カーブルのTTPに対する不作為は、パキスタンによる指示の不統一

‘Kabul’s inaction on TTP due to mixed signals by Pakistan’

DAWN Monitoring Desk Published February 21, 2023
ドーン、モニタリングデスク 2023年2月21日

(WAJ: 大洪水や経済破綻に苦しむパキスタン政府の頭痛の種は国内の過激派対策、不信任決議で野党に下ったイムラム・カーン前首相派や軍との対応、さらには、アフガニスタン・ターリバーンとの対応である。自らが育てて政権につかせたアフガニスタン・ターリバーンは、パキスタン内部の政治対立をにらみながら自派の政策ともいえない唯我独尊理念の追求を諦めていない。パキスタン外相はそのような苦衷を正直に語っているが経済再建の手段が労働力輸出とアメリカ頼みというのは寂しい。この記事は、アフガンの声の「良いテロリストか悪いテロリストか:パキスタン政治家への疑問」と合わせて読んでほしい。)

パキスタンのビラーワル・ブットー・ザルダリ外相(訳注:暗殺されたベナジール・ブットー元首相の息子)は、アフガン・ターリバーンが非合法組織TTP(パキスタン・ターリバーン)に対して不作為なのは、パキスタン側からの指示が不統一なことに責任があると述べた。

ドイツの放送局DWウルドゥ(ウルドゥ語放送)とのインタビューで、外相は、前PTI政権(訳注:2022年4月に失脚したイムラン・カーン政権)がアフガニスタン暫定政府に対し、テヘリク・イ・ターリバーン・パキスタン(TTP)との和解を仲介するよう要請し、過激派をパキスタンに移住させる計画を持っていたと述べた。しかし、すべてのパキスタン人は、陸軍公立学校の虐殺(訳注:2014年、TTPがペシャワールにある陸軍公立学校を襲撃し、8歳から18歳までの生徒132人を含む149人を虐殺した)のような凶悪な攻撃に関与したテロリストは決して「われわれの友人」にはなれないと当時から主張していた、と彼は付け加えた。

これに先立ち、外相はCNBC(訳注:米国のニュース専門放送局)とのインタビューで、前政権が何の前提条件もなしにテロリストと交渉したこと自体を非難した。

参考ニュース:
https://www.cnbc.com/video/2023/02/19/watch-cnbcas-full-interview-with-pakistanas-foreign-minister-bilawal-bhutto-zardari.html

すなわちミュンヘン安全保障会議(訳注:2月17日~19日にミュンヘンで開かれた国際会議)に出席した機会になされたインタビューで、外相は「残念ながら、カーブル陥落後、わが国の前政府は、まさに同じテロリスト集団と、武装解除などの前提条件なしに交渉を始めた」と語った。さらに彼はそれを「宥和政策」と呼び、それが「我々を苦しめた」と述べた。

ビラーワルは言う、イムランが始めたテロリストの「宥和政策」はPDM主導の政府によって終了した、と。

しかしながら、PDM(訳注:野党連合パキスタン民主運動)主導の新政権と軍指導部が「宥和政策に完全な終止符を打った」とCNBCのインタビューで付け加えた。

「ターリバーンはパキスタンを受け入れず、憲法を受け入れない。あんな人たちと交渉することが、パキスタンや国民のためになるとは思えない」と外相はDWウルドゥーに語った。

さらに、PPP(訳注:パキスタン人民党、現在の連立政府与党の一翼)の代表でもある外相は、西側軍の撤退がアフガニスタンの様々なテロリスト集団の活動スペースを広げ、それがパキスタンに計り知れない困難をもたらしたと付け加えた。

「アフガニスタンとの間には、新たな暫定政府が管理できない非常に抜け穴だらけの国境がある」と彼はCNBCに語った。

しかし、「宥和政策」に終止符を打ったことで「われわれは、パキスタン国内で活動しているテロリスト集団に今後対抗できると確信している。」

また、アフガニスタンから発せられるテロの脅威に対処しないと、パキスタンは安全保障上のリスクが高い状態にあり続けると付け加えた。

パキスタンは、非合法なグループに対して暫定政府が何らかの措置を取ることを期待しており、アフガニスタンには、この問題が二国間関係に影響を与える可能性があると伝えている、と彼はDWウルドゥに語った。

イムランの政治的未来

CNBCとのインタビューの中で、イムラン・カーン元首相の政治的将来について問われたブットー・ザルダリ氏は、「政治において絶対ないとは絶対言えない」と述べた。

さらに外相は、カーン氏が民主主義の道を追求するよう努力し、憲法上の役割を果たすことを約束するならば、彼にも未来があると述べた。

この指摘に先立ち、外相は、不信任決議によるカーン氏の失脚は、議会が民主的な方法で首相を解任した初めての例だったと述べている。

ところが、カーン氏は失脚後、政権復帰のために軍に助けを求めているとも伝えられている。

外相は、前陸軍長官が演説で「軍はかつて政治に介入していたが、今は距離を置きたい」と述べたことを紹介した。「もし軍がこれまでのように論争的ではなく、憲法的な方向に舵を切り直すと言うなら、それは歓迎されるべきだ」と外相は評価した。

続けてPPP党首はCNBCに、「野党は、軍が政治に介入すべきと考えている。介入して自分たちを政権に復帰させる手助けをしてくれることを望んでいるのだ。」と牽制した。

経済

ブットー・ザルダリ氏は、洪水による農作物の壊滅が、コロナウイルスの大流行やウクライナ戦争と重なり、パキスタン経済に影響を及ぼしたと述べた。

パキスタンの債務返済能力について、外相は、最近の出来事で経済が軌道から外れたとしても、パキスタンが経済的な約束を果たせる能力について疑う余地はないと述べた。

ブットー・ザルダリ氏はDWウルドゥに対し、パキスタンは経済危機を解決するために多くの手段を講じていると述べた。

外相は、パキスタンは外貨準備を稼ぐために労働力の輸出を検討し、米国との貿易交渉を再開すると付け加えた。さらに、中東諸国と中国は、パキスタンを支援する意志を示しているが、IMFとの取り決めが先決条件である、とDWウルドゥに語った。

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