくくりはンドの伝統舞踊をアレンジした女性賛歌。重苦しい観ていて辛くなる映画だが、最後に開放感を味わえる。素晴らしい100分。
レンタルDVDで観られます。
YoutubeでもFull versionを無料で閲覧できます。←ただし字幕は英語。